今回は有名な文豪・芥川龍之介（あくたがわ りゅうのすけ）の「死因」について、みなさんに分かりやすくお話します。
教科書にも出てくる「羅生門」や「蜘蛛の糸」の作者である芥川が、なぜ若くして命を絶ったのか？どんな気持ちで最後の時を迎えたのか？そのヒントは彼が残した「遺書」にあります。
この記事では、彼の死の背景や精神状態、家族との関係、そして文学への影響まで、しっかり解説していきます。一緒に学んでいきましょう！
芥川龍之介の死因とは？服毒自殺に至る背景
芥川龍之介の死因は、35歳という若さで迎えた自らの命を絶つという形で歴史に刻まれています。彼が選んだ死は、ただの悲劇ではなく、彼の複雑な心情や時代背景を反映したものだったのです。ここでは、その死因や彼の心の中を深く掘り下げて解説します。
芥川龍之介の死因は服毒自殺！使用した薬と死亡当日の様子
芥川龍之介の死因は、睡眠薬の服用による自殺でした。亡くなったのは1927年（昭和2年）7月24日、当時まだ35歳という若さでした。
その日は日曜日で、家族がそばにいた中で、彼は自室でひっそりと命を絶ちました。使われた薬は「ヴェルナル（Veronal）」という睡眠薬で、当時の医療ではよく使われていた薬です。しかし、大量に飲むと命に関わる危険なものでした。
発見されたとき、彼は机の上に何通もの遺書を残していて、その中には子どもたちや友人へのメッセージもありました。死を選ぶまでにかなり深く悩み、考えていたことが分かります。
自殺の動機は「ぼんやりした不安」？有名な遺書の一節
芥川龍之介が遺書の中で書いたもっとも有名な言葉が、「ただぼんやりした不安」という一節です。これは、はっきりとした理由があるわけではなく、なんとなく不安で、心が重く感じていたという意味です。
普通、自殺の原因には「生活の悩み」や「病気」などが考えられますが、芥川の場合は「具体的な出来事」があったわけではありません。自分でもなぜこんなに不安なのか、うまく言葉にできなかったのです。
この「ぼんやりした不安」は、当時の社会が不安定だったことや、将来への希望が見えにくかったことも関係していたと考えられています。
芥川龍之介の遺書の内容：「或旧友へ送る手記」など
芥川が残した遺書は一つだけではありません。中でも有名なのが、友人の久米正雄に宛てた「或旧友へ送る手記（あるきゅうゆうへおくるしゅき）」です。
この手紙では、死を選ぶまでの自分の気持ちや悩みをとても丁寧に書いています。例えば、「僕等人間は一事件の為に容易に自殺などするものではない」と書き、たった一つの出来事で命を絶つのではなく、長年の思いや苦しみの積み重ねがあったことを伝えています。
他にも、子どもたちへの遺書「わが子等に。」では、「一人生は死に至る戦ひなることを忘るべからず」と書いており、生きること自体が苦しい戦いだったと考えていた様子が伝わってきます。
神経衰弱や鬱病の可能性
芥川の自殺については、当時「神経衰弱（しんけいすいじゃく）」と発表されました。これは、今でいうところの「うつ病（うつびょう）」や「不安障害」に近いとされています。
芥川は非常に頭がよく繊細な性格で、自分の気持ちを深く見つめすぎてしまうところがありました。さらに、自分の作品に対する評価や将来への不安も大きく、精神的に疲れきっていたといわれています。
もし彼が現代に生きていたら、専門医のカウンセリングや薬物治療によって、回復の道もあったかもしれません。それほど、心の病気は正しく理解して治療することが大切なのです。
家族や友人との関係：母や妻・子どもへの思い
芥川の人生には、家族や友人との関係が大きく影響していました。特に、精神的に不安定だった母の姿を子どものころから見ていたことが、彼の心に深い影を落としました。
結婚してからは妻・文（ふみ）との間に3人の子どもをもうけましたが、家庭生活が完全に心の安らぎにはならなかったようです。それでも、遺書には「子どもたちの将来を案じている言葉」があり、最後まで父親としての愛情を感じさせます。
また、親友たちとの交流は彼にとって大きな支えでもありましたが、死に向かう中で誰にも「本音」を打ち明けられなかったことも、苦しみを深めた理由の一つかもしれません。
芥川龍之介の死因の後に：最期と文学への影響など
芥川龍之介が見た最期の世界には、ただの悲しみだけでなく、「美しさ」もありました。彼は遺書の中で、「末期の目（まつごのめ）」という印象的な言葉を使っています。これは、死を前にした人が見る世界のこと。そこには、生きているうちには見えない景色が広がっていたのかもしれません。
ここからは、芥川の死を通して見えてくる「文学への影響」や「時代背景」、「彼が生きた場所」などについて、詳しく見ていきましょう。
芥川龍之介の「末期の目」とは？遺書に記された美と死の境界線
芥川が遺書の中で語った「末期の目」とは、死を意識したときに見る世界の美しさを意味する言葉です。彼は、「氷のように透き通った神経の世界で生きている」と語り、その中で見る自然の美しさを「末期の目」と表現しました。
例えば、売笑婦（ばいしょうふ）と話をしたときに感じた人生の悲しさや、何気ない自然の景色の美しさが、死に向かう心と重なっていたのです。この言葉は、その後の作家たちにも大きな影響を与えました。
川端康成は、「芸術の極意はこの末期の眼にある」とさえ言っています。芥川の死は、文学の中に「死と美」という深いテーマを残したのです。
芥川の死と「文士村」の面影
芥川龍之介が亡くなったのは、東京都北区田端（たばた）の自宅でした。この地域は、当時「文士村（ぶんしむら）」と呼ばれていて、多くの作家や詩人が住んでいました。
彼の家は坂の上に建つ大きな屋敷で、2階には小さな書斎があり、そこが彼の創作の場であり、また命を絶った場所でもありました。現在、その家は残っていませんが、「田端文士村記念館」で模型を見ることができます。
この土地に立つことで、芥川が見ていた景色や空気感を少しだけ感じることができます。彼が生きた「場所」もまた、彼の死を語る上で欠かせない要素のひとつです。
死後の評価と作品の広がり
芥川龍之介が亡くなったあとは、日本文学界に大きな波が広がりました。彼の死は、ひとりの作家の終わりではなく、「時代の不安」を象徴する出来事だったからです。
彼の作品は、死後も読み継がれ、「芥川賞」という新人作家に贈られる文学賞の名前にもなりました。つまり、芥川は「自分が終わったあとも、文学を育て続ける存在」になったのです。
その死に対しては、「なぜこんな才能ある人が自ら命を絶ったのか？」と多くの人が考えました。そして、それが作品への関心や研究を深めるきっかけになったのです。
芥川と太宰治の違いと共通点
芥川龍之介と太宰治（だざい おさむ）は、よく比べられる二人の文豪です。ふたりとも「自殺」という形で人生を終えましたが、その理由や背景には違いがありました。
芥川は、「理性で考えぬいた末に」死を選んだ人です。一方、太宰は「感情や衝動」に動かされることが多かったといわれています。
でも共通していたのは、「生きることへの不安」や「社会に対する疑問」を深く抱えていたところです。太宰は芥川に強く影響を受けており、芥川の作品や生き方を敬愛していました。
このように、芥川の死は、太宰の文学にも影を落としているのです。
もし現代に生きていたら？21世紀の医療と社会
もし芥川龍之介が現代に生きていたら、どうなっていたでしょうか？
現代では「うつ病」や「不安障害」は、医師による治療やカウンセリングで改善が可能です。芥川のような繊細な心の持ち主にとって、心療内科のサポートはとても大きいでしょう。
また、社会的にも「心の不調を隠さなくていい」という風潮が強まり、周りの人に相談しやすくなっています。SNSなどで気軽に話ができたり、専門の支援団体もあります。
そう考えると、芥川は「自殺という選択をしない未来」もあったかもしれません。だからこそ、彼の人生を知ることは、今を生きる私たちにとって大切な学びになるのです。
総括：芥川龍之介の死因まとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
- 芥川龍之介の死因は、1927年に服毒自殺（睡眠薬ヴェルナルを使用）によるもの。
- 自殺の動機は「ただぼんやりした不安」と遺書に書かれており、明確な理由はなかった。
- 遺書「或旧友へ送る手記」など複数が残され、長年の苦悩や子どもへの愛情も表現されていた。
- 当時は「神経衰弱」とされ、現代では「うつ病」など心の病の可能性が指摘されている。
- 母の精神的病や家庭環境、友人との関係も彼の心に影響を与えた。
- 芥川は死の直前、「末期の目」という言葉で自然の美しさを語った。
- 死の舞台となった田端の自宅は文士村にあり、現在は記念館でその姿を偲べる。
- 芥川の死は文学界に大きな影響を与え、芥川賞などの形で今もその名が残る。
- 芥川と太宰治には「自殺」という共通点があるが、動機や性格には違いがあった。
- 現代の医療や社会制度があれば、芥川が救われていた可能性もある。