日本の昔の家のつくりって、どんなものだったか知っていますか? 今の家は壁でしっかり仕切られていますが、昔の貴族の家は「ほとんど壁がない」つくりだったんです。

それが「寝殿造(しんでんづくり)」と呼ばれる建築様式です。

「なんで壁がないの?」「どうやって部屋を分けていたの?」と思うかもしれませんね。実は、平安時代の貴族の生活スタイルが関係しているのです。

また、寝殿造の後に生まれた「書院造(しょいんづくり)」との違いも気になるところ。この記事では、寝殿造の特徴を分かりやすく解説しながら、書院造との違いについても詳しく説明します!

寝殿造とは?特徴をわかりやすく解説

平安時代の貴族たちが住んでいた豪華な屋敷、それが寝殿造です。この建築様式は、風通しがよく、広々とした空間が特徴ですが、現代の住宅とは大きく違う点がたくさんあります。

ここでは、寝殿造の基本的な特徴について詳しく見ていきましょう。

寝殿造とは?平安時代に発展した貴族の邸宅様式

寝殿造は、平安時代(794年~1185年)に生まれた建築様式です。当時の貴族は、とても優雅な生活をしていました。その暮らしに合わせて、寝殿造の家も「風雅さ」を大切にしたつくりになっていたのです。

寝殿造の家は、とても大きな敷地の中にいくつかの建物が点在し、それらを「渡殿(わたりどの)」という廊下でつないでいました。家の中心にあるのが「寝殿(しんでん)」と呼ばれる建物で、ここが屋敷のメインの空間です。寝殿の周りには「対の屋(たいのや)」という建物があり、家族が住んでいました。

また、寝殿造の庭には大きな池があり、そこに「釣殿(つりどの)」や「泉殿(いずみどの)」といった建物がありました。ここで貴族たちは、音楽を楽しんだり、お酒を飲んだりしていたのです。

寝殿造の間取りと建築構造の特徴

寝殿造の間取りの一番の特徴は「開放的なつくり」です。現代の家には部屋ごとに壁がありますが、寝殿造の家には、ほとんど壁がありませんでした。では、どうやって空間を分けていたのでしょうか?

答えは、「御簾(みす)」や「屏風(びょうぶ)」、そして「几帳(きちょう)」です。これらの道具を使って、必要なときに空間を仕切ることができるようになっていました。

また、家のつくり自体も特徴的です。寝殿造の家は、敷地の中央に「寝殿」があり、東西や北側には「対の屋」が配置されています。それぞれの建物は、廊下や「透渡殿(すきわたどの)」という半開放的な通路でつながっていました。

さらに、屋敷の南側には「庭園」や「池」がありました。貴族たちはここで月を眺めたり、詩を詠んだりすることを楽しんでいました。

寝殿造の屋根や床材などの特徴

寝殿造の屋根には「檜皮葺(ひわだぶき)」や「杮葺(こけらぶき)」という方法が使われていました。これは、薄く削った木や檜の皮を何層にも重ねることで、軽くて丈夫な屋根を作る技術です。

床は基本的に「板張り」でした。畳は今のように敷き詰めるのではなく、必要な場所に部分的に使われていました。たとえば、貴族が座る場所だけに畳を敷く、というような使い方をしていたのです。

また、部屋と部屋を仕切るために「蔀戸(しとみど)」や「妻戸(つまど)」といった特別な扉も使われていました。これらは昼間は開け放し、夜になると閉めることで、開放感とプライバシーを両立させる役割を果たしていました。

寝殿造の代表的な建築例と現存する遺構

寝殿造の代表的な建物として有名なのが「東三条殿(ひがしさんじょうどの)」です。

この屋敷は、藤原氏が所有していたもので、平安時代の寝殿造の典型とされています。残念ながら現存していませんが、当時の記録や絵巻物から、その構造を知ることができます。

また、現在も見ることができる建物の中で、寝殿造の特徴をよく残しているのが「京都御所の紫宸殿(ししんでん)」です。この建物は天皇の儀式の場として使われており、寝殿造の雰囲気を今に伝えています。

さらに、「平等院鳳凰堂(びょうどういんほうおうどう)」も、寝殿造の影響を受けた建築物です。この建物は、平安時代の貴族が理想とした「極楽浄土の世界」を表現しており、その美しい造りは今も多くの人を魅了しています。

寝殿造とは何か:書院造の違いを比較

寝殿造は平安時代の貴族の暮らしに適した建築様式でしたが、時代が進むにつれて、その特徴が少しずつ変化し、新しい建築様式が生まれました。それが「書院造(しょいんづくり)」です。

では、寝殿造と書院造は具体的にどのように違うのでしょうか? ここからは、それぞれの建築様式の違いについて詳しく見ていきましょう。

書院造とは?武士の時代に発展した新しい建築様式

書院造は、室町時代(1336年~1573年)に誕生し、江戸時代(1603年~1868年)にかけて発展した建築様式です。寝殿造が貴族のための優雅な住まいだったのに対し、書院造は武士が暮らしやすいように工夫されたものでした。

書院造の最大の特徴は、「身分の序列を重視した間取り」や「実用的な設備の充実」です。たとえば、寝殿造では開放的だった空間も、書院造では壁やふすま、障子で仕切られ、プライバシーが確保されるようになりました。

また、書院造では「床の間(とこのま)」「違い棚(ちがいだな)」「付書院(つけしょいん)」などの新しい建築要素が登場しました。これらは、格式を重視する武士の生活にぴったり合っていたのです。

寝殿造と書院造の違い①:間取りと部屋の使い方

寝殿造と書院造の一番大きな違いは、間取りの考え方です。

  • 寝殿造:建物が敷地内に点在し、それぞれを廊下でつなぐスタイル
  • 書院造:ひとつの建物の中に複数の部屋があり、ふすまや障子で仕切られている

寝殿造では、一部屋がとても広く、複数の建物をつなげて生活していました。一方、書院造では、一つの建物の中にいくつもの部屋があり、用途に応じて使い分けられるようになっています。

また、寝殿造では「御簾(みす)」や「屏風(びょうぶ)」で空間を仕切ることが一般的でしたが、書院造では障子やふすまを使ってしっかりと区切るようになりました。この違いによって、よりプライベートな空間を持つことができるようになったのです。

寝殿造と書院造の違い②:床と壁のつくり

寝殿造と書院造では、床や壁のつくりにも大きな違いがあります。

  • 寝殿造:基本的に「板張り」で、畳は部分的に使用
  • 書院造:部屋全体に「畳」を敷き詰めた「座敷」が誕生

寝殿造の床は、板張りが基本でした。畳は必要な場所にだけ敷くスタイルで、現代のように部屋全体に敷き詰めることはありませんでした。

一方、書院造では、部屋の中に畳を敷き詰めるようになり、現在の「和室」に近い形ができあがりました。畳が広がったことで、室内はより快適になり、座敷の文化が定着しました。

また、寝殿造では壁が少なく、風通しを重視した構造でしたが、書院造では壁をしっかり作り、室内を細かく区切るようになりました。これにより、防寒性や防音性が向上し、より暮らしやすい環境になったのです。

寝殿造と書院造の違い③ 庭と外の空間

寝殿造と書院造のもう一つの違いは、庭のつくりです。

  • 寝殿造:庭には大きな池があり、貴族が舟遊びを楽しむ
  • 書院造:池の代わりに「枯山水(かれさんすい)」という庭園が主流に

寝殿造の庭には、池や中島があり、貴族たちは舟を浮かべて音楽を楽しんだり、お酒を飲んだりしていました。まさに「貴族の遊び場」だったのです。

一方、書院造の庭では、「枯山水」と呼ばれる庭園が作られるようになりました。枯山水とは、水を使わずに、石や砂で川や滝を表現する庭のことです。

これは、禅の考え方に影響を受けたもので、武士たちはここで静かに庭を眺めながら精神を落ち着けることを大切にしていました。

現代に残る寝殿造と書院造の建築物

寝殿造の建築物は、ほとんど現存していませんが、その特徴を残している建物はいくつかあります。

  • 京都御所の紫宸殿(ししんでん):寝殿造の特徴を残した代表的な建築
  • 平等院鳳凰堂:寝殿造の影響を受けた仏堂建築

一方、書院造の代表的な建築物は、今でも多く残っています。

  • 銀閣寺(慈照寺東求堂):書院造の原型となった建物
  • 二条城二の丸御殿:江戸時代の書院造を代表する建築
  • 西本願寺白書院:武家屋敷の格式を表す建築

このように、書院造の建物は今でも日本の文化財として大切に残されており、和風建築の原点となっています。

寝殿造と書院造の違い一覧表

寝殿造と書院造の違いを簡単にまとめましょう。

項目寝殿造書院造
時代平安時代室町時代~江戸時代
住んでいた人貴族武士
間取り建物が点在し廊下でつなぐひとつの建物の中に複数の部屋
板張り、畳は部分的畳を敷き詰めた座敷
仕切り屏風や御簾で仕切る壁、障子、ふすまで区切る
池と舟遊び枯山水で静かに鑑賞

このように、寝殿造と書院造は、それぞれの時代に合った暮らし方に合わせて発展しました。寝殿造は貴族の優雅な生活を、書院造は武士の実用的な生活を支えた建築だったのです。

歴史の授業やテストで役立つので、ぜひ覚えておいてくださいね!

総括:寝殿造とは何か分かりやすく解説まとめ

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

  • 寝殿造とは?
    • 平安時代に発展した貴族の邸宅様式で、開放的な間取りが特徴。
    • 建物が広い敷地内に点在し、渡殿(わたりどの)でつながっている。
  • 寝殿造の特徴
    • 開放的なつくり:壁がほとんどなく、御簾(みす)や屏風(びょうぶ)で空間を仕切る。
    • 広々とした庭園:池や釣殿(つりどの)があり、舟遊びや詩歌を楽しむ場として使われた。
    • 床材と屋根:床は板張りが基本で、必要な部分にのみ畳を敷く。屋根は檜皮葺(ひわだぶき)や杮葺(こけらぶき)。
    • 装飾と調度品:几帳(きちょう)や帳台(ちょうだい)を用いて華やかに飾られていた。
  • 寝殿造と書院造の違い
    • 寝殿造:平安貴族の邸宅で、開放的な空間と自然との調和を重視。
    • 書院造:室町時代以降の武家の住宅様式で、壁や障子を設けて身分序列や実用性を重視。
    • 間取り:寝殿造は広い部屋を建物ごとに配置、書院造は一つの建物内に複数の部屋を設ける。
    • :寝殿造は板張りが基本、書院造は畳敷きの座敷が主流。
    • :寝殿造は池や舟遊びを楽しむ庭、書院造は枯山水を取り入れた静かな庭園。
  • 寝殿造の現存する建築例
    • 京都御所・紫宸殿:寝殿造の特徴を残す建築。
    • 平等院鳳凰堂:寝殿造の影響を受けた仏堂建築。
  • 寝殿造の重要ポイント
    • 平安時代の貴族の暮らしと密接に関係し、優雅で風流な文化を反映した建築様式。
    • 書院造への移行により、実用性や身分序列を重視した建築へと変化した。
    • 歴史の授業やテストで頻出する建築様式なので、特徴や違いをしっかり押さえておくことが大切。