「七転び八起き」と「七転八倒」。どちらも似たような漢字が並ぶ四字熟語ですが、実は意味も使い方もまったく異なります。見た目が似ているため、誤用してしまう人も少なくありません。
しかし、これらの言葉はそれぞれに込められた背景や感情が大きく異なり、正しく理解することで、日常やビジネスでの表現力が格段にアップします。
本記事では、「七転び八起き」と「七転八倒」の違いを徹底的に比較し、それぞれの意味・由来・使い方・例文、さらには関連語や英語表現まで分かりやすく解説します。
七転び八起きと七転八倒の違い!意味や使い方を比較

「七転び八起き」と「七転八倒」は、どちらも“七”と“八”という数字が使われているため、混同しやすい言葉です。しかし、実際の意味や使い方には大きな違いがあります。
ここでは、それぞれの言葉の意味や語源、使用例を比較しながら、分かりやすく整理して解説していきます。混乱しやすい表現だからこそ、しっかり違いを理解して正しく使えるようにしましょう。
七転び八起きと七転八倒の違い比較表
七転び八起きと七転八倒の違い比較表は以下の通りです。
項目 | 七転び八起き | 七転八倒 |
---|---|---|
読み方 | ななころびやおき | しちてんばっとう |
意味 | 何度失敗しても立ち上がること | 激しい苦痛や混乱でもがき苦しむ様子 |
由来 | 仏教や「だるま」から派生 | 中国の古典「朱子語類」から由来 |
漢字構成の意図 | 転んでもより多く起き上がるという希望の象徴 | 何度も倒れて苦しむ絶望的な状況 |
感情のベクトル | ポジティブ(挑戦・努力・前向き) | ネガティブ(苦痛・混乱・絶望) |
使用場面 | 励まし・再挑戦・成功体験 | 病気・失敗・精神的混乱 |
類語 | 不撓不屈・捲土重来・七転八起 | 四苦八苦・悪戦苦闘・千辛万苦 |
見た目が似ていても、意味は真逆に近い表現です。ポジティブな再起を表す「七転び八起き」と、ネガティブな苦痛を表す「七転八倒」は、使い分けに注意が必要です。
七転び八起きの意味とは?仏教由来の前向きなことわざ
「七転び八起き(ななころびやおき)」とは、たとえ何度失敗しても、その都度立ち上がって再挑戦することを意味します。数の意味は象徴的で、「七」や「八」は“何度も”を強調するための数字とされます。
「七回転んでも八回起きる」という表現は、単なる回数ではなく、「諦めずに前に進む姿勢」を示しているのです。
この言葉の語源には複数の説がありますが、最も有力とされているのは仏教由来の説です。仏教においては、どんな困難や試練に遭遇しても心を乱さず、再び道を歩もうとする「不屈の精神」が尊ばれています。
また、「七転び八起き」を象徴する存在として「だるま」がよく挙げられます。倒しても自然に起き上がるだるまの姿は、このことわざの精神を具現化したものとされています。
七転八倒の意味とは?苦しみや混乱を表す四字熟語
「七転八倒(しちてんばっとう)」とは、激しい痛みや苦しみによって転げ回る様子を意味する四字熟語です。語源は中国の古典『朱子語類』に登場する「七顛八倒」という表現に由来しています。
これは王朝の混乱を表した言葉であり、その激しい様子を比喩的に「転んでは倒れ、倒れては転ぶ」様子として描いています。
現代では、肉体的な痛み(腹痛、発熱、けがなど)や、精神的なショック(失恋、仕事の失敗、絶望的な状況など)を表現する際に使用されます。「七転び八起き」が再起を意味するのに対して、「七転八倒」は再起する力もなく、ただもがいて苦しむ状態を指します。
ネガティブな感情や状況を強く伝える表現として使われるため、使いどころには注意が必要です。
七転び八起きを使った例文まとめ
「七転び八起き」は、前向きな姿勢や努力を象徴する言葉として、あらゆる場面で活用できます。以下に使用例を紹介します。
- ビジネスシーン
「今回のプロジェクトは失敗に終わったが、七転び八起きで次に活かそうと思う。」 - 教育現場
「生徒には、失敗を恐れず七転び八起きの精神で挑戦してほしい。」 - 日常生活
「ダイエットはうまくいかない日もあるけど、七転び八起きで続けているよ。」 - 自己啓発
「何度も資格試験に落ちたが、七転び八起きの覚悟で勉強を続けた結果、合格できた。」 - 感動的な場面
「彼の人生はまさに七転び八起きだった。どんな困難にも負けなかった。」
このように、「七転び八起き」は挑戦や励ましの文脈で非常に使いやすい表現です。
七転八倒を使った例文まとめ
「七転八倒」は、激しい苦痛や混乱を表す際に使われます。以下に具体的な使用例を紹介します。
- 病気の場面
「激しい腹痛に襲われて、七転八倒の苦しみに耐えていた。」 - 失恋や精神的なダメージ
「突然の別れ話に、彼女は七転八倒して泣き崩れた。」 - トラブル・混乱の描写
「現場は大混乱で、スタッフ全員が七転八倒していた。」 - 挑戦中の苦悩
「新曲の歌詞が全く書けず、七転八倒しながらもなんとか完成させた。」 - パニック状態の例
「災害発生直後は誰もが七転八倒し、避難に手間取っていた。」
この言葉は、シリアスな状況や緊急性の高い場面で使われるため、適切な文脈での使用が求められます。
七転び八起き・七転八倒の違いの後に:関連知識と使い分けのポイント

ここまでは「七転び八起き」と「七転八倒」の基本的な違いを押さえましたが、ここではさらに深掘りしていきます。なぜ七回転んで八回起きるのかという素朴な疑問から、だるまとの関係、類語・関連語の正しい使い分け、さらには海外の類似表現まで、幅広く紹介します。
より実践的で応用の利く知識を得て、言葉の理解をさらに深めましょう。
なぜ「七転び八起き」は数字が合わないのに正しいのか
「七転び八起き」と聞いて「7回しか転んでいないのに、どうして8回起きられるの?」と疑問を感じたことはありませんか?これは多くの人が一度は持つ疑問ですが、実際には“回数”が問題なのではなく、“象徴”としての意味合いが強い表現です。
「八」という数字は日本文化において“末広がり”の形から縁起が良いとされ、繁栄や成功を示す数字として好まれます。そのため「七転び七起き」ではなく、「八起き」とすることで、ポジティブな意味を強調しているのです。
また、人は生まれて最初に一度起き上がる(=立ち上がる)ことを含めて「起き上がり八回」とする説もあります。つまり、1回目の“起きる”は生まれて最初の立ち上がりであり、転ぶ前の起き上がりがカウントされているというわけです。
七転び八起きの象徴「だるま」に込められた意味と由来
「七転び八起き」の象徴といえば、やはり「だるま」です。日本の家庭や商売繁盛の祈願で広く使われる縁起物であり、その丸みを帯びた形状から、倒してもすぐ起き上がる性質を持っています。
この形は、仏教の高僧・達磨大師がモデルとされており、厳しい修行に耐える不屈の精神を表したものです。だるまは目標を立てて片目を入れ、達成したときにもう一方の目を描き入れるという習慣がありますが、これは「努力を継続し、必ず結果を出す」という誓いを形にしたものです。
つまり、「だるま=七転び八起き」は、単なる縁起物ではなく、人生において何度倒れても諦めない精神を形にした象徴なのです。ビジネスや受験、スポーツなどでだるまが用いられるのも、そうした精神が求められる場面だからこそなのです。
七転八倒と混同しやすい類義語
「七転八倒」は激しい苦痛や混乱を表す四字熟語ですが、同じように苦しみを表現する熟語として「四苦八苦」や「悪戦苦闘」なども存在します。これらの違いを知っておくことで、より正確な言葉選びが可能になります。
- 四苦八苦:仏教由来の言葉で、人生における根本的な苦しみを表す。精神的な悩みや辛さに重点が置かれる。
- 悪戦苦闘:非常に困難な状況で懸命に努力する様子。戦いのニュアンスが含まれるため、努力の側面が強い。
- 千辛万苦:あらゆる苦しみを経験するという意味で、量的な多さを示す。
これらと比較して「七転八倒」は、痛みに悶えるような肉体的・精神的苦痛や、極度の混乱状態を表す点が特徴です。単に“苦労する”のではなく、“どうにもならないほど苦しむ”状態を指します。
七転び八起きの類語・同義表現まとめ
「七転び八起き」は、何度失敗しても立ち上がる強さを象徴することわざです。これと似た意味を持つ類語もいくつか存在し、場面に応じて使い分けることで表現の幅が広がります。
- 不撓不屈(ふとうふくつ):どんな困難にも負けない強い意志を持つこと。
- 捲土重来(けんどちょうらい):敗北しても再び挑み、挽回しようとすること。リベンジ精神を含む。
- 七転八起(しちてんはっき):四字熟語版の「七転び八起き」。文章やスローガンで用いられることが多い。
- 逆境に負けない:口語表現としてはこれも近い意味で使われる。
- 立ち直る・再起する:日常会話での柔らかい表現。
こうした表現は、モチベーションや自己啓発の文脈で使いやすく、ビジネス文書やスピーチでも重宝されます。
「七転び八起き」の英語表現や海外の類似ことわざ
「七転び八起き」の精神は日本独特のものに思えますが、世界各国にも似たような表現があります。英語・中国語・フランス語などでの表現を紹介します。
- 英語:「Fall seven times, stand up eight」
直訳すればまさに「七回倒れて八回立つ」という意味。日本語と非常に近い表現です。 - 英語の別表現:“If at first you don’t succeed, try, try again.”
最初に失敗しても、何度でも挑戦しなさいという意味。 - 中国語:「失败是成功之母(失敗は成功の母)」
失敗があってこそ成功があるという教訓を表す言葉。 - フランス語:「Tomber sept fois, se relever huit」
日本語と同じく「7回倒れても8回立ち上がれ」という意味で使われます。
これらの表現を知っておくことで、異文化間でもモチベーションや励ましのメッセージを効果的に伝えることができます。
総括:七転び八起きと七転八倒の違いまとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
項目 | 七転び八起き | 七転八倒 |
---|---|---|
読み方 | ななころびやおき | しちてんばっとう |
意味 | 何度失敗しても立ち上がること | 激しい苦痛や混乱でもがき苦しむ様子 |
由来 | 仏教や「だるま」から派生 | 中国の古典「朱子語類」から由来 |
漢字構成の意図 | 転んでもより多く起き上がるという希望の象徴 | 何度も倒れて苦しむ絶望的な状況 |
感情のベクトル | ポジティブ(挑戦・努力・前向き) | ネガティブ(苦痛・混乱・絶望) |
使用場面 | 励まし・再挑戦・成功体験 | 病気・失敗・精神的混乱 |
類語 | 不撓不屈・捲土重来・七転八起 | 四苦八苦・悪戦苦闘・千辛万苦 |