「長岡技術科学大学はすごい」「就職が強い」と聞く一方で、偏差値は40.0と他の国立大学に比べて低め。なぜ、ここまで実力があるのに偏差値は低く見えるのでしょうか?

この記事では、「長岡技術科学大学の偏差値がなぜ低いのか?」という疑問に対し、大学の構造や制度、就職実績や学生の背景にまで踏み込みながら解説していきます。そして、偏差値だけでは分からない“本当の実力”を明らかにします。

偏差値が低い=レベルが低いと短絡的に判断する前に、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

長岡技術科学大学の偏差値はなぜ低い?その理由

長岡技術科学大学は、就職や研究分野で高い実績を持ちながらも、入試偏差値は「40.0」と全国の国立大学の中でも低い部類に入ります。ここでは、偏差値が低く出る理由を6つの側面から丁寧に分析していきます。

偏差値はどれくらい?共通テスト得点率と合わせて紹介

長岡技術科学大学の偏差値は、工学系単科大学としては全国的にも低い部類に入ります。最新のデータによると、工学部の偏差値は「40.0」、共通テスト得点率は「55%」となっており、国立大学の中では控えめな数字です。

▶ 長岡技術科学大学 工学部の入試データ(前期日程)

学部名学科名偏差値共通テスト得点率
工学部工学課程40.055%(501/910点)

引用:スタディサプリ進路

偏差値40.0というと、一般的には「簡単そう」と見られがちですが、これはあくまで「高校卒業後に一般入試で入学する層」に限定した評価です。長岡技術科学大学では高専からの3年次編入生が多数を占めており、偏差値の計算対象から外れてしまうため、偏差値だけで大学の実力を判断するのは誤解につながります。

このあと解説するように、同大学は研究力・就職実績ともに全国有数で、真の実力は偏差値以上の評価に値する大学です。

高専からの3年次編入生が多く偏差値に反映されない構造とは?

長岡技術科学大学の偏差値が「低く見えてしまう」最大の理由は、その独自の編入制度にあります。実は、同大学の学生の約60〜70%が高専(高等専門学校)からの3年次編入生で構成されています。

この高専編入制度により、大学1・2年次を経ずに直接3年次からスタートするため、彼らは一般的な偏差値ランキングの計算対象から外れます。つまり、偏差値は高校卒業生を対象とした一般入試の結果のみを反映しており、編入生の学力水準は反映されません。

▶ 学生の出身比率(概算)

区分割合(概算)
高校卒一般入試組約30〜40%
高専編入組約60〜70%

高専卒業生は、5年間にわたり実践的かつ専門的な技術教育を受けており、大学入学時点で高度な知識とスキルを持っています。それにもかかわらず、偏差値ランキングでは無視されるため、「偏差値40.0」という数字だけを見て大学のレベルを判断するのは大きな誤解を生む要因です。

このように、長岡技術科学大学は“偏差値に見えない”優秀な技術者予備軍が多く在籍する、特殊かつ実力派の大学なのです。

理系学部は偏差値が低く出やすい理由

理系学部は、文系と比較して偏差値が低めに出やすいという特徴があります。その原因は単純な“学力の差”ではなく、試験科目の構成や受験者層の特性にあります。

理系の大学では、主に「数学」「物理」「化学」といった難易度の高い科目が必須となる一方、受験者数自体は文系に比べて少なくなります。そのため、相対評価である偏差値は低く算出される傾向にあるのです。

▶ 文系・理系の偏差値構造比較(例)

学部区分受験科目構成受験者層偏差値傾向(例)
文系国語・英語・社会など多い55〜65前後
理系数学・物理・化学など少ない45〜55前後

また、理系学生は「研究室の専門性」や「実験設備」「教授の指導内容」など、学びの質や将来性を重視して大学を選ぶ傾向があります。そのため、偏差値によるヒエラルキーを重視する文系と異なり、偏差値に依存しない選び方をする受験生が多いのです。

このように、理系学部の偏差値はあくまで参考値であり、学力や実力を完全に反映しているとは言えません。長岡技術科学大学のような専門性の高い工学系大学ほど、この傾向は顕著になります。

地方国立大学という立地が志願者数や偏差値に与える影響

長岡技術科学大学は、新潟県長岡市という中山間地域に位置する地方国立大学です。この地理的な条件が、偏差値に影響を与える大きな要素の一つとなっています。

地方にある国立大学は、都市部の大学と比較してアクセス面で不利であり、交通費や生活環境の面でも敬遠されやすい傾向にあります。特に関東・関西圏の受験生から見ると、「わざわざ新潟まで通うメリットが少ない」と判断されやすく、全国的な志願者数が少なくなるのが実情です。

▶ 地方と都市の国立大学の立地比較(例)

大学名所在地最寄り都市との距離志願者の全国比率偏差値(目安)
長岡技術科学大学新潟県長岡市新潟市から約80km地方中心40.0
東京農工大学東京都府中市新宿から約30分全国広域55.0〜60.0
大阪大学(工学部)大阪府吹田市梅田から約20分全国広域62.5〜65.0

このように、地方大学はアクセス面や地元志向の高さから全国的な受験生を集めにくく、偏差値が伸びにくい構造になっているのです。

しかし、これは「レベルが低い」ことを意味するのではなく、受験者の母集団が限られているという統計的な結果に過ぎません。地方国立大の多くがこの課題を共有しており、長岡技術科学大学もその一つなのです。

一般入試の倍率や入試科目から見る本当の難易度

長岡技術科学大学の一般入試(前期日程)の実質倍率は約2.3倍で、国立理工系大学としては標準的な水準に位置します。しかし、その中身を見ると、決して簡単な試験ではありません。記述力や論理的思考力が問われる構成で、理系科目への深い理解が求められます。

▶ 一般入試(前期)の試験科目と配点

教科配点内容
数学150点数I・A・II・B(数列・ベクトル)・III
理科150点「物理基礎・物理」または「化学基礎・化学」から1科目
調査書50点高校での成績や活動を記載した内申書を評価に反映

(引用:長岡技術科学大学 入試情報:https://www.nagaokaut.ac.jp/nyuushi/)

また、全体として記述式の出題が中心である点も特徴です。公式を暗記して終わるのではなく、解法のプロセスや根拠まで説明する力が求められるため、「ただの暗記型受験」では太刀打ちできません。

倍率こそ高騰しているわけではありませんが、質的な難易度は決して低くないのが長岡技術科学大学の入試の本質です。特に数学・物理・化学に自信のある受験生に向いている内容だといえるでしょう。

中退率8.4%と国立でワースト1位?偏差値では測れない「厳しさ」

長岡技術科学大学は、中退率が8.4%と国立大学の中でワースト1位に位置しており、全国平均の約1.94%(国立大学法人平均)と比較しても際立って高い数字です。

▶ 中退率比較表(参考:大学ポートレートより)

大学名中退率(最新年度)
長岡技術科学大学8.4%
国立大学平均(参考)約1.94%
○○大学(仮)2.1%
△△技術大学(仮)3.3%

この高い中退率の背景には、「高専からの編入による学習スタイルのギャップ」や、「長期インターンや研究活動などの実践教育における高い負荷」があります。特に3年次から編入した高専卒の学生にとって、大学特有のアカデミックな研究への適応は容易ではありません。

偏差値40.0という数字だけを見ると「入りやすい大学」と誤解されがちですが、実際には入学後の厳しさが非常に高い大学であり、それが中退率という数字に現れているのです。

長岡技術科学大学はなぜ偏差値が低いか:理由が分かったら

長岡技術科学大学は偏差値だけを見ると「レベルが低いのでは?」と思われがちですが、実際には技術者育成において極めて高い実績を誇る大学です。就職率の高さ、大学院進学の多さ、専門性に特化した学びの質など、偏差値では測れない「本当のすごさ」が詰まっています。

ここからは、そんな長岡技術科学大学の真の実力について解説していきます。

就職率驚異の98.1%!技術者育成で圧倒的な実績

長岡技術科学大学は、就職率98.1%という非常に高い実績を誇る理工系単科の国立大学です。2023年度(2023年4月〜2024年3月)の卒業者405名のうち、343名が大学院へ進学し、就職希望者53名中52名が内定。実質的な就職成功率はほぼ100%に近い水準です。

卒業者数就職希望者就職者数進学者数就職率
405名53名52名343名98.1%

引用:パスナビ

この圧倒的な成果の背景には、高専からの編入による実務力の高さ産学連携による実践教育長期インターン制度などが挙げられます。学生は早期から研究室に所属し、専門性を高めながら社会との接点を持ち、企業とのマッチングも非常にスムーズ。

特に技術職・研究職への就職で強みを発揮しています。これは、偏差値では測れない「真の実力」といえるでしょう。

有名企業・公務員への就職実績が強い理由とは?

長岡技術科学大学の就職の強さは、単なる就職率の高さだけに留まりません。実際の就職先の質においても非常に優れており、有名企業や官公庁への就職実績が多数あります。特に、大学推薦枠を活用した安定的な就職が多く、企業側からも「即戦力」として高く評価されています。

以下は2023年度の主な就職先の一覧です。

企業・団体名区分
東京電力ホールディングス民間企業
新潟県・新潟市(各2名)地方公務員
国土交通省(1名)国家公務員
太陽工機、日本精機(各1名)製造業
JR東日本・JR北海道(各1名)交通インフラ

これらの実績の背景には、学部段階から始まる実践教育研究室活動長期インターンなどで培われた高度な専門力があります。そのため、採用担当者からの信頼も厚く、推薦採用での就職が多いのも特徴です。偏差値では測れない「職業的実力」がここに表れています。

学部4年+大学院2年の実質6年教育体制が強い人材を生む

長岡技術科学大学の教育の最大の特徴は、「学部+大学院」の6年間にわたる一貫教育体制にあります。特に注目すべきは、卒業生の約84.7%が大学院に進学しており、専門性をより深く身につける学生が非常に多い点です。

年度卒業者数大学院進学者数進学率
2023年度405名343名約84.7%

この体制では、学部3年次から研究室に所属し、大学院進学を前提とした高度な研究活動に早期から参加します。実験・研究・プレゼンテーションのスキルはもちろん、企業との共同研究やインターンシップも多く、実社会に近い環境で技術を磨ける点が特徴です。

そのため、企業からは「即戦力」「研究の即応性が高い」と評価される人材として重宝されており、就職でも研究職や開発職に強いのがこの大学の特長といえます。

学部紹介|実践教育に特化した専門学科の一覧表

長岡技術科学大学は、実践力に特化した教育を重視しており、工学部内に複数の専門課程が設置されています。以下に、主な課程を一覧表で紹介します。

学科名特徴・分野
機械創造工学課程ロボティクス、エネルギー設計、機械制御など
電気電子情報工学課程通信工学、AI技術、組込みシステム、電力工学など
物質材料工学課程ナノ素材、化学プロセス、材料設計、再利用技術など
環境社会基盤工学課程環境工学、都市設計、インフラ整備、減災対策など
情報・経営システム工学課程システム開発、経営工学、IoT、データ分析など

このように、理論と実践を融合させたカリキュラムにより、現場で即戦力となる技術者を多数輩出しています。

学費・奨学金制度|私立理系よりはるかに安く学べる高コスパ国立大

長岡技術科学大学は国立大学に分類されており、学費は非常にリーズナブルです。特に私立理系大学と比較すると、その差は歴然です。以下は、2024年度時点での学費の内訳です。

区分金額(円)
入学金282,000円
授業料(年額)535,800円 × 4年
合計2,425,200円

一方、私立理系大学では4年間で500万円を超えることも珍しくありません。それに対して、長岡技術科学大学では半額以下の費用で質の高い理工系教育を受けられるのが大きな魅力です。

さらに、経済的に厳しい学生には、授業料免除制度やJASSO(日本学生支援機構)の奨学金制度が用意されており、成績優秀者や困窮世帯向けの支援体制も充実しています。金銭面の不安を抱えることなく、最先端の技術を学ぶことができる「コスパ最強」の国立大学といえるでしょう。

MARCH・新潟大学とどっちがいい?レベルや進路で比較

「長岡技術科学大学とMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)、あるいは新潟大学のどちらに進学すべきか」と悩む声は少なくありません。結論から言えば、工学系分野で専門性や技術職を目指す場合、長岡技術科学大学が最も実践的な環境を提供しています。

以下の比較表をご覧ください。

比較項目長岡技術科学大学MARCH系大学(理系)新潟大学(理系)
主な進路技術職・研究職中心一般企業(営業・事務も多い)教員・公務員・地元就職が多い
大学院進学率約80%(2023年度実績)約25〜35%前後約40%前後
学費・支援制度年間約53万円(国立+免除あり)年間約140〜160万円(私立)年間約53万円(国立)
専門性高度工学・実践教育が中心幅広く学べるが専門分野は限定的医学・教育系に強み

MARCHは知名度や都市部の立地で有利に思われがちですが、理工系の深い専門性や大学院進学を視野に入れるなら、長岡技術科学大学の方が確実に実践的です。とくに企業の研究職や開発職を目指すなら、その教育体制と研究環境は大きな武器となるでしょう。

「やめとけ」と言われる理由とその裏にある誤解

ネット上では「長岡技術科学大学はやめとけ」という声が見られることもありますが、その多くは大学の厳しい環境に起因したものです。以下に、主な“ネガティブ評価”の原因と、それに対する正しい見方をまとめました。

指摘される点実際の内容と解説
中退率が高い(8.4%)国立大学中で最も高い水準。
ただし、厳しい教育内容と高専編入の適応課題が要因(引用:大学ポートレート
立地が不便(新潟県長岡市)都市圏と比べて交通の便は劣るが、落ち着いて研究に集中できる環境とも言える
学業が厳しい研究・インターン重視の実践的カリキュラム。
やり抜けば確かな技術が身につく

これらはすべて、見方を変えれば「本気の学生だけが成果を出せる環境」であるとも言えます。安易に「やめとけ」と決めつけるのではなく、自分の学びたい姿勢や将来像に合っているかどうかを基準に判断することが大切です。

卒業生の多くが大手企業や研究機関で活躍している事実が、大学の実力を物語っています。

総括:長岡技術科学大学の偏差値はなぜ低い?まとめ

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

  • 偏差値は40.0・共通テスト得点率は55%と低めだが、実態は異なる
  • 高専からの編入生が6〜7割を占め、偏差値に反映されない構造
  • 理系学部は文系より偏差値が低く出やすい(受験者数や科目特性が影響)
  • 地方大学で志願者数が少ないため、偏差値が上がりにくい(立地の影響)
  • 入試倍率は約2.3倍、記述式が中心で思考力重視の難易度
  • 中退率は8.4%と国立大学で最も高いが、それだけ教育が厳しい証拠
  • 就職率は98.1%でほぼ100%に近い(2023年度データ)
  • 進学率も高く、卒業生の約85%が大学院へ進学
  • 主な就職先は東京電力・JR・官公庁など有名企業多数
  • 学費は4年間で約242万円と私立理系より大幅に安価
  • 実践的な専門課程(機械・AI・環境・経営など)に強み
  • MARCHや新潟大学よりも技術者育成に向いた大学
  • 「やめとけ」と言われるのは立地や厳しさゆえであり、誤解も多い