みなさん、平安時代と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?
「十二単を着たお姫様が優雅に和歌を詠んでいる」とか「貴族が蹴鞠をして遊んでいる」といった光景を想像するかもしれませんね。でも、平安時代に生きていたのは貴族だけではありません。
実は、大多数を占める庶民の暮らしは、今の私たちが想像するよりずっと厳しいものでした。
この記事では、平安時代の庶民と貴族の生活の違いをわかりやすくまとめました。食事や住居、仕事、娯楽まで、どんな違いがあったのかを詳しく解説します!
平安時代の暮らしを比較!庶民と貴族の生活の違い

平安時代(794年〜1185年)は、およそ400年もの間続いた時代です。都は現在の京都にある「平安京」で、貴族たちは宮中で政治を行い、華やかな文化を生み出しました。しかし、その一方で庶民たちは貴族の屋敷で働いたり、農業をしながら厳しい生活を送っていました。
では、具体的にどんな違いがあったのか見ていきましょう!
庶民と貴族の暮らしの違いを一覧表で解説!
まずは、庶民と貴族の暮らしの違いを一覧表でまとめました。
| 項目 | 貴族 | 庶民 |
|---|---|---|
| 住居 | 寝殿造の広い屋敷 | 竪穴式住居や長屋 |
| 食事 | 白米と多くの副菜 | 粟・稗・雑穀中心の粗食 |
| 衣服 | 絹の十二単・束帯 | 麻や木綿の簡素な服 |
| 娯楽 | 和歌・蹴鞠・音楽 | 祭り・市場の見世物 |
| 仕事 | 朝廷での政務(午前中のみ) | 農業・労働・貴族の屋敷での仕事 |
| 教育 | 漢詩や和歌を学ぶ | 読み書きは一部の僧侶のみ |
| 衛生環境 | 香を焚き込める・樋箱のトイレ | 川で水浴び・路上で用を足す |
| 医療 | 祈祷やまじないが中心 | 薬草や民間療法を利用 |
| 葬儀 | 火葬が主流 | 土葬が一般的 |
このように、庶民と貴族では生活環境がまるで違いました。特に「食事」「住居」「衣服」など、日常生活に関わる部分での格差がとても大きかったのです。
平安時代の庶民の家と貴族の屋敷はまるで別世界
庶民と貴族の住んでいた家は、まったく異なりました。
貴族の住まい:豪華な「寝殿造」
貴族は「寝殿造(しんでんづくり)」と呼ばれる広い屋敷に住んでいました。

屋敷には大きな池があり、池に張り出した「釣殿(つりどの)」で月見や釣りを楽しんでいました。また、屋敷の中には「御簾(みす)」というすだれがあり、部屋の仕切りとして使われていました。
庶民の住まい:質素な竪穴式住居や長屋
一方、庶民は小さな家に住んでいました。地方では、まだ縄文時代から続く「竪穴式住居」が使われることもありました。都では「長屋」と呼ばれる細長い家に住み、多くの人々が一緒に暮らしていました。屋根は藁や木の皮で作られ、雨風をしのぐのがやっとでした。
食生活の違い!庶民は雑穀・貴族は豪華な膳
食べ物にも大きな違いがありました。
貴族の食事:白米と贅沢な副食
貴族は白米を食べていましたが、実は現代のようなふんわりとしたご飯ではなく、「強飯(こわいい)」と呼ばれる固いご飯でした。副食には魚や鳥、野菜や海藻、栗や果物などが並びました。宴会のときには、さらに豪華な料理が振る舞われ、酒もよく飲まれていました。
庶民の食事:雑穀中心の粗食
庶民の主食は「粟(あわ)」や「稗(ひえ)」といった雑穀でした。お米は貴族に納める税の一部だったため、庶民が食べられることはほとんどありませんでした。副食は大根や芋類が中心で、魚もめったに食べられませんでした。
甘いものは貴族の特権
平安時代には砂糖がなく、甘みは「甘葛(あまづら)」や「唐菓子(からくだもの)」でつけていました。貴族はこれらの甘味を楽しめましたが、庶民には贅沢品でした。
平安時代の庶民と貴族の衣服の違い
服装の違いは以下の通りです。
貴族の衣服:格式高い「十二単」や「束帯」
貴族の男性は「束帯(そくたい)」という正式な服を着ており、位の高い人ほど色が決まっていました。女性は「十二単(じゅうにひとえ)」を着ており、何枚も重ねることで美しさを表していました。

また、白粉(おしろい)を顔に塗り、お歯黒をするのが美しいとされていました。
庶民の衣服:麻や木綿のシンプルな服
庶民の衣服はとても質素で、麻や木綿で作られたシンプルなものでした。色は染める余裕がなく、白や茶色がほとんどでした。貴族のような化粧をすることもなく、日焼けしていることが普通でした。
平安時代の庶民と貴族の仕事の違い
仕事の面でも、貴族と庶民では大きな違いがありました。
貴族の仕事:午前中だけの政務
貴族の仕事は「朝廷での政務」が中心でした。平安時代の政治は、主に藤原氏のような有力貴族が担っており、天皇に仕えながら国の政治を動かしていました。しかし、貴族の仕事は午前中で終わることが多く、午後は和歌を詠んだり蹴鞠(けまり)を楽しんだりして過ごすことが一般的でした。
庶民の仕事:農業や労働で日没まで働く
一方、庶民の仕事は農業が中心でした。庶民の多くは田んぼや畑で働き、収穫した作物の一部を税として貴族に納めていました。また、都に住む庶民は、貴族の屋敷で働く使用人や商人として生計を立てることもありました。庶民の仕事は朝から日没まで続くため、貴族に比べるとはるかに過酷なものでした。
平安時代の暮らし!庶民と貴族の習慣・生活文化の違い

平安時代の人々は、現代とは異なる独特な文化や生活習慣を持っていました。ここからは、貴族と庶民の「娯楽」「衛生環境」「教育」「医療」「死生観」について詳しく見ていきましょう。
平安時代の娯楽!貴族の遊びと庶民の楽しみ
平安時代の遊びの違いは以下の通りです。
貴族の娯楽:優雅な和歌や蹴鞠
貴族の娯楽は、とても優雅なものでした。和歌を詠み合う「歌合(うたあわせ)」や、蹴鞠、貝合わせ、双六(すごろく)などが人気でした。

また、季節ごとに花見や月見の宴が開かれ、美しい自然を楽しむことも貴族のたしなみとされていました。
庶民の娯楽:祭りや市場での賑わい
庶民の娯楽は、貴族のものとは大きく異なり、庶民が楽しめる機会は限られていました。庶民が最も楽しみにしていたのは「祭り」です。都では神社のお祭りが頻繁に行われ、踊りや音楽、屋台が並び、人々はにぎやかに過ごしました。また、寺社の前では「猿楽(さるがく)」と呼ばれる大道芸が披露され、多くの庶民が見物に集まりました。
平安時代の衛生環境!お風呂とトイレの違い
平安時代の衛生環境の違いは以下の通りです。
貴族の衛生環境:香を焚き込めて清潔を保つ
貴族は、現在のようなお風呂には入らず、「蒸し風呂(むしぶろ)」を利用していました。体の汚れを湯気で落とす方法で、現代のサウナに近いものです。また、毎日入浴する習慣はなく、身を清めるのは五日に一度程度でした。そのため、貴族たちは「香」を衣服に焚き込めて、体臭を防いでいました。
庶民の衛生環境:川で水浴び・路上の汚れも日常
庶民は、お風呂を持つ余裕がなかったため、川で体を洗ったり、井戸水で顔を拭いたりしていました。また、トイレの設備も整っておらず、屋外で用を足すことが一般的でした。貴族の屋敷では「樋箱(ひばこ)」という木の箱を使うトイレがありましたが、汚物はそのまま川に流されていました。そのため、都の水はあまり衛生的ではなく、感染症が広がる原因にもなっていました。
平安時代の教育!貴族と庶民の学びの違い
平安時代の学びの違いは以下の通りです。
貴族の教育:漢詩や和歌を学ぶ
貴族の男子は、幼い頃から「漢詩」や「和歌」などの文芸を学ぶのが基本でした。また、官職に就くためには、中国の「儒教」の知識が必要とされたため、政治や歴史についても学びました。一方、貴族の女子は主に和歌や手紙の書き方を学び、宮中での社交の場で生かしました。
庶民の教育:読み書きはごく一部のみ
庶民のほとんどは、学校に通うことができませんでした。教育を受けられたのは、寺院で修行する僧侶や、商人の子供など一部の人々だけでした。庶民の間では「読み書きができる人」はとても珍しく、文字を知っていることは特別な才能とみなされました。
平安時代の医療!病気の治療法は?
平安時代の医療の違いは以下の通りです。
貴族の医療:祈祷とまじないが中心
平安時代の貴族は、病気の原因を「悪霊の仕業」と考えていました。そのため、病気になると僧侶に祈祷を頼んだり、おまじないをしたりするのが一般的でした。また、「加持祈祷(かじきとう)」という儀式が行われ、病気平癒を願いました。
庶民の医療:薬草や民間療法が中心
庶民も病気になれば祈祷を行いましたが、それだけでは治らないため、薬草を煎じて飲んだり、自然の力を借りた治療が行われていました。庶民の間では「ニンニク」や「ショウガ」が薬として使われることもありました。
平安時代の死生観!貴族と庶民の葬儀の違い
平安時代の死生観の違いは以下の通りです。
貴族の葬儀:火葬が主流
貴族の葬儀では、「火葬(かそう)」が一般的でした。遺体を焼いた後、遺骨を壺に納め、寺院に納められました。また、貴族の死を悼む際には和歌が詠まれることもありました。
庶民の葬儀:土葬が一般的
一方、庶民の葬儀は「土葬(どそう)」が主流でした。遺体はそのまま土に埋められ、簡単な供養が行われました。また、庶民の墓地は整備されていなかったため、死者の埋葬はあまり厳格なルールがなく、場所によっては放置されることもあったといいます。
総括:平安時代の暮らし!庶民と貴族の違いまとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
| 項目 | 貴族 | 庶民 |
|---|---|---|
| 住居 | 寝殿造の広い屋敷 | 竪穴式住居や長屋 |
| 食事 | 白米と多くの副菜 | 粟・稗・雑穀中心の粗食 |
| 衣服 | 絹の十二単・束帯 | 麻や木綿の簡素な服 |
| 娯楽 | 和歌・蹴鞠・音楽 | 祭り・市場の見世物 |
| 仕事 | 朝廷での政務(午前中のみ) | 農業・労働・貴族の屋敷での仕事 |
| 教育 | 漢詩や和歌を学ぶ | 読み書きは一部の僧侶のみ |
| 衛生環境 | 香を焚き込める・樋箱のトイレ | 川で水浴び・路上で用を足す |
| 医療 | 祈祷やまじないが中心 | 薬草や民間療法を利用 |
| 葬儀 | 火葬が主流 | 土葬が一般的 |
