「不登校でも塾には行けるのか?」
「そもそも意味はあるのか?」
そんな疑問を抱えながらこのページにたどり着いた保護者の方も多いのではないでしょうか。
特に中学生の場合、学習の遅れや進路への不安から、「とにかく塾に行かせたほうがいいのでは」と焦る気持ちは痛いほどわかります。しかし、現役塾長として言わせていただくと、「不登校だからこそ塾に行く」という発想には、大きな落とし穴があります。
このページでは、不登校の子が塾に行くことの本当の意味を、進路別・目的別に徹底的に検証します。「子どもの未来のために、何を優先すべきか」が見えるはずです。
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【公立高校受験】内申がない場合は塾通いしても合格できない理由
公立高校入試では、「内申点(調査書点)」の比重が非常に大きく、不登校の生徒にとっては圧倒的不利です。たとえば、東京都の都立高校の一般入試では、下記のように合否が決まります。
評価項目 | 配点 | 備考 |
---|---|---|
調査書(内申点) | 300点 | 中3の9教科×5段階×2倍で算出 |
学力検査 | 700点 | 国・数・英・理・社の5教科 |
合計 | 1000点 | 内申:学力=3:7の割合で合否判定 |
内申点がゼロの場合、700点満点の学力検査で満点を取っても合計700点で打ち止め。これは、内申250点・学力400点の受験生(合計650点)にすら負ける計算になります。しかも、実際には学力試験で満点を取るのは極めて困難です。
不登校の影響で出席不足や課題未提出が続くと、内申が「1」や「未評価」になるのは避けられません。結果として、いくら塾で勉強を積み重ねても、制度的に不利な状況は変わらないのです。公立高校を目指す場合、塾通いだけではどうにもならない「内申の壁」があることを、しっかりと理解しておく必要があります。
【私立専願】推薦が取れれば合格確定?塾の役割とは
私立高校の専願受験では、多くのケースで中学校からの「推薦」を得ることが合格への最短ルートとなります。以下の表は、私立高校推薦入試の概要と合格率を示したものです。
入試区分 | 必要な条件 | 試験内容 | 全国平均合格率※ |
---|---|---|---|
私立専願推薦入試 | 所属中学校からの推薦(内申基準あり) | 面接・作文・基礎学力テストなど | 約95% |
注目すべきはその合格率。推薦が取れれば、9割以上の生徒がほぼ確実に合格します。しかし、この「推薦」が最大の関門。不登校によって出席日数や学習状況に課題がある生徒は、たとえ学力が高くても内申不足を理由に推薦が出ないことが非常に多いのが現実です。
塾でどれだけ学力を高めても、推薦が取れなければ「専願」での受験資格そのものが得られません。また、たとえ推薦入試で合格しても、その後の「コース分け(特進・進学・総合など)」は入学後のテストによって決定するため、塾の意義は進学後の「コースアップ対策」にとどまります。
つまり、塾通いが有効なのは「推薦が確実に取れる状態にある生徒」または「進学後の学習を見越して通っている場合」のみに限られます。それ以外のケースでは、塾の学習成果が受験に直結せず、コストに見合ったリターンが得られない可能性が高いのです。
【通信・定時制志望】塾に行く意味は?合格難易度は実質ゼロ
不登校の生徒が進学先として選びやすいのが、通信制高校や定時制高校です。これらの学校では、学力試験による選抜はほとんど行われず、事実上「全入」といえる状況が続いています。以下は代表的な進学先の入試概要です。
学校種別 | 偏差値 | 出願倍率 | 入試形態 | 合格難易度 |
---|---|---|---|---|
定時制A高校 | なし | 約1.0倍 | 書類選考中心 | ★☆☆☆☆ |
通信制B高校 | なし | 0.8~1.0倍 | 書類+面談 | ★☆☆☆☆ |
私立通信制C高校 | なし | 約1.0倍 | 書類のみ | ★☆☆☆☆ |
このように、入試が実質的に機能していない学校が多いため、「塾での受験対策」にはほとんど意味がありません。実際、通信制高校では、提出書類や面談で本人の意思や生活状況を確認するだけで合否を判断するケースが主流です。学力試験は行われないか、あっても確認テスト程度の内容です。
したがって、こうした進路を目指す場合においては、塾通いよりもむしろ生活習慣の安定やメンタルケア、登校へのモチベーション支援といった「非学力的サポート」が重要になります。不登校からのリスタートには、まず生活と心の安定があってこそ。進学自体が目的化している場合は、塾での学習はコスト面でも効果面でも合理的とは言えません。
不登校専門塾の存在と限界:社会性・メンタルケアの補助
不登校の増加に伴い、従来の学習塾とは異なる「不登校専門塾」「個別支援型の学習支援塾」が注目を集めています。これらは学力向上を第一目的とするのではなく、“外との接点”を提供することを重視しており、以下のような特色があります。
塾の種類 | 対象 | 主な目的 | 授業スタイル | 成果の目安 |
---|---|---|---|---|
不登校専門塾 | 不登校の小中高生 | 社会性の回復・居場所の提供 | 少人数・声かけ重視 | 通塾継続・自信回復 |
個別支援型学習塾 | 学習困難を伴う生徒 | ペースに合わせた基礎学習支援 | 1対1 or 1対2個別指導 | 学習習慣づけ |
これらの塾では、出席の有無を強く求めず、まずは「通うことができた」という体験を重視します。たとえば、授業よりも面談や雑談の時間を多く確保するケースもあります。これは、長期不登校によって自尊感情が低下した子どもにとって、“社会との再接続”の練習場となるからです。
ただし、こうした塾に「高校受験対策」や「偏差値アップ」を期待するのは誤解です。多くの専門塾では教材も汎用的なものであり、入試対応には限界があります。むしろ、“学ぶ準備を整える場”と捉えたほうが現実的です。成果の基準も「元気になった」「朝起きられるようになった」といった心理・生活面の改善が中心です。
不登校の子どもにとって、こうした塾は将来の学び直しや再登校の「足がかり」として価値がありますが、受験合格をゴールとする塾とは目的が根本的に異なる点に注意が必要です。
費用対効果をどう見る?月謝×通塾継続率のリアル
不登校の子どもが塾に通う際、最も気になるのが「費用対効果」です。とくに個別指導塾では、週1回・1教科の受講でも月2〜3万円が相場。教科を増やすと月5万円を超えることもあり、決して安くはありません。以下に代表的な料金体系をまとめます。
塾の種類 | 授業形態 | 週回数・教科数 | 月謝相場(税込) |
---|---|---|---|
個別指導塾A | 1対2指導 | 週1回・1教科 | 約22,000円 |
個別指導塾B | 1対1完全指導 | 週2回・2教科 | 約48,000〜55,000円 |
不登校支援塾C | 個別+面談型 | 週1〜2回+相談含む | 約30,000〜45,000円 |
金額の高さだけでなく、もう一つの懸念は「継続率」です。実際、不登校の生徒は心身のコンディションにより、通塾が不安定になりがちです。週1回の通塾が守れずに欠席が続き、入塾から3〜6か月以内に退塾となるケースも少なくありません。
しかも、多くの塾では「月謝制」が一般的で、欠席しても授業料は戻りません。その結果、「ほとんど通えていないのに支払いだけは続いている」という事態に直面する家庭もあります。
こうした状況下で、「学力がつけば高くない」と割り切れる家庭ばかりではありません。費用の回収が見えないと、保護者の精神的な負担も積み重なります。子どもの成長に期待して投資しているからこそ、“成果の見えにくさ”が家族にストレスを与えるのです。
不登校の子に塾通いを検討する際は、月謝の金額だけでなく、「続けられるかどうか」「何をもって成果とするか」といった視点を持つことが極めて重要です。
塾ではなく●●を選ぶ家庭が増加中
塾通いが合わない不登校生に対し、近年では「より実情に合った支援策」を選ぶ家庭が増加しています。とくに注目されているのが以下の3つの選択肢です。
支援策名 | 主な目的 | 特徴・役割 | 費用相場(月額) |
---|---|---|---|
カウンセリング | 心理的安定・自己理解 | 臨床心理士などによる傾聴・対話型支援 | 約10,000〜20,000円 |
不登校専門家庭教師 | 学習+心理的サポートの両立 | 学習だけでなく、不安の軽減・行動促進にも配慮 | 約30,000〜50,000円 |
フリースクール | 居場所+生活リズム+学び | 通学型・通信型あり。活動の自由度が高く自己肯定感UP | 約10,000〜50,000円以上 |
これらの支援策は、学力の向上そのものよりも、「不登校の背景」に対する支援を目的としています。たとえば、カウンセリングで自分の気持ちを整理することが再登校への第一歩になることもあります。また、フリースクールは無理なく人との交流を体験できる場として人気が高まっています。
最近では、塾ではなくフリースクールや専門家庭教師を選択する家庭が増えており、文部科学省の資料によれば、全国のフリースクールの登録件数は年々増加傾向にあります。これは「勉強さえできれば良い」という時代から、「子どもが安定して社会と関われること」に軸が移ってきている証拠です。
「塾は行けないけど、家庭教師なら受け入れられる」「毎日は無理でも週1回フリースクールなら行ける」といったケースも多く、通塾が合わないからといって学びをあきらめる必要はありません。不登校支援は“塾ありき”ではなく、子どもの状況に合った多様な選択肢の中から、最適なものを選ぶことが大切なのです。
不登校でも塾には行く?その意味と実態
不登校の子が「学校には行けないのに塾には行ける」という現象には、多くの保護者が驚きと戸惑いを覚えます。ここでは、その“現象”の背景にある心理的要因、実際の通塾目的、さらには塾現場で起きているリアルな事例まで、包み隠さずお伝えします。
学校は行けないけど塾には行ける」ってどういう状態?
「学校には行けないけど塾には行ける」という不登校生は、実際に多数存在します。SNSや掲示板でも「学校は集団生活がつらいけど、塾は短時間で気楽」「個別対応の塾なら人と話さなくていい」といった声が多く見られます。
この違いは、「心理的ハードルの低さ」によるものです。以下の表に、学校と塾の環境的な違いを整理しました。
比較項目 | 学校 | 塾(特に個別指導型) |
---|---|---|
人間関係 | 固定・同級生中心 | 指導者+少人数、生徒の入れ替えあり |
滞在時間 | 約6〜8時間(授業・給食・清掃等) | 約1〜2時間(授業のみ) |
活動の幅 | 授業・行事・部活・昼休みなど多数 | 基本は学習活動に限定される |
柔軟性・選択権 | 時間割・座席・人間関係は固定 | 曜日・時間・担当者の選択が可能 |
ルールの厳しさ | 校則・集団規律あり | 最低限のマナー重視、自由度が高い |
このように、塾の方が「限定された環境」であることが、不登校の生徒にとっては精神的な安心材料になります。また、学校と異なり“出席”という制度的なプレッシャーがない点も大きな要因です。
もちろん全員に当てはまるわけではありませんが、「学校には行けない=すべての場に行けない」ではないという事実は、本人にとっても保護者にとっても重要な気づきとなります。不登校支援を考える上で、まずはこの“選択肢の存在”を知ることが第一歩です。
不登校の子どもが塾に行く3つの本当の理由
不登校の子どもが塾に通う理由は、「受験合格」や「学力向上」だけではありません。むしろ、心理的・生活的な要素が主な動機になっているケースが多く見られます。以下に、よく見られる3つの理由を整理しました。
理由 | 内容 |
---|---|
居場所づくり | 学校には行けなくても、家庭以外で安心できる空間が必要 |
少人数空間での社会性維持 | 学校ほど密接な人間関係ではなく、緩やかな関わりを通して社会性を保つ |
生活リズムの維持 | 昼夜逆転やひきこもりを防ぐ目的で、「週に数回外出するきっかけ」として塾を活用 |
これらの目的においては、塾での学習成果そのものよりも「塾に通えていること自体」に価値があります。実際、不登校支援団体の調査でも、「目的は勉強より生活リズムの改善や社会性の回復」と答えた家庭が過半数を占めています。
しかし一方で、保護者の中には「成績が上がらない」「志望校に届かない」といった理由で通塾に失望し、早期退塾に至るケースも見られます。それは、本来の目的を見失ってしまった結果といえるでしょう。
不登校の子が塾に行く意味は「通うことで前進している」という事実そのものにあります。最初から「受験のため」と構えず、“今できる小さな一歩”として通塾を評価することが、継続や成果にもつながっていくのです。
通塾に意味がある?目的別で考える「通う価値」
不登校の子どもが塾に通う意味は、一律に語れるものではありません。「何のために通うのか」という目的によって、その価値は大きく変わります。以下の表に、目的別の塾通いの意味と注意点を整理しました。
通塾の目的 | 塾通いの価値 | 注意点 |
---|---|---|
受験合格 | △ 条件が整えば有効 | 内申点不足や欠席の多さで推薦不可のケース多い |
学力維持 | ○ 学習習慣の継続に効果的 | 継続できないと逆効果になることも |
社会性の保持 | ◎ 対人接触のトレーニングに最適 | 本人の負担にならない配慮が必要 |
生活リズムの維持 | ○ 外出機会として意味あり | 通塾が義務になると逆効果になる可能性も |
特に受験を目的とした場合、不登校の影響で内申が不足していたり出席日数が足りなかったりすると、そもそも受験の土俵に立てない可能性があります。そのため、通塾の「成果=合格」と直結させてしまうと、多くの家庭では期待外れになるでしょう。
一方で、本人の気持ちに寄り添いながら、学びの継続や人間関係のトレーニングの場として通塾を活用することは、大きな意義があります。大切なのは「何のために塾へ通うのか」を明確にし、その目的に沿った支援を行うことです。目的と手段を取り違えなければ、塾は不登校の子どもにとって貴重な“回復の足がかり”となりうるのです。
「出席扱い」になるって本当?オンライン学習との違いは?
近年、「自宅学習でも出席扱いになる」という情報が広まりつつあります。実際、文部科学省は2019年に「出席扱いの取扱いガイドライン」を示し、特定のICT教材やオンライン学習を一定の条件下で“出席扱い”と認めています。
ただし、すべての自宅学習が認められるわけではなく、以下のような明確な条件があります。
要件項目 | 内容の概要 |
---|---|
学校長の認可 | 学校側が内容を把握し、出席扱いとして認めていること |
学習計画の提出 | どの教材を使い、何をどのように学ぶかを明確に提示すること |
指導内容の確認 | 担任などが学習の進捗・成果を随時確認できる仕組みが必要 |
教材の信頼性 | 文科省が効果を認めたICT教材であること(例:すらら、スタディサプリなど) |
これらの条件を満たすことで、通信教材による在宅学習でも出席扱いが可能になります。一方で、一般的な学習塾はこの対象外です。塾はあくまで「学校外の学習機関」であり、たとえ毎日通っていても出席日数には加算されません。
出席扱いを希望する家庭は、フリースクールやICT教材を学校と連携して導入するのが現実的です。「塾に行ってるから安心」と誤解せず、制度の正確な理解と計画的な対応が求められます。
塾長として見た「塾だけ通う不登校生」が直面する現実
現役塾長として数多くの不登校生を見てきましたが、「塾には通えるけど学校には行けない」という子どもたちが直面する共通の“壁”が中学3年生で明確になります。最初は「通えていること自体が偉い」と感じますが、時間が経つにつれ、本人・保護者ともに迷いが出てきます。
以下は、不登校生が塾でぶつかる典型的な課題を整理した表です。
直面する課題 | 実際の影響 |
---|---|
進路が見えない | 目標が曖昧なまま学習を続けることでモチベーションが低下 |
受験モードとのギャップ | 周囲の緊張感に対し、本人がついていけず焦りを感じる |
内申不足で志望校を断念 | 学力があっても受験制度に対応できず、諦めるケース多数 |
「何のための塾か」が不明確に | 成績が上がっても意味を感じられず、通塾継続が困難になる |
不登校生の多くは「塾で勉強できればなんとかなる」と期待されがちですが、受験制度や進路選択の現実はそれほど甘くありません。特に中3では、周囲との温度差が顕著になり、「塾で何をすべきか」が曖昧なまま、通塾自体をやめてしまうケースが後を絶ちません。
大切なのは、塾をゴールにするのではなく、「通った先に何を目指すのか」を家庭と本人が一緒に描いておくことです。目的のない通塾は、親子双方にとって精神的・経済的な負担になりかねません。
総括:不登校が塾には行くのはナシ?まとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
- 不登校でも塾に行くことは可能だが、目的が曖昧だと意味を失う
- 公立高校は内申点が重要。不登校では内申不足で合格が難しい
- 私立推薦も出席・成績が評価対象。推薦がもらえないケース多数
- 通信制・定時制高校は入試難易度が低く、塾に通う必要性が低い
- 不登校専門塾はメンタルケア重視。偏差値UP目的の塾とは異なる
- 個別指導塾の月謝は高額(2~5万円)、継続困難な例も多い
- フリースクール・家庭教師・カウンセリング等の代替策が有効
- 「学校には行けないけど塾には行ける」背景には心理的要因あり
- 通塾の本当の意味は“社会との接点”や“生活リズム維持”にある
- 目的が「受験合格」なら、制度面のハードルに要注意
- 塾だけ通う不登校生は中3で進路不明確になり、挫折しやすい
- 出席扱いになるのはICT教材(スタサプ等)使用+学校連携時のみ
- 塾通いの前に、「目的と手段」を明確にすることが最重要