宿題は必要か?不要か?

このテーマは教育業界において度々議論されるテーマで、大変香ばしいテーマでもあります。笑

個人的には、宿題のメリットよりもデメリットの方が勝ると考えています。よって、宿題は必要ないと思っている派です。

しかし、大半の保護者さんは「宿題は必要(と言うか宿題を出して欲しい)」と思っている人ことも塾経営を通して重々理解しています。

そこで本記事では、宿題の全デメリットを学習塾経営者目線でお伝えします。その上で、宿題が必要ないと考える合理的理由を解説します。

【必要か?】宿題の全デメリット:必要ない理由

まず最初に、世間では必要と思われがちな宿題のデメリットから見ていきましょう。

宿題は、メリットもありますが、デメリットが大きいのも事実です。宿題について考える時は、絶対にデメリットを深く考えて欲しいと思います。

自分で考えて学習内容を決められない子になる

宿題の最大のデメリットはこれ。

・自分で考えて学習内容を決められない子になること

まず、勉強には理想の形があります。(将来的に難関大に行けるような子は大体このパターン的な。)

それは、今の自分の課題(点数を上げるために必要なこと)を自分で考え、それをどう克服するかを考え、その結果今やるべきことが何かを考える力です。

例えば、「数学の連立方程式の〇〇の文章題だけ毎回点数が取れないから、今日はそこだけ30問集中してやろうかな?」みたいなこと自分で考え、それを実行に移すのが勉強のあるべき姿です。

その中では、優先順位を見抜く力も当然の如く養っていかないといけません。

例えば、「連立方程式が弱いけど、数学はすぐに成果が出るわけじゃない。それなら、毎日5問とかを1週間コツコツ分けてやろう。1日の中で余った時間は、確実に効果が出る理社に回そう」とか。

本当の意味で頭が良くてテストの点数が高い人は、決まってこう言う思考パターンで動いています。

このタイプは、大人になっても仕事ができる可能性が高い。高学歴の方が仕事ができる人が多いのは当たり前のことです。

しかし、宿題はこのような思考力を養う機会を奪います。

与えられたことをこなす事に慣れたら、人間は絶対に思考しなくなります。それが、長期的にどれだけマイナスなことか考えて欲しいです。

大半の人は、学問を勉強している時間よりも、社会に出て仕事している時間の方が長いはずです。その際に求められるのは指示待ち人間じゃないはずです。

宿題ではいずれ点数が上がらなくなる

正直、大量の課題攻めをすれば、それをこなす子の場合は大なり小なり点数は上がってくると思います。

答えの決まっている勉強なんて、答えのない人生に比べれば1億倍しょぼい競技なのでね…

ただ、そんな勉強ですら、課題攻め(宿題攻め)で伸ばせる点数には必ず限界が来ます。そしてそれは、学年が上がるにつれ、より顕著になります。

もちろんこれは、宿題の問題に関わらず、そもそも論の地頭の良さなども大きく関係します。と言うより、学業は遺伝要因の影響が大きいので、そう言う意味では遺伝要因の方が本来議論すべきテーマ。

しかしそれは横に置いといても、宿題で伸ばせる点数には明らかに限界があると言えます。理由は最初にあげたものと同じで、「自分の頭で考えて行動できていない(仮説思考がないから)」です。

そもそも、宿題なんてどこまで行っても「画一的・定量的」でしかありません。個別指導で個人個人カスタマイズした宿題でもそうです。

いかに塾とは言え、その子の頭の中を完全に理解し、その時その時でベストな宿題をベストな時期に持ってくるみたいな神技はできない。だから、「今の課題はこれかな?」って塾が仮説を立て、その仮説に従って宿題を出しているだけです。

しかし、他人の頭の中ですから、その仮説の精度はそこまで高くない。AI使おうが難しいです。

結局、今の自分に何が必要なのかは、自分で考えて動かないとどこかで行き詰まるものです。

仮に塾が設定した課題があるとしても、課題をこなす中で別の課題が見えてくることってありませんか?

その時に、自分の頭で行動している人じゃないと、そもそも別の課題に気づかない。気付いたとしても、宿題をこなす事に意識が奪われ、軌道修正することができない。

そもそもプランAで最初から上手くいくことなんて少ないのが人間。その時、問題意識を持って、どこかでプランB、プランCに移行し、成功までの最短ルートを歩めるかが成功の鍵です。

与えられた宿題では、そう言うプロセスはない。

だって自分の頭で考えてやってることじゃないから。

そもそも目標達成の最短ルートではない宿題が多すぎ

宿題にもよりますが、宿題そのものが、本人が解決(達成)したい目的のための手段として不適切なことがまあ多い…

例えば、数学100点で社会50点の生徒に、数学の計算練習の宿題が出ているみたいなケースはめちゃくちゃありますからね。

いや、どう考えてもやるべきは社会でしょ。笑

合理的に考えれば、計算プリントは燃やして、社会の参考書読むなりなんなりした方が1000倍有意義な時間です。

でも、宿題にされちゃうと、それをやらないわけにはいけないと洗脳されてしまう…

こう言うのは、小中学校でも起こっていますが、一番酷いのは高校です。結局、高校で勉強ができなくなると言うのは、ここにも1つ理由があります。

あまり大きな声では言えませんが、昔自分は高校の宿題がカスすぎて、全部答えを写して提出したことが何回もあります。本当は写す時間すら無駄だと思って怒りの感情MAXでしたが、最低限の社会性と良心でそこまではしました。笑

でも、学校の宿題が自分が今優先的に解決しなければならないことと乖離しすぎていました。このまま学校の宿題をやっても、自分が到達したい場所に行く事にプラスにならないと感じました。

正直、高校はこう言う発想の人の方が、難関大に進学している人多かったです。

結局賢い人は、「今自分がやっていることが、将来の何に繋がっているのか?」を考えてやっているんですよね。だから、将来に繋がらないと思うことを毛嫌いしちゃう傾向にある。

一方で指示待ち人間タイプは、そんな意識などない。

言われたからやってるだけで、今のその宿題が何に繋がるのかを理解していない。だから学力も低い。考えていない人間が学力高いわけないでしょって話です。

嘘つきな子供を量産するリスクを常に孕む

宿題の問題点は、宿題を与えた後の行動が、子供の人格形成にマイナスになりかねないという点。

そもそも、宿題を出せば、やる子・やらない子が当然のごとく現れますね。

やらない子の中には、

・答えを写すだけの子
・やらない言い訳を並べる子
・やったと嘘をつく子(やったけど持ってくるの忘れた系)


などなど、色んなタイプが現れます。

ただ、こういうところで言い訳癖や虚言癖がついてしまうリスクは大きい。

いやもちろん、そういう子は最初からそういう子だったというケースもたくさんあると思います。性格とかは遺伝子で概ね決まっているのでね。

だけど、教育(宿題)が火に油を注ぐリスクがあるのが問題点とも言えるわけです。

勉強のテクニカル面なんて、本人がやる気になればいつでも教えられるし、点数自体を上げることはそんなに難しくない。

でも、嘘つく・誤魔化す・言い訳する系の子供を改善するのは、ほぼほぼ無理です。少なくとも、今の叱らない教育なんかでは絶対に無理。

宿題をすること(本来は手段)が目的化する

宿題というのは、目的達成のための手段にすぎません。

しかし、ほとんどの生徒にとってそれ自体が目的になっているケースが大半でしょう。このあたりの認知の歪みも本来は大問題です。

学力を伸ばすために必要な演習なのに、演習(宿題)そのものを目的にしてどうするの?って話。

こういう思考パターンになると、将来的にただの努力バカになりかねない。

目標達成のための手段であるはずの努力が、いつの間にか目的にすり替わる。そして、結果が出ていなくても、努力している自分を褒めて欲しいと言い始めてしまう…

子供でもこのタイプは痛いのに、大人になってこんな感じだと、さすがに不味すぎませんか?って話。

宿題のデメリットを踏まえて:必要かどうかの判断基準&対処法

宿題のデメリットを踏まえた上でも、宿題必要だと思う人も多いでしょう。

ただ、この論点は「場合分け」と「親のマインド」の2点が非常に重要なテーマです。

そこでまずは、子供のレベル(※学力だけでなく考え方も含め)に応じて、宿題のメリットデメリットどっちが大きいのか、私見をお伝えします。

優秀層は宿題で縛るべきではない:才能を潰している

まず最初に、優秀層について。

ここで言う優秀層の定義は、一旦は学力的な優秀層だと受け取ってもらって構いません。

優秀層に関しては、宿題のメリットよりもデメリットの方が大きいです。

1番の理由は、「自分の頭で考えて行動する力が奪われるから」です。そしてそれは、大学受験で完全敗北して後悔しないと気づけません。

正直、学業のせいのがある子は、小中は特に宿題攻めでも点数が上がります。そのまま、偏差値の高い高校に進学もできてしましまいます。

ただ、高校に行けば、管理型学習をされていた子の多くが駆逐されます。結局、自分で考えて行動できない人は、高校以上の高度な学問には何もかもついていけません。

そして、「何をやっていいか分からない」と言い始めます。問題解決能力が身につかないまま高校生に上がった人の末路です。

そう言う意味では、保護者さんは思い切って子供に任せて欲しいです。子供を信じて、子供の思うままにやらせる。

少なくとも、学力的に基礎学力が高い子を前提にしているわけですから、低学力層を放置プレイするのとは意味が違います。十分に素質がある子供を放置するわけなので、期待値は低くないです。

しかしそれでも不安な気持ちになって、「宿題がたくさんある塾の方が安心で…」と感情論的に言う人が多いことも知っています。

その場合は、デメリットを十分理解した上で、あなたが信じる道を進んでください。少なくとも、この記事を読んでいる以上はデメリットは分かっているはずです。後悔のないように行動してください。警告はしました。

親の仕事はあなたが今安心することですか?それとも子供の可能性を信じて不安と戦うことですか?

子供の才能を潰すのは、大抵は身近にいる人間。子供を想う気持ちが、子供を滅ぼすこともある。

勉強ができないタイプの場合:受け入れが大事

「勉強ができないタイプは、宿題でガチガチに管理してもらおう!その方が今よりはマシです!」

なんて言うと思いましたか?

言いません。

勉強が苦手なタイプであろうが、宿題によって縛りプレイをすることには原則反対です。

理由は全く同じで、「自分の頭で考えて行動する」と言う最も大事な能力が育たないからです。あと、誤魔化す・嘘つくの予行演習になるリスクがこの層には大きすぎるからです。

そうは言っても、高校受験もあるので…と言う意見が出てくるのも分かります。

その場合は、色々と受け入れた上で、宿題でガチガチに縛る教育を選択してください。

そもそも、宿題で縛らなければ何ともならないと親が感じている時点で、勉強に対する期待値が高い子供ではありません。

勉強に関して言えば、一軍の生徒は自分の頭で考え、今自分に必要なことを自主的にやっています。それができる子だから優秀で、トップに君臨しているのです。

でも、その素質がないから宿題で縛ろうと思うわけであれば、期待値を間違えないでください。

痛いのは、「宿題をたくさん出して、上位層にしてください!」的な矛盾しかないニーズです。何度も言ってますが、上位層は自分の頭で考え、目的意識持って行動できる人間の集まりです。宿題で管理された指示待ち人間の来る場所じゃない。

小中学校だとそれでもそう言う人間が上位にいることはあるんだけど、高校だと全く無理になりますからね。社会人の世界でもそうでしょう。

宿題で縛る道を選ぶなら、学業に対する期待は程々にしてください。その時点で、なんか微妙だからです。

総括:宿題の全デメリットまとめ!必要ない理由

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

宿題のデメリット

  1. 自分で学習内容を決める力が育たない
    • 必要な課題を自分で見極め、優先順位をつける力が養えない。
    • 指示待ち人間になり、大人になってからの応用力が欠如。
  2. 点数が上がる限界がある
    • 画一的な宿題では学力が一定のレベルで頭打ちになる。
    • 本人の頭で考えないため、応用力や問題解決能力が育たない。
  3. 目的と手段が逆転する
    • 宿題をこなすこと自体が目的化し、本来の目標達成につながらない。
    • 努力することだけを自己評価し、結果につながらない努力に陥りやすい。
  4. 誤魔化しや嘘を助長するリスク
    • 宿題をしない言い訳や嘘をつく習慣がつく危険性。
    • 人格形成にマイナスの影響を与える可能性がある。
  5. 目標達成の最短ルートではない
    • 個別の課題に合わない宿題が出される場合が多い。
    • 必要のない分野の宿題に時間を取られることで非効率になる。

宿題が必要かどうかの判断基準

  1. 優秀層の場合
    • 宿題は必要ない。理由は、宿題が才能や自発性を潰すリスクがあるため。
    • 自分の頭で考えて行動する力を鍛える環境を優先すべき。
  2. 学力が低い場合
    • 宿題で管理しても本質的な能力向上にはつながらない。
    • むしろ宿題に依存せず、課題解決能力を育てる取り組みが必要。

保護者への提言

  1. 子供の自主性を信じる
    • 宿題が必須という感情的な固定観念を捨て、子供の可能性を信じて任せる姿勢が重要。
  2. 学力への期待値を適切に設定する
    • 宿題で管理する場合は、学力の上限が限定されることを受け入れる。
  3. 結果よりプロセスを重視する
    • 自分の頭で考えて行動する力を育む環境づくりを最優先にする。