読解力がない人ってどんな人?
こんな疑問を感じている人が多いようです…
自分は仕事柄、小中学生の読解力と日々向かい合っていますが、昨今の子供達の読解力は本当に低下していると感じています。
しかも、遅くても小4の段階では読解力に天と地ほどの差が同世代でついているように感じています。そういう意味では、もっと手前から読解力の差は開き続けていたのでしょう…
橘玲さんの著書の中でも「日本人の5人に1人は自力で役所の書類を提出できない」というテーマが取り上げられていました。読解力や数的思考力がなさすぎて、訳がわからないという人が多いということです。
では、読解力がない人にはどのような共通項が見られるのでしょうか?
本記事では、塾長目線で「読解力のない人の特徴」を解説していきます。国語力がない原因はどこにあるのでしょうか?
読解力のない人の全特徴:塾長目線で解説
まず最初に、塾で指導をしている立場の経験則で、どのような人に読解力がないと感じるのかを紹介していきます。
読解力がない人の特徴は以下の通りです。
大前提:語彙力(知ってる言葉の数)が少ない
読解力がない子には、共通点があります。
それは、「語彙力が少ない」ことです。
正直、読解力というのは話の内容を理解する力のことなのですが、多くの人はその手前で崩壊しています。
文章とは言葉を接続して作られ意味をなすものですが、構成要素である言葉1つ1つの意味そのものを理解していない人が多いです。
読解力不足というより、語彙力不足の方に課題があります。
特に小学生や中学生は、語彙力の差が顕著に現れます。
国語の文章を音読させて、途中で語彙力が問われそうな言葉が出た時に「〇〇って意味分かる?」と聞くと、分かる子・分からない子にスパッと別れます。毎回わかるメンバーは同じで、分からない子は固定メンバー。今後勉強が出来る子になるかどうかなど、このやり取りだけでほぼ分かってしまいます。
この差は、そう簡単に埋まりません。
語彙力が不足している場合、読解という次のステップに進めません。
漢字が読めない
読解力が乏しい人は、漢字力も付随して低いです。
これは、小中学生では顕著に現れる傾向ですが、大人でも同じことです。
要するに、長い文章を読む際に、読めない漢字が複数個存在しているので、途中で話が分からなくなるということです。
子供達を例に挙げると、読解力のない子は音読させたときに必ずどこかでつまります。その理由は、「文章で使われている漢字が読めないから」でしょう。
国語の問題を解く時は、そういった分からない漢字をスルーしながら処理するしかない訳ですが、それで問題が解けるほど甘くない。当然ですが、誤魔化し誤魔化しで解くしかないので、正答率も終わっている…
「面持ち(おももち)」を平気で「めんもち」とか読んでしまう人もいるし、こうなるともう読解どうこうの世界ではないのです。
知識・経験がとにかく不足している
読解力は、それ単体で存在しているものではありません。
先ほどお伝えした、「語彙力」「漢字力」など異なる能力の集合体として存在しているものです。
そして、読解力を構成する要素で大事なものはまだあります。それは、「知識・経験」です。
そもそも国語の文章というのは、「そのぐらい流石に知ってるでしょ?」という前提で書かれてしまうものです。全ての単語に注釈つけて意味解説している文章なんてありません。
ただ、一般的な知能を持つ人間が前提としている「普通知ってるでしょ」の感覚を共有できない人が一定数います。そもそも論、文章を読む前に必要な最低限の知識が不足している人です。
例えば国語読解の中で、「近畿地方」という言葉が出てきたとします。自塾は神戸にあるので近畿地方なのですが、このエリアに住んでいてもなお近畿地方がどこか分からない子すらいます。
これが世界になると、フランスがヨーロッパ州の中に含まれることが分からない子が出てきます。ニューヨークが国だと思っている子もいます。いや、そもそも地名であることすら認識できていない子もいます。
こういう状況で文章を読んでいても、何のことかサッパリ分からないでしょう。イメージができないのですから。
ただ、その原因は「事前に知っておくべき知識が不足しすぎていること」にあります。
しかもこれ、大抵は教科書で学ぶことというより、生きていく中で自然に身につくことで、経験から吸収していないとマズイことも多いです。
ただ、読解力のない人は経験から知識を吸収する力が弱いのか、そもそも経験不足なのか分からないですが、大きな課題がそこにあります。
ワーキングメモリが低すぎる:話の内容が覚えてられない
読解力が弱い人は、文章を読んでいるうちに、最初に書かれている文章の内容を忘却します。
これは脳の機能の1つである「ワーキングメモリ」が弱いことが原因と言われがち。つまるところ、IQ的な問題であり、遺伝要因です。
このタイプは、文章を読み進める際に、脳の片隅に最初に読んだ内容を残しておくことができません。出来たとしても精度が低いです。
ゆえに、論理展開についていくことが出来ません。文章全体を体系的に捉えるという操作が全く出来ないことになります。
だから、「文章の要約」とかさせるととんでもないことになります。
ワーキングメモリは鍛えることも出来るし、そういう教育機関もあります。ただ、一説によれば遺伝要因の影響がかなり大きく、地頭的な問題でもあります。
そういう意味では、先天的に読解という競技との相性が悪いとも言えます。
感情論で生きている:精神的に幼い
最後は、超主観的な話。
読解力がない生徒及びその保護者(つまり大人)を何人も見てきた経験から、とある共通項に気付きました。
・読解力がない人=感情論で生きてる人
正直ディスであることは分かっていますが、そう感じてしまいます…
読解力が弱い人は、そもそも論理的ではありません。論理的でないとは、物事に向き合うときに感情的になるということ。
お気持ちの部分を全面に押し出しているタイプで読解力が高い人を、正直見たことがない…
そもそも文章の内容把握とは、
・因果関係の把握
・対比関係の把握
・抽象と具体の往復
など、脳内でロジックを整理しながら読み進めていくものです。
だから、感情を排除して、淡々と数学的に読んでいかないといけない。
でも、普段からロジックが欠けていて、感情ベースで物事を進めているタイプが、読解している時だけ論理的になれるわけがない。脳みそはそんな都合よく切り替えられない。
だから、感情の起伏が激しかったり、精神的に幼いタイプは読解力が弱い。
特に、説明的文章(評論)などはまず理解できない。普段からロジックを使って生きていないからです。
このタイプは、議論しても話が噛み合いません。だから疲れます。でも、そのタイプからすれば、ロジックで話す人が疲れるのでしょう。
だから、「バカと付き合うな」的な過激なタイトルの本が出たりするわけです。
読解力のない人:国語力を上げるための対処法・改善策
ここまでは、読解力のない人に見られる共通項を主観的ではありますがお伝えしてきました。
ここからは、読解力のない人がどうやって読解力をつけるべきかを塾長目線で解説していきます。
読解力の基本は対話:コミュニケーションが命
読解力を身につける上で大事なのは、コミュニケーションです。
特に小学生の子供であれば、親子の対話が非常に大きな意味を持ちます。
例えば何でもいいから本を読ませて、その本についてあれこれ親子で話し合ってみてほしいです。お子さんがどれだけ内容を理解しているか、手に取るように分かります。
その中で、論理展開などがおかしかったらその都度修正してください。これを、小4になるまでにいかにしっかりやるかどうかです。
その際、親から子供にどれだけの語彙や一般常識が伝達しているかが極めて重要です。そうじゃないと、最初から頭が良かったり、読書に興味関心のある子以外はまず読解力なんてつきません。
漫画を読む:これ最強
読解力を上げる上で割と最強だと思うのが「漫画」です。大人にせよ子供にせよ、漫画を読むことは読解力向上に確実に役立つと思います。
なぜなら、
・漢字力
・語彙力
・知識
の3つを楽しみながら学べる最強のツールだから。
例えばワンピースなんて、全世界の都市をモデルにしてるから、それだけでも地理の勉強になる。名言も多いから、語彙力や考える力も身につきます。
それ以外にも、専門的ではあるけど、知識が自然と蓄積される漫画なんて山ほどあるはずです。
例えば「Dr.Stone」であれば、理科の知識を学ぶことができます。身の回りで起っている現象について色んな常識を身につけることができるでしょう。
もっとマニアックな漫画でもいいんですよ。
例えばキングダムであれば、古代の中国のことを学べます。それだけじゃないですよ。王様(政)と宰相(呂不韋)の関係などから、王宮ではどんな人間関係が当時あったのかが分かる。
こういうのって、歴史勉強するときに役立つのはもちろん、古文漢文の問題解く時にも役立ちます。実際、「韓非子」とか教科書に載ってるわけで、キングダム見てる人はイメージもしやすい。
もっとマニアックな話すれば、ゴールデンカムイとかでもいいです。あれってアイヌのことが分かるから、北海道に関する知識が自然と身につきます。北海道の地理感覚が勝手に養われる。
こんな風に、漫画を通して知識をストックしておくことが、読解力を高める上ではすごく重要です。少なくとも、ショート動画ばかり見ている人よりは1億倍いいです。
総括:読解力のない人の全特徴まとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
読解力がない人の特徴
- 語彙力が少ない
- 知っている言葉が少なく、文章を理解する前提が不足している。
- 小学生から顕著に差が出る。
- 漢字が読めない
- 読めない漢字が多いことで文章を理解できなくなる。
- 音読時に詰まる、漢字の誤読が多い。
- 知識・経験が不足している
- 文章が前提とする常識や知識を持っていない。
- 地理や歴史、日常的な知識の不足が影響。
- ワーキングメモリが低い
- 読んだ内容を保持できず、文章全体の流れを理解できない。
- 論理展開を追えず、要約が苦手。
- 感情論で生きている
- 論理的な思考が苦手で感情的に物事を判断する傾向がある。
- 特に評論文など、ロジックが求められる文章が苦手。
読解力を向上させる対処法・改善策
- 対話を重視する
- 本を読み、その内容について親子で話し合う。
- 子供に語彙や常識を伝えることが重要。
- 漫画を読む
- 楽しみながら語彙力、漢字力、知識を学べる。
- 例:
- ONE PIECE: 地理や名言から学べる。
- Dr.STONE: 理科の知識を吸収。
- キングダム: 歴史や人間関係の学び。
- ゴールデンカムイ: アイヌ文化や北海道の知識。
- 多読を習慣にする
- 本や漫画を通じて知識を蓄積し、自然な形で読解力を高める。
- 動画や短いコンテンツよりも読書の方が効果的。
その他のポイント
- 読解力は複数の能力(語彙力、漢字力、知識、記憶力)の集合体。
- 知識不足は、日常生活や経験の蓄積の中で埋めることができる。
- ロジックを重視した読み方や思考が必要。
