近年、奈良学園大学に対して「潰れるの?」「Fランなの?」といったネガティブな声がネット上で見受けられます。

実際に、過去にはキャンパスの統廃合や教員の大量リストラといった経営上のトラブルも報じられ、潰れるのではないのか?と大学の行方に不安を抱く受験生・保護者も少なくありません。

しかし、その一方で、就職実績や国家資格の合格率などを見ると「Fラン」と切り捨てるには惜しい側面もあります。


本記事では、奈良学園大学が本当に潰れるリスクがあるのか、また、なぜ“Fラン”と評されるのか、その実態をデータと事実に基づいて徹底検証していきます。

奈良学園大学は潰れる?定員割れのFランと言われる理由

奈良学園大学は、過去に大きな組織改革を行い、三郷キャンパスから登美ヶ丘キャンパスへの統合を実施しました。こうした動きは「大学の経営難によるものでは?」という疑念を招いています。

さらに、学力レベルや学生数の問題、そして一部ネット上での厳しい声も影響し、「Fラン」や「潰れる」といったネガティブなイメージが先行しています。本章では、そうした背景を5つの観点から詳しく分析します。

奈良学園大学は本当に潰れるのか?三郷キャンパス閉鎖の背景とは

奈良学園大学は2022年4月、登美ヶ丘キャンパスに全学部を統合し、三郷キャンパスを正式に閉鎖しました。この再編の目的は「教育環境の向上」とされていますが、実際には立地の不便さと施設維持コストの問題が大きかったと見られています。

以下に、両キャンパスの比較を示します。

項目三郷キャンパス登美ヶ丘キャンパス
所在地奈良県生駒郡三郷町奈良県奈良市中登美ヶ丘
アクセス近鉄生駒線「信貴山下駅」→バス近鉄けいはんな線「学研奈良登美ヶ丘駅」徒歩10分
周辺環境山間部、交通不便大阪・京都からのアクセス良好
設備の新しさ老朽化が進行2014年完成、最新教育設備

学生からは「通学に不便」との声が多く、受験生からも敬遠されがちでした。三郷キャンパス跡地は現在、地域活性化プロジェクト「FSS35キャンパス」として再利用が進められています。

統合の背景には、「教育の質の向上」(大学公式発表)だけでなく、施設維持コストの削減経営資源の集約といった戦略的理由があったことは間違いないでしょう。

過去の教員大量リストラと訴訟問題が示す運営の危機

奈良学園大学では、2017年に行われた学部再編に伴い、専任教員ら計8名が突如として解雇されました。このうち5名の元専任教員が起こした訴訟に対し、奈良地裁は2020年、「解雇は無効」と判断。大学側に総額1億2000万円超の損害賠償の支払いを命じました

参照:奈良学園大学、学部再編失敗し教員大量解雇

以下は、訴訟の概要を表で整理したものです。

項目内容
解雇時期2017年3月末
原告元専任教員5名+再雇用教員2名(1名は途中で訴訟離脱)
判決年月2020年7月
判決内容専任教員5名の解雇を無効、大学に約1億2000万円の支払い命令
地裁判断整理解雇の4要件(必要性・回避努力・人選合理性・手続き妥当性)を満たしていない

この件では、大学側の再編計画の不透明さ、教員への相談なき外部コンサル主導の改革、理事会の責任回避といった経営ガバナンスの欠如が指摘されました。特に、理事会が暴走し、現場の声を無視した再編を強行した点が大きな批判を集めました。

このような一連の問題は、奈良学園大学の経営体質の脆弱さとともに、「潰れるのではないか?」という不安を世間に抱かせる大きな要因となったのです。

偏差値35~40のFランク?奈良学園大学の学力レベルを分析

奈良学園大学の偏差値は、おおむね35.0〜40.0の範囲に収まっており、全国私立大学の中でも下位層に位置します。これは、難関大志望者や進学校出身者から見ると「Fランク」と分類されやすい水準です。ただし、偏差値は一概に学力のすべてを示すわけではなく、資格取得や専門性に重点を置く大学では、この数値だけで評価するのは不十分です。

以下は、2025年最新データに基づく学部・学科別の偏差値一覧です。

学部名学科名・専攻試験方式偏差値
人間教育学部人間教育学科2教科型 / 3教科型37.5
人間教育学部中等数学専修2教科型 / 3教科型40.0 / 37.5
人間教育学部中等音楽専修実技+2/3教科型35.0〜37.5
保健医療学部看護学科2教科型 / 3教科型40.0 / 37.5
保健医療学部理学療法学専攻2教科型 / 3教科型37.5
保健医療学部作業療法学専攻2教科型 / 3教科型37.5

特に看護学科や中等数学専修は比較的高めの水準を維持しており、教育・医療分野において一定の需要があることがうかがえます。ただし、一般的な入試難易度としては全国平均よりも明確に低く、誰でも入りやすい大学という認識を持たれやすいことは否定できません。

このため、偏差値の数値だけを見るとFランク扱いされるケースもありますが、就職実績や国家資格の取得支援体制を含めて大学の価値を判断する必要があるでしょう。

定員割れの実態は?学部別の学生数

奈良学園大学に対して「Fラン」「定員割れ=潰れる」といったイメージを抱く人も少なくありません。しかし、実際の就職率や入試倍率を見ると、そのイメージとは異なる現実が浮かび上がります。

■ 入試実績(2024年度)

学部名学科名入試方式実質倍率
人間教育学部人間教育学科一般選抜1.65倍
人間教育学部同上総合型選抜1.22倍
保健医療学部看護学科学校推薦型1.93倍
保健医療学部リハビリ学科共通テスト利用2.33倍

引用:スタディサプリ進路

全体として実質倍率は1倍以上を確保しており、明確な定員割れとは言い難い状況です。特に看護学科やリハビリ系の専攻では、受験者が定員を上回っていることが分かります。

このように、奈良学園大学は学力的にはFラン水準にあるものの、「定員割れで潰れる」と断定するには根拠が乏しいといえるでしょう。就職支援や医療・教育系の需要によって、安定した進学・就職実績を維持している点は見逃せません。

「Fラン超えのFラン」と揶揄される背景

奈良学園大学についてネット上では「Fラン中のFラン」「潰れる寸前」などの過激な書き込みも散見されます。5ちゃんねるやYahoo!知恵袋では、「畿央大学と比べて2ランク下」「奈良の私大最底辺」といった辛辣な評価もあります。

しかし、これらは一部の偏見や煽りによるものであり、全体像を正確に表しているとは言えません。SNS上では「設備がきれい」「先生の面倒見が良い」といったポジティブな口コミも存在します。

イメージだけで判断せず、実際のカリキュラムや就職支援体制を見ることが重要です。ネットの声には事実と憶測が混在しているため、見極める目を持つことが求められます。

奈良学園大学は潰れるFランは誤解:真実と将来性

「Fラン」や「定員割れ」といったネガティブな印象がある奈良学園大学ですが、その裏には教育内容の充実や就職支援、国家資格取得のサポート体制など、他大学に引けを取らない実力があります。

ここでは、「Fランでも潰れない」と言われる理由を、教育内容、実績、施設、地域との関係から掘り下げていきます。

看護・教育系に特化した学部構成と国家資格サポート体制

奈良学園大学は、教育・保健医療分野に特化した学部構成となっており、実践的なスキルと資格取得を重視した教育を行っています。学部ごとの特徴と資格対応は以下のとおりです。

学部名学科名特徴・対応資格
人間教育学部人間教育学科/中等数学専修/中等音楽専修小学校教諭一種免許、中学校・高校教員免許(数学・音楽)、教員採用試験対策「教師塾」制度あり
保健医療学部看護学科看護師・保健師・助産師の国家試験受験資格が得られる(助産師は奈良県唯一)
保健医療学部リハビリテーション学科(理学療法・作業療法)理学療法士・作業療法士国家試験受験資格を取得可能

こうした国家資格は、大学卒業後の就職に大きく直結します。特に看護や教育は人材不足が深刻であるため、卒業後に職を得やすい分野としても注目されています。

就職先は大手企業や医療機関も多数?最新の就職実績を紹介

「Fランでも潰れない」──その背景には、奈良学園大学の就職実績の堅実さがあります。2024年3月卒業生のデータをもとに見ていくと、大手企業や公的機関、地元の医療・金融機関など、安定した就職先が多いことが分かります。専門職に直結した学部構成のため、大学での学びがしっかりと進路に結びついているのが特徴です。

以下は、2024年3月卒の学部別主な就職先の一覧です。

■ 主な就職先(2024年3月卒)

学部名主な就職先(抜粋)
人間教育学部東海東京ファイナンシャルHD、西日本旅客鉄道(JR西日本)、九州旅客鉄道(JR九州)、サントリービバレッジソリューション、奈良県信用金庫、熊本銀行、ショウワコーポレーション、三井E&Sシステム技研、文堂、匠工房など
保健医療学部奈良県総合医療センター(20名)、近畿大学奈良病院(7名)、奈良県立医科大学附属病院(5名)、大阪医科薬科大学病院、宇治徳洲会病院、住友病院、学研都市病院、土庫病院(各3名)、大阪赤十字病院、平成記念病院(各2名)など

引用:パスナビ

特に保健医療学部の医療系国家資格取得者は高い就職率と就業率を維持しており、地域医療を支える人材として実績を残しています。人間教育学部もまた、JRグループや金融機関など安定企業への就職に成功しており、Fランのイメージとは裏腹に、就職先の質は高水準といえるでしょう。

学費・奨学金制度で支援も充実|Fランでも進学のハードルは低くない

私立大学への進学において、「学費が高くて通えない」と感じる受験生も少なくありません。しかし、奈良学園大学では奨学金制度や減免制度が整っており、家庭の経済状況に左右されず進学を目指すことができます。特に、成績優秀者や同窓生の家族への支援制度が充実している点は注目すべきポイントです。

以下に、2025年度の初年度納入金と主な奨学金制度を整理しました。

■ 初年度学費(2025年度)

学部名入学金授業料(年額)教育充実費(年額)年間合計備考
人間教育学部300,000円850,000円320,000円1,470,000円実習費・PC代別途
保健医療学部300,000円850,000円650,000円1,800,000円実習費・物品代等別途

■ 主な支援・奨学金制度

制度名内容
一般学生奨学金入学試験成績優秀者に対し、授業料・教育充実費の全額/半額、または入学金相当額を給付(最長4年間)
ファミリー進学者奨励金同学園出身者の家族に入学金相当額を給付
内部進学者奨励金奈良学園系列高校からの進学者に入学金相当額を給付
日本学生支援機構奨学金第1種(無利子)/第2種(有利子)に対応、最大月額12万円
高等教育の修学支援新制度世帯年収に応じて授業料・入学金の全額または一部免除+給付奨学金
看護師・保育士修学資金制度指定施設への勤務で返還免除あり(自治体・病院提供)

引用:奈良学園大学公式

このように、多様な奨学金と支援策が整っていることで、「Fラン=金銭的に妥協した進学先」といったイメージはもはや過去のものです。学力や家庭の事情にかかわらず、努力次第で進学のハードルは十分に乗り越えられる大学環境と言えるでしょう。

登美ヶ丘キャンパスの立地と施設レベルは?評判が良い理由とは

奈良学園大学の登美ヶ丘キャンパスは、2014年に開設された比較的新しい施設で、学修・研究環境の快適さが高く評価されています。2022年度には三郷キャンパスの人間教育学部も統合され、現在は全学部がこの登美ヶ丘キャンパスに集約されています。これにより、教育環境の改善だけでなく、学生間の交流やイベントの活性化にもつながっています。

以下に、キャンパスの主な特徴をまとめました。

■ 登美ヶ丘キャンパスの施設・環境

分類内容
主な施設看護学実習室(30床完備)、理学・作業療法実習室、ICT対応教室、演習室、教職支援センター、キャリアセンター、学生食堂「ダイニングルーム」など
立地近鉄けいはんな線「学研奈良登美ヶ丘駅」から徒歩約10分
周辺環境イオンモールや住宅街が近接し、生活利便性が高い
開設年2014年(施設は築10年以内)
統合効果学部間の交流促進、教育設備の一元化、維持費削減

新キャンパスは都市近郊に位置しながらも自然と調和した環境で、京都・大阪方面からのアクセスも比較的良好です。また、看護・医療系の実習施設が充実しており、専門教育に即した設備が揃っている点は特筆すべき強みです。

キャンパス移転により「山の上の田舎大学」という旧イメージを払拭し、今では「快適な新キャンパスで学べる大学」として、学生からの満足度も上昇傾向にあります。

将来的なM&Aや統合の可能性は?奈良県内の大学間の関係性

奈良学園大学が「潰れるかどうか」を予想するうえで、県内の大学との関係や統合リスクは無視できません。現在、奈良県内の私立大学は少なく、以下のような構成となっています。

大学名特徴・ランク統合の可能性
畿央大学教育・看護に特化/難易度上位同分野重複のため可能性あり
帝塚山大学総合大学/心理・法・経済専門分野が被らないためやや低め
奈良大学文系中心/歴史系が強い統合は慎重だが地域密着の方向性あり
天理大学宗教系・体育系中心統合より独自路線の傾向

奈良学園大学は畿央大学と分野が重なることから、M&Aや再編の際には「看護・教育分野の再統合」として話が進む可能性もあります。ただし現時点でそのような動きは公には確認されていません。

総括:奈良学園大学は潰れるFランなのかまとめ

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

  • 三郷キャンパスを閉鎖し、登美ヶ丘キャンパスに統合(2022年)
    • 教育環境の改善が目的とされるが、実際には立地や維持コストの問題が背景。
  • 2017年に教員の大量解雇が発生し、訴訟に発展
    • 奈良地裁が2020年に「解雇無効」と判断し、大学に1億2000万円超の賠償命令。
  • 偏差値は35〜40で「Fラン」とされがち
    • ただし、看護・教育分野に特化しており、資格取得と就職には強みあり。
  • 入試倍率は1.0倍以上を維持し、明確な定員割れではない
    • 看護学科やリハビリ系は特に人気で倍率が高い。
  • ネット上では「Fラン超え」との声もあるが、実際はポジティブな口コミも
    • 設備や先生のサポート体制に好評あり。
  • 看護師・教員など国家資格に対応した学部構成
    • 資格取得後の就職率も高く、医療・教育現場での実績もある。
  • 就職先はJRや地元病院・金融機関など多岐にわたる
    • 卒業生の進路は安定しており、Fランと呼ぶには不適切な面も。
  • 学費は高めだが、奨学金制度や減免制度が充実
    • 成績優秀者や家庭の事情に応じて柔軟に進学支援あり。
  • 登美ヶ丘キャンパスはアクセス・施設共に高評価
    • 新設キャンパスで教育環境の質が向上、学生満足度も高い。
  • 将来的なM&Aや大学再編の可能性もゼロではない
    • 畿央大学などと分野が重複しているため、再編の候補になり得る。