文章を書くときに、他人の文章を取り入れる機会は意外と多いものです。その際によく使われるのが「抜粋」と「引用」という言葉です。一見似ているこの2つの言葉ですが、実は使い方や意味、法的な扱いまで違いがあります。
この記事では、抜粋と引用の違いをわかりやすく解説し、例文も交えて正しい使い分けを紹介します。記事後半では「参照」「要約」「転載」といった類義語とも比較しますので、最後までご覧ください。
抜粋と引用の違いを解説!意味・使い方・例文

「抜粋」と「引用」は、文章作成やレポート執筆で頻繁に使われる言葉ですが、その違いを正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。
ここでは、抜粋と引用の意味や使い方を比較しながら、それぞれの特徴をわかりやすく解説します。例文も交えて紹介しますので、実際にどう使い分ければいいか迷っている方にもおすすめです。
抜粋と引用の違い比較表
まずは、抜粋と引用の違いを表形式で比較してみましょう。見た目に違いが明確になることで、混同しやすい2つの使い分けがすっきり理解できます。
比較項目 | 抜粋 | 引用 |
---|---|---|
定義 | 文章の中から一部を取り出して紹介すること | 他人の文章やデータを、自分の文章の中に挿入すること |
主な使い方 | 自分の意見の補強、要点の強調など | 根拠の提示、信頼性の向上 |
表現の改変 | 原則不可(意味を変えない範囲での省略は可) | 原則として一字一句そのまま掲載 |
著作権の扱い | 出典明記が必要、範囲によっては許可も必要 | 出典明記があれば無断使用も可(引用の条件を満たす場合) |
文章への影響 | 自分の文章の一部として馴染む | 自分の文章と明確に区別する必要がある |
この表を見ると、「抜粋」は引用に近いように思えますが、法的な扱いや記述方法には明確な違いがあることがわかります。続いて、それぞれの意味をより詳しく見ていきましょう。
抜粋とは?意味と正しい使い方
抜粋とは、文章や発言の中から特定の部分だけを選んで取り出すことを意味します。辞書では「文章や作品の一部を取り出して引用すること」と定義されており、一般的には文章の要点や印象的な一文を取り出す際に使われます。
ただし、抜粋は引用と異なり、全文をそのままコピーするのではなく、文脈に合わせて省略や接続詞の追加がされることもあります。このときに注意すべきなのが、著作者の意図を歪めないことです。特に書籍や論文などから抜粋する場合には、出典を明記する必要があります。
また、「要約」と混同されがちですが、要約は全体の内容を自分の言葉で短くまとめることに対し、抜粋は原文の一部を取り出す行為であるため、意味や文脈の保持が重要になります。
引用とは?意味と種類(直接引用・間接引用)の違い
引用とは、他人が書いた文章や発言、データなどを自分の文章の中に挿入する行為を指します。法律的には、著作権法で定められた「正当な範囲での引用」であれば、著作権者の許可を得ずに使用することが可能とされています。
引用には主に2種類あり、それぞれに特徴があります。
- 直接引用:原文を一字一句変えずに、そのまま「」で囲んで使用する方法です。
- 間接引用:原文の内容を要約し、自分の言葉で書き換えて紹介する方法です。
引用をする際のルールとしては、以下の3点が重要です。
- 自分の文章と引用部分を明確に区別すること
- 出典を必ず明記すること
- 引用部分は全体の2割以内に抑えること(目安)
これらのルールを守らないと、「盗用」と判断され、著作権侵害と見なされる可能性があるため注意が必要です。
抜粋の使い方と例文5選
ここでは、抜粋を使った例文を5つ紹介します。使用場面ごとに解説を加えますので、実務でも応用できるようになります。
- レポートにおける抜粋
「山田氏の論文から、『企業の成長には柔軟な組織体制が必要』という部分を抜粋して議論を展開しました。」 - 読書感想文での活用
「本書の中で特に印象に残った『孤独とは自由である』という一文を抜粋して、共感の理由を述べました。」 - ビジネスプレゼンでの引用
「資料から抜粋したデータによれば、Z世代の購買意欲はSNSの影響を大きく受けています。」 - ニュース紹介での使用
「報道記事より『2025年には再生可能エネルギー比率が40%を超える見通し』という情報を抜粋しました。」 - 会議資料作成での応用
「競合他社の発表から、『価格ではなくサービスの質で勝負する』というコメントを抜粋しました。」
抜粋は情報をピックアップして要点を明確にする際に役立ちますが、出典元や意図を正しく伝えることがポイントです。
引用の使い方と例文5選
引用は信頼性のある情報を伝える上で欠かせない表現技法です。ここでは、正しい引用の使い方を例文とともに紹介します。
- 直接引用(書籍から)
「『人間の本質は言葉に現れる』(田中 2010, p.45)とあるように、発言には意図が反映されます。」 - 直接引用(ニュース記事から)
「“政府はエネルギー政策を見直す方針を発表した”とNHKが伝えています。」 - 間接引用(論文の要約)
「佐藤は、人間関係における非言語コミュニケーションの重要性を指摘している(佐藤 2019)。」 - ウェブページからの引用
「『コロナ禍でオンライン教育が定着した』と文部科学省の公式サイトは報告しています。」 - 対話からの引用
「上司は、『時間をかけても丁寧にやることが成果につながる』と強調していました。」
引用を行う際には、出典の表記(著者名・年・ページ数またはURL)を忘れずに明記することが必須です。また、改変は厳禁であり、特に直接引用では一字一句正確に写すことが求められます。
抜粋と引用の違いの後に:参照・要約・転載など類義語

抜粋や引用に似た言葉として、「参照」「要約」「転載」「一部引用」「出典」などが挙げられます。これらの言葉は、文章作成やライティングの場面で頻繁に登場しますが、それぞれに意味や使い方、注意点が異なります。
ここでは、抜粋・引用との違いを中心に、各用語を正しく使い分けられるように解説します。
参照との違い
「参照」とは、ある資料や情報を「目で確認する」行為を指します。文章にそのまま書き写すわけではなく、あくまで自分の判断材料や補助情報として活用するのが特徴です。
たとえば、「このデータは総務省の統計資料を参照して作成しました」という場合、文章中には直接的な転載や引用は含まれておらず、元データを見て自分なりに情報を整理したことを意味します。
一方、「引用」は原文のまま使う、「抜粋」は原文の一部を抜き出すという点で、実際に文章内に反映させる行為です。したがって、参照と引用・抜粋の違いは「文章に反映するか否か」にあります。
要約との違い
「要約」とは、文章の全体的な内容を自分の言葉で短くまとめることです。これは、原文の一部をそのまま取り出す「抜粋」や、原文を正確に写す「引用」とは明確に異なります。
例えば、原著に「地球温暖化の影響で気温が年々上昇している」と書かれていた場合、要約では「気候変動により世界の気温が上がっている」というように、自分の言葉で言い換えて表現します。
要約は著作権の直接的な対象にはなりにくいですが、要約する元となる文章や情報源の出典を明示することで、読み手の信頼を得ることができます。
転載との違い
「転載」は、他人の文章やコンテンツを、自分のサイトや資料にそのままコピーして使うことを意味します。引用と異なる最大の点は「割合と許可」です。
- 引用:自分の文章が主で、引用が従。出典が明記されていれば許可不要。
- 転載:他人の文章が主で、自分の文章が少ない。原則として著作権者の許可が必要。
たとえば、他人の記事を丸ごとブログに掲載した場合、それは引用ではなく転載となり、著作権侵害に該当します。明確な基準はありませんが、文章全体の30%以上を他人の文章が占める場合は転載と見なされやすいため注意が必要です。
一部引用とは?抜粋との関係や書き方のルール
「一部引用」とは、他人の文章の中から一部分だけを使う引用方法を指します。これにより全文引用よりも柔軟に活用できますが、使用にあたっては明確なルールを守らなければなりません。
一部引用と抜粋は混同されがちですが、違いは以下のとおりです。
- 一部引用:著作権法の範囲内で、明確な出典を示し、主従関係を保ったうえで行う。
- 抜粋:文章の要点を取り出すが、引用としての体裁(出典・記号での区別)がない場合も多い。
つまり、「一部引用」は法的に保護された行為であるのに対し、「抜粋」は使い方によっては著作権侵害になる可能性があるため、出典明記や主従関係を意識することが重要です。
出典・参考文献の書き方とマナー
文章中に抜粋や引用を行った場合には、必ず「出典」や「参考文献」を記載する必要があります。これは著作権の保護だけでなく、読み手の信頼性を高める効果もあります。
出典の記載方法には複数のスタイルがありますが、代表的なものは以下のとおりです。
- 書籍の場合(MLA形式)
田中薫. 『情報社会と引用の文化』. 情報出版, 2001年. - ウェブページの場合(APA形式)
田中薫. (2020年1月11日). 出典と引用のルール. 情報会議ニュース. https://example.com/page - レポート末尾の参考文献
※論文や大学のレポートでは、巻末に「参考文献一覧」を設け、本文で参照した全ての資料をリストアップするのが一般的です。
また、Webメディアでは出典に外部リンクを設置することで、読者にとっても参照しやすい形式となります。
総括:抜粋と引用の違いまとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
比較項目 | 抜粋 | 引用 |
---|---|---|
定義 | 文章の中から一部を取り出して紹介すること | 他人の文章やデータを、自分の文章の中に挿入すること |
主な使い方 | 自分の意見の補強、要点の強調など | 根拠の提示、信頼性の向上 |
表現の改変 | 原則不可(意味を変えない範囲での省略は可) | 原則として一字一句そのまま掲載 |
著作権の扱い | 出典明記が必要、範囲によっては許可も必要 | 出典明記があれば無断使用も可(引用の条件を満たす場合) |
文章への影響 | 自分の文章の一部として馴染む | 自分の文章と明確に区別する必要がある |