「小学生から高い学力を身につけて欲しい。」
「中学では上位を取って、難関高校に進学して欲しい!」
そんな保護者さんのニーズの1つに、『先取り学習』があるのではないでしょうか。
中学入学時に周囲と差をつけ、トップの成績を取ってもらおうというわけです。
しかし、このアプローチ方法は高確率で失敗します。
今回は、上位層ほど過度な先取りをしてはいけない理由を現役塾長が解説していきます。
目次
【実体験】小学生から先取り学習をしていた生徒の悲惨な末路
先取り学習のリスクについて、自分の同級生の学生時代の実体験をお伝えしたいと思います。
タイトルは『小学生から先取り学習をしていた生徒の悲惨な末路』です。
15年前自分が中学に入学した時、とんでもなく学力が高い子達がいました。
中1の最初のテストでは5教科で450点超え。
しかも、全員が同じ塾に通っていました。
その塾は学力が高い小学生だけを集め、先取りしまくる塾です。
そこの塾生は小学生で中1英語を終えてました。
しかし、中1の夏ぐらいからでしょうか、この集団塾の子達の成績が下がり始めます。
と言うより、自分がその子達をゴボウ抜きした感じです。
この頃(中1夏休み前)から自分は塾通いを始め、勉強に燃えていました。
でも、ちょっと納得いかなくないですか?
確かに自分は勉強を頑張りましたが、小学校とかほぼノー勉ですよ。
先取りしてきた子と差がついていたのに、その差が数ヶ月で埋まり、最後は追い越してしまうわけです。
しかも、中1の終わり頃には、その先取り塾の生徒の半分ぐらいは成績が下がっていました。
つまり、先取り学習で差をつけられたのは中1の最初のテストだけです。
話はこれだけでは終わりません。
この先取り塾の中でも中学では上位を取り、公立トップ校に進学していくメンバーは確かにいました。
でも、そのメンバーの中で、高校で通用したい人は誰一人いません。
その塾出身で難関大に進学できた人は0人でした。
いやそれどころか、大学入試の結果は完全に悲惨なものでしたよ…
一方自分が通っていた塾は、京大、一橋、神戸大、名古屋大など難関国公立が出まくってます。
自分自身も神戸大に合格しました。
田舎の個人塾です。
これが先取り学習をしてきた子たちの末路と、先取り学習をしてこなかった自分のエピソード。
小学校先取り学習組が中学・高校で伸び悩む理由
しかし、なぜ先取り組がこんな風に転落していくのでしょうか?
塾を経営し始めた今、その理由は大体分かります。
先取り学習の正体:ドーピング
先取り学習の正体は、『ドーピング』です。
小学生で先取り学習を取り入れようとすると、どうしても「広く浅く」になります。
小学生の思考力では中学内容の応用問題まで先取りするのは難しいです。
すると、結果的に簡単なところをつまみ食いしていくしかない。
算数であれば、中1の正の数負の数、文字式、方程式の計算問題までなら、数ヶ月もあれば終わります。
でも、
“簡単な内容を人よりも少しだけ早く知っているだけの人”
が果たして賢い人だと思いますか?
遅かれ早かれ、基礎内容はみんな勉強します。追いつかれます。
中1の最初だと計算問題が仕上がっている子は、テスト前に文章題まで対策する時間が残せます。
中1の最初は文章題も簡単ですから、テストの点数も高くなります。
しかし、それ以降は小学校算数の「速さ・割合・図形」などの論点を深く理解していないと、一気に出来なくなります。
そこからは、実力勝負の試合になるだけです。
ここで小学校算数の深堀りが出来ていない子が、まず第一陣として敗退します。
先取り学習の最大のリスク
中1でドーピングが切れるとしても、
「先取り自体、悪いことではなくない?」
と思われる方もいるのではないでしょうか。
※あくまで、小学校算数や国語の読解問題を疎かにしていない前提でですが。
この点に関しては、2つのリスクを排除できるかが焦点!
リスクとは、
①優越感を覚えるリスク
②思考力が養われないリスク
先取りをすると、その時点では同級生より知識が多くなり、子供が調子に乗りやすいです。
簡単な内容を少し早く知っているだけなのに、優越感を覚えてしまう…
これで勉強しなくなると本末転倒です。
また、基礎計算のみの先取りの場合、思考力が養われないリスクも大きいです。
だって計算問題って公式にハメて反復すればいいだけなので、頭使って考えないでしょ。
すると、「作業員」になりやすい。
操作は出来るけど、思考は出来ない子。
公文式出身者にこのタイプは多く見られ、「計算番長」になっています。
これが公文式の最大のリスクとも言えます。
小学生の段階で最も身につけさせたい能力って、「自分の頭で考える力」ですよね?
難しい問題に直面しても、
・まず1回自分なりに考えてみる
・あの手この手を使ってぶつかる
こんな感じで経験をつませることが、勉強に対する「忍耐力」にもつながる。
逆に言うと、中学以降で伸びない子は、勉強に対する忍耐力がない。
分からないと考えようともせず、すぐやめちゃうので。
これは、塾などに来ても中々伸びない子の典型例です。
【原則】先取り学習より『深掘り学習』
中学受験などで受験をする場合は別ですが、基本的に公立小学校の上位層は先取り学習なんて不要です。
やるなら、小6の終わりからです。
理想的なのは、12月までに小6内容を終え、1月から中学校の予習をしておく。
しかし、小5・6の算数においては、先取りではなく「深堀り」が命です。
基礎計算をどれだけ先取りしても、文章題・図形の問題が解けていないと、中学で上位は狙えません。
例えば以下のような問題。
①時速30kmは秒速何m?
②240円の23%増はいくら?
③父と母の体重の比は4:3で、2人の体重の合計は140kg。父の体重は何kg?
このレベルの問題が出来ないのに先取りしている子、山ほどいますよ。
意味ない意味ない。
これらは文章題と、単位変換の1問1答なのですが、小5と小6の算数です。
速さ・割合の文章題がまだ仕上がっていない子は、文章だ基礎として「小学5年生 文章題にぐーんと強くなる」をやらせてください。
小5の子はもちろん、小6になったのに実は速さや割合の問題が出来ない子も、まずはそこからでOKです。
小6になって、「比の計算」「比例・反比例」が怪しい子は、「小学6年生 文章題にぐーんと強くなる」をやる。
正直なところ、中学生になっても割合の問題が出来ない子は公立だと50%以上います。
そんな中学生にもやって欲しいです。
が、中学の勉強はどんどん進むので、そんな時間はない…
ここに、「出遅れたら詰む」と言う、勉強の本質があるわけです。
算数の思考力そのものを上げたい場合
あと、算数ができる賢い子供を育てると言う意味では、学校のお勉強に特化しないのも重要です。
学校の問題(文章題も含めて)が完璧なら、小学生の段階で頭を使って解く脳トレ系の問題はかなりオススメ出来ます。
市販教材でダントツに良いのが、「算数ラボ」シリーズです。
思考力そのものが鍛えられる算数の問題で、こんな感じです。

かなり生徒のウケはよく、楽しみながら考えてくれるので重宝してます。
小4なら、「算数ラボ8級」
小5なら、「算数ラボ7級」
小6なら、「算数ラボ6級」
学校の勉強で余力を残している子は、これ系の問題集をどんどんやらせる方が、先取りの100000倍効果がある気がします。
【例外】小学生でも英語の先取りは必須
小学生に過度な先取りは不要、この持論は変わりません。
ただ、昨今の教育においては「英語だけは例外」です。
以下の記事でも書きましたが、中1英語の平均点は42点、3人に1人は30点以下なのが今の中学生です。
【証拠画像アリ】中学生の英語平均点は42点!3人に1人は30点以下の時代に突入
その理由は、「中1英語は詰め込みすぎ」だからです。
1年間で取り扱う単語量、文法論点が多すぎる。
be動詞、一般動詞、三単現、疑問詞、現在進行形、過去形、過去進行形、未来形…
って殺す気ですか?笑
残念ながら、地頭がいい子しかついていけてません。
しかし、所詮は中1英語ですし、所詮は語学です。
量が多いだけで内容1つ1つは難しくないので、早めに始めておけば地頭がいいわけではない子も出来るようになります。
英語だけは、「早く始めておかないと詰む」のです。
よって、算数は深堀り、英語は先取りの考え方が今の教育にはマッチしていると思います。
