「イナゴとバッタって何が違うの?」

一見よく似た昆虫ですが、実は分類や生態、見た目に明確な違いがあります。特に自然観察や農業に関心のある方、子どもと一緒に虫を観察したい保護者の方にとっては、この違いを知ることはとても重要です。

この記事では、イナゴとバッタの違いを知りたい疑問を解消すべく、意味や分類、生息環境の違い、そして見分け方や文化的な背景までをわかりやすく徹底解説していきます。

イナゴとバッタの違いを解説!見た目・生態・分類を比較

イナゴとバッタは、どちらも「バッタ目(直翅目)」に属する昆虫です。しかし実際には、分類や生態、食性などの観点からそれぞれ異なる特徴を持ちます。

ここでは、まず両者の違いを視覚的にわかりやすい比較表で示し、それぞれの言葉の定義や種類、見分け方まで詳しくご紹介していきます。

イナゴとバッタの違い比較表

イナゴとバッタの違いが分かる比較表は以下のとおりです。

項目イナゴバッタ
分類バッタ目イナゴ亜科、またはイナゴ属バッタ目バッタ亜科全般
喉の突起あり(のどちんこと呼ばれる突起)なし
生息環境湿地や水田など、湿った草地を好む草原や乾燥地など、比較的乾いた場所を好む
食性主にイネ科植物(稲・ススキなど)種類により異なり、マメ科・キク科なども食す
外見の違い細身で茶色が多い、翅が短いこともある種類によって異なり、緑や茶など体色に幅がある
食用の有無食用として佃煮などにされる一部を除いて基本的に食用とされない
群生行動の有無基本的に単独で行動群生相(蝗害)を引き起こす種も存在する

イナゴとは?意味・特徴・種類をわかりやすく解説

イナゴとは、直翅目バッタ科イナゴ亜科、またはイナゴ属に分類される昆虫の総称です。水田や湿地帯に生息しており、特にイネ科の植物を好んで食べることで知られています。

代表的な種類には「コバネイナゴ」「ハネナガイナゴ」「ツチイナゴ」などがあり、これらは地方によっては食用として親しまれてきました。イナゴの最大の識別ポイントは、喉の部分にある丸く突き出た「のどちんこ」と呼ばれる突起です。体色は茶色系が多く、湿った環境に適応しています。

かつてはイナゴとバッタは別の科とされていましたが、現在では同じバッタ科に分類されることも多くなっています。

バッタとは?意味・分類・身近な種類を紹介

バッタとは、直翅目バッタ亜目に属する昆虫の総称です。イナゴを含むさまざまな種類がこの中に含まれていますが、一般的に「バッタ」と言えば、トノサマバッタやショウリョウバッタ、オンブバッタ、クルマバッタなどを指すことが多いです。

体色は緑から茶まで多彩で、成長環境によって色が変わる保護色を持つ種類もあります。特に「トビバッタ(サバクトビバッタ)」は、相変異を起こして集団で移動し、蝗害を引き起こすことがあるため、世界的に重要な農業害虫として知られています。

触覚の長さや体の形、後脚の発達度なども種類によってさまざまで、見た目にはかなりのバリエーションがあります。

イナゴとバッタの見分け方のコツ

イナゴとバッタは見た目がよく似ているため、慣れていないと見分けが難しいですが、以下のポイントに注目すれば判断できます。

見分けのコツ5選

  1. 喉の突起:イナゴには「のどちんこ」がありますが、バッタにはありません。
  2. 生息環境:イナゴは水田や湿地に多く、バッタは乾燥した草原や河川敷などに多く見られます。
  3. 体色の違い:イナゴは茶色系、バッタは緑~茶まで多様。
  4. 翅の長さ:イナゴは翅が体より短いものが多く、バッタは翅が長めで飛行力が強い種類が多い。
  5. 鳴き声や行動:トノサマバッタのオスは「チキチキ」と鳴きながら飛ぶが、イナゴにこの習性はありません。

なぜ「バッタ」と「イナゴ」が混同されやすいのか

「イナゴ」と「バッタ」が混同される理由には、いくつかの文化的・言語的背景があります。

混同の理由5選

  1. 分類が近い:どちらも直翅目バッタ科に含まれ、分類上の差が小さい。
  2. 見た目が似ている:色や形状が共通しており、素人目には判別が難しい。
  3. 翻訳の影響:英語の「locust」が「イナゴ」と訳されることが多く、混乱を招く。
  4. 食用文化:イナゴは食用になるため特別視されがちだが、分類上はバッタと同じ。
  5. 昔の図鑑・教科書の表現:イナゴを別科とする分類もあったため、誤解が広まりやすかった。

イナゴとバッタの違いの後に:生態・食性・文化的な違い

イナゴとバッタの違いは、見た目や分類だけではありません。生き物としての生態、食性、さらには言語や文化における使われ方までさまざまです。

ここでは、農業害虫としての側面や英語での表現、よく似た種同士の違いなど、検索ユーザーが次に気になるであろう情報を深掘りしていきます。

生態の違い|越冬・相変異・繁殖行動の違い

イナゴとバッタは、生活サイクルや集団行動にも違いがあります。

イナゴは基本的に1年で成虫になり、繁殖を終えて冬には死ぬ「年一化」の昆虫です。一方、ツチイナゴのように成虫のまま冬を越す「越冬性バッタ」も存在します。

また、バッタの中でもトノサマバッタやサバクトビバッタのように、環境条件によって色や体型を変え、群れで移動する「相変異(そうへんい)」を起こす種類もいます。これが大規模な蝗害(こうがい)に発展することもあり、国際的にも問題視されています。

イナゴとバッタの食性の違い|何を食べる?味は?

イナゴは主にイネ科の植物、特に稲やススキなどを好んで食べます。このため、水田周辺で多く見られ、古くから「害虫」でありながら「貴重なたんぱく源」として食用にもされてきました。

一方で、バッタは種類によって食性が大きく異なり、イネ科だけでなくマメ科、キク科などさまざまな植物を食べる「広食性」の種もいます。特にツチイナゴはマメ科の草を好み、花壇のマリーゴールドまで食べることが確認されています。

ちなみに、味については、イナゴは素揚げや佃煮にすると香ばしく、地方によっては郷土料理の一部になっていますが、バッタは食用にはされることが少なく、味や食感にも個体差があるようです。

イナゴとバッタの違いは英語でどう表現するか

英語では「イナゴ」と「バッタ」は明確に区別されており、「grasshopper」は一般的なバッタ類を、「locust」は相変異を起こし、集団で飛び回るトビバッタ類を指します。

日本語では「locust」を「イナゴ」と訳すことが多く、ここが混乱の原因となっています。たとえば、ニュースなどで「locust swarm(バッタの大群)」が「イナゴの大群」と翻訳されると、実際のイナゴ(例:コバネイナゴ)と誤解されてしまいます。

このように、言語的背景によっても「イナゴ」と「バッタ」の違いが不明確になる場合があるため、学術的な場面では正確な表現が求められます。

イナゴとバッタはどちらが害虫?

どちらも農作物に被害を与える可能性がありますが、スケールに差があります。イナゴは稲を食べるため、稲作農家にとっては局所的な害虫です。しかし、比較的被害の範囲は限定的で、適切な防除があれば十分対処可能です。

一方で、バッタの中には「飛蝗(ひこう)」と呼ばれる大群を成して移動し、広範囲に農作物を食い荒らす種類がいます。代表例がサバクトビバッタで、アフリカや中東、アジアで甚大な被害(蝗害)をもたらしてきました。

このように、「どちらが害虫か?」という問いに対しては、「どの種かによる」というのが正確な答えになります。

ツチイナゴ・トノサマバッタの違いもチェック

見た目が似ていることから混同されやすいのが「ツチイナゴ」と「トノサマバッタ」です。トノサマバッタは緑色または茶色の体色で、夏から秋にかけて活発に活動します。大きな翅と優れた跳躍力が特徴で、「チキチキ」と鳴きながら飛ぶ習性があります。

一方、ツチイナゴは体色が常に茶色で、目の下に涙のような模様があることが特徴です。また、越冬成虫である点も大きな違いで、秋から春まで観察される珍しいバッタです。

食性も異なり、ツチイナゴはマメ科やキク科の植物を好む傾向にあります。これらの違いを押さえておけば、観察時に正確に識別できるでしょう。

総括:イナゴとバッタの違いまとめ

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

項目イナゴバッタ
分類バッタ目イナゴ亜科、またはイナゴ属バッタ目バッタ亜科全般
喉の突起あり(のどちんこと呼ばれる突起)なし
生息環境湿地や水田など、湿った草地を好む草原や乾燥地など、比較的乾いた場所を好む
食性主にイネ科植物(稲・ススキなど)種類により異なり、マメ科・キク科なども食す
外見の違い細身で茶色が多い、翅が短いこともある種類によって異なり、緑や茶など体色に幅がある
食用の有無食用として佃煮などにされる一部を除いて基本的に食用とされない
群生行動の有無基本的に単独で行動群生相(蝗害)を引き起こす種も存在する