「スーパーで600円のお弁当に30%OFFの割引シールが貼ってあります。あなたは、いくらでそのお弁当を買うことが出来ますか?」
この質問をされた時、公立中学の生徒であれば、下位50%の子はほぼ答えることが出来ません。ちなみにこの問題は、小5の問題集に載っています。
だから当然ですが、
「昨年度にくらべて今年度は生徒数が5%増加したので生徒数が294人になった。 昨年度の生徒数を求めよ。」
とか方程式が混ざってこれば、通知表で最低でも4がついている子でないとお話にならないことは簡単に想像できると思いますし、現場感覚でもそんな感じです。上の問題は、中1数学のワークのAランク問題(そのジャンルでは一番優しい)ですが、上位40%以上にいない子はほぼ壊滅します。いや、上位40%でも一部解けない子が出ます。
これが、
「ある商品を仕入れて原価の7割の利益を見込んで定価をつけた。定価では売れなかったので 定価の4割引で安売りした。すると商品1個についての利益は40円だった。 この商品1個の原価を求めよ。」
にまで発展してしまえば、公立中学であれば、多めに見積もっても上位の20%の生徒ぐらいしか解けないです。いや、ひどいと15%ぐらいまでしか解けず、第一学区なら偏差値63の御影高校以上の子じゃないと無理でしょう。
これらの問題に共通しているのは、
・単純に公式にハメれば済むようなパターン問題ではなく、必要な情報を整理し、脳の中で一定レベルの思考が必要なこと
にあります。
しかし、
「スーパーで600円のお弁当に30%OFFの割引シールが貼ってあります。あなたは、いくらでそのお弁当を買うことが出来ますか?」
レベルの小学生問題でも手が止まってしまう中学生というのは、明らかに思考力が欠落しています。
小5で習ってすぐならまだ分かりますが、中2とかになってもこの問題が解けない子に関しては、脳内の思考の歯車が完全に錆びついて動いていないと言わざるを得ないです。
これが学年下位50%以下の実態で、第一学区であれば偏差値53程度の六アイですら受からない子達にあるあるのパターンです。オール3の生徒、およびそれより下の生徒は大体こんな感じです。
当たり前ですが、このレベルの子に方程式でXが入った問題を解かせられるわけもなく、これが連立方程式や二次方程式、1次関数の文章題や、最近流行りの思考力を試す問題になれば、完全にフリーズすることは安易に想像できるはずです。
※最近流行りの思考問題ってこんなの↓です。

ちなみにこれは、兵庫県の公立高校受験の数学の問題です。
中学生時点で「スーパーで600円のお弁当に30%OFFの割引シールが貼ってあります。あなたは、いくらでそのお弁当を買うことが出来ますか?」が解けない子が、このレベルの受験問題まで到達するのがどれだけ絶望的か想像できませんか?
残り1年ちょいで上の問題が解けるようにする魔法のような指導法があるなら、こっちがお金出して買うので誰か教えて欲しいレベルです。だから下半分を受け入れて、真ん中よりも上以上の公立高校に合格させるのはほぼ無理ゲーなのです。
しかし、下位50%を中心とした低学力層は、なぜこうも思考問題が解けないのでしょうか?
下位50%の思考力が壊滅的な理由:思考を避け続けて脳みそを氷漬けにしてきたから
下位層が思考しない(できない)理由は何ですか?
・脳構造的に地頭がよくないからです(=遺伝要因です。)
と、言ってしまえばそこまでだし、ある一定レベル以下になると、もうそれが真理だったりしなくもないのですが、今回はそれは一旦封印します。
なぜなら、「スーパーで600円のお弁当に30%OFFの割引シールが貼ってあります。あなたは、いくらでそのお弁当を買うことが出来ますか?」ぐらいの思考であれば、学習障害や境界知能など例外ケースを除けば、誰でも解けるような問題だからです。
だって、「30%OFFとは全体を100%と見たときに、30%引くことで、結局は70%になるということ。だから、600円に0.7をかけ算して答えは420円!」ってだけの話。
割合における%の概念(全体を100と見る)の理解と、%を計算する時は小数か分数にしてかけ算するって話さえ理解していれば、中学生にもなれば大した負荷のかからない思考でしかないです。
でも、それが出来ないということは、何か本質的な理由があるはずです。
その理由とはズバリ、「これまで思考訓練から逃げ続ける生き方を繰り返した結果、脳みそが氷漬けになってピクリとも動かなくなっているから」です。
そもそも思考には、地頭の良し悪しにはよるものの、大なり小なりの”苦痛”が伴います。脳に汗をかくということなので、運動で体を動かしてしんどいと感じるのと同じようなものです。
だけど、苦痛を嫌い、大変なことから逃げ続け、常に楽な道を選択する人間はいて、それが勉強の世界では下位50%に密集しやすいです。いや、最近だと下位50%どころの騒ぎじゃないです。
この層は、これまで思考するチャンスは何度でもあったはずですが、その都度「思考せずに済む方」を選択し続けてきています。脳が疲れるし、めんどくさいから、解答を丸暗記したり、赤ペンで答えを書き写したり、解説された後に自分の頭で考えるということスキップしたりと、あらゆる場面で思考停止の生き方を積み上げています。
その結果、年齢に見合った思考経験がなされず、使われてこなかった脳みそはカチカチに氷漬けになり、いざ思考させようとしても固まって動かない状態となっていて詰みます。何年も車庫に放置した車に、久しぶりにエンジンをかけた時に起こる現象とよく似ています。
脳が氷漬け状態で思考停止な生徒の識別法
ちなみに、学年順位など客観的な数字をベースに判断すれば、その子が思考する子か、脳が凍りついている子は大体分かります。下位50%は思考などしていません。少なくとも、こちらの求める最低限の思考基準には達していないという意味です。
ただ、このタイプの生徒は、指導しているとあらゆる場面で識別できます。
一番分かりやすい教科は英語です。
中1の英語では三単現のs(IとYouと複数以外が主語なら動詞にsをつける)を習いますが、この時の問題演習の取り組み方を見れば、ほとんど分かってしまいます。
この単元を履修させて問題を解かすと、思考停止で生きている人間は、すべての問題の動詞に三単現のsをつけてきます。「We likes tennis.」と平気で書きますし、酷いと「I likes tennis.」になる子もいます。
三単現のsをつける前に、主語を見て、それがsをつける状況かどうかを考えることなく、「今日は動詞にsをつけておけばいい日」ぐらいのノリで手を動かすのがこの層のあるある行動。
まともな思考ができる人間が取る行動じゃない。
なお、こういう子は、小学生段階でも同じように思考放棄の行動を繰り返し続けてきています。
例えば算数でも、割り算の文章題を習った日は割り算しかできないです。数問かけ算の問題を混ぜれば、まず間違えなく割り算をします。問題文を見て、「なぜ割り算になるか」など考えることもなく、今日は割り算をやっているから割り算をするのです。
そこに思考はない。ただの手の運動です。
だから、このタイプの子を学習塾や公文に入れても伸びません。こんな作業にお金を払っているのですから当たり前です。
でも、脳に負荷をかけたくない人間は、無意識にこういう生き方を選択し続け、勉強以外の局面でも、ありとあらゆる場面で無思考な行動パターンを反復します。その結果、脳みそが凍りついているのです。使わない臓器は自然と衰えていくのでしょう。
公文式を小学生からやっていても成績が良くない子は、悪い意味で反復学習が作用している傾向にあります。意味もわからずかけ算や割り算を繰り返し、「なぜ掛け算か、なぜ割り算か」という手を動かす前のプロセスを放棄することに慣れきってしまうのもまた悪で、これなら何も習い事をしてこなかった子の方がまだマシ説すらあるわけです。
思考停止の中学生:凍りついた脳みそを溶かす唯一の方法
では、ここからは氷漬けになった思考停止の脳みそを持つ、下半分以下の子供達をどうすればいいか?という話。
まず大前提ですが、残念な話、中学に上がってこの状態なのであれば、まともに改善するケースの方が極めてレアであることは受け入れておくべきです。仮にまともになるとしても、それは高校生かもしれないし、社会人以降かも知れません。そのぐらい、中学生の残りの時間だけでなんとかすることが難しい問題であることはご理解いただきたいです。
で、その上で、茨の道ではあるももの改善しようと行動を起こすならどうすればいいか?って話ですが、自分はこれしかないと思います。
・小学校の内容に戻し、本当に簡単な問題でもいいから、思考する訓練を積ませる
正直、中学の問題は思考レベルが高く、そのレベルの子がいきなりぶつかる壁としては高すぎます。そもそも小学生の問題ですらまともに思考してこなかったわけで、いきなり中学生の問題に飛び級させることに無理がありますからね。
だから、思い切って、めちゃくちゃ簡単な問題から思考させ、考えるとはどういうことかを骨の髄まで染み込ませてあげるしかないです。
もちろん、口で言うのは簡単ですが、実行するのは茨の道です。
そもそもこの子達は、思考が嫌いで嫌いで仕方が無い子です。いかに簡単な問題と言えども、思考アレルギーで発作を起こすことが安易に想像できます。だから、最初のハードルが恐ろしく高いです。
ここで性格が悪く忍耐力があまりに低い場合だと、反抗したり言い訳して誤魔化したりを繰り返し、一向に前に進まない時期が続くでしょう。でも、その先にしか思考力はないので、粘り強く支えしかないです。
ただ、それでも、親の思う目標に到達できるかは別問題です。
その子の地頭レベルと掲げている目標の高さに乖離があればあるほど、残された時間の中ではどうしようもないこともあり、残念ながら現時点で逆算した場合、どうあってもその目標には到達しないのでは?と思うこともあるでしょう。地頭という遺伝要因も大きく影響するのもこの問題の難しいとところです。
でも、「不利な要因であっても 不能の要因では無い」と気持ちで負けず子どもと向き合うしかないし、親はどれだけ辛くても辛抱するしかない。そうなるまで放置した親自身にも責任や落ち度がないわけではないのですから。

ただね、大前提として、今言っている話は、「全部小学生のウチから当たり前にやっておくべきこと」です。
特に、勉強の世界で一定の成果(※例えば公立高校で偏差値53〜60以上の高校に行く)を出すことがゴールであれば、それはもう最低条件だと思います。
勉強面にこだわりのない人は、思考停止人間になることで被るデメリットさえ受け止めておけばそれ以上に困ることはないかも知れませんが、そうでない場合は中学に入る前までがデッドラインだと思っておくべきです。
残酷な話ですが、一度ガチガチに凍りついた脳みそは、大人になっても溶けてはくれないことがほとんどです。

総括:下位60%の思考力が絶望的に欠落する理由まとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
- 簡単な割合問題(例:600円の弁当が30%OFF)を中学生の下位50%は解けない
- 中学数学の文章題(例:一次方程式や関数)になると、上位20%前後しか対応できない
- 思考問題が解けない最大の理由は「思考を避け続けて脳が氷漬け状態になっている」ため
- 思考は苦痛を伴うが、それを避け続けた結果、思考経験が乏しく脳が固まっている
- 英語や算数の演習で「意味を考えず機械的に手を動かす」行動が典型例
- 公文式などでも「なぜ割り算か」を考えず、ただ反復することで悪影響が出ることもある
- 下位層は「思考放棄の習慣」を長年積み重ねた結果、中学で完全に詰む
- 改善の唯一の道は「小学校レベルの簡単な問題に戻り、思考を強制的に訓練すること」
- ただし、改善は極めて難しく、中学の残り時間で劇的に変わるケースは稀
- 本来は小学生段階で「思考する習慣」を徹底しておくことが必須であり、それが偏差値53〜60以上の高校進学の最低条件
