学業成績は勉強時間に比例して伸びるというのは、一見筋が通っている主張のように思えますが、決して科学的な意見ではありません。
なぜなら、“原則として一定の地頭水準を有している場合”という条件付きの理論であり、それが当てはまらない・当てはめずらい人は結構な割合で存在するからです。
自分の感覚ベースでは、全体の50%ぐらいはそういう子はいると思います。少なくとも20%〜30%は確実に存在すると断言できます。
だから、元々のIQ的なものが同年代の中でも下50%ぐらいの子になると、勉強時間に比例して成績が伸びない子が一気に現れてしまいます。こういう子は、長時間勉強がウリの割と厳しい系の塾に入れても伸び止まります。
これも感覚的な話で申し訳ないですが、元の地頭にはよるものの、そういう子は長時間勉強させても平均点かそれ以下で伸び止まる傾向が極めて強いです。そして、その壁を壊そうとすると、そこから先は莫大な時間とエネルギーが必要になるというのが持論です。
しかし、上位50%以上の子はそうなりずらいのが残酷な現実。この層は、個人差こそあれ、やった分に応じて比例的に、あるいは指数関数的に点数アップが実現しているからです。
では、元の地頭が違うと、なぜ勉強時間に応じて伸び率や伸びの限界ラインがこうも変わってしまうのでしょうか?
今回は、中学生の定期テストの取り組みを見て、自分の中で達している結論を正直にお伝えします。
定期テストの得点期待値の決まり方:学校ワークの完成度が1つの基準
実力テストのような地頭をモロに問われやすいテストと違い、定期テストは原則として「学校で習ったことがどれだけ理解できているか」を問うテストです。
だから、ある程度はテスト対策がしやすく、狙って得点を取らせることができます。
では、定期テストの得点がどのように予測できるのか?
まず一番最初に考えるべきは、「学校配布のワークの定着度」です。
定期テストは、学校で配られているワーク類から全く同じ問題が出たり、少しだけ聞き方を変えた類題が出たりします。だから、「あ、これワークでやったやつ!」とテスト中に思うことがよくあります。
そして、先生の出題の仕方にも大きく左右されるものの、大抵の場合は、学校のワークをフルでやり込んだ時に取れる得点の期待値は約70点程度だと思います。
それ以外だと、学校の先生のプリントに書かれている内容が出たり、あるいは教科書にしか書かれていない細かい系の知識が出たり、あるいは点数差をつけるために明らかに難易度の高い問題が出たりして、それが残りの30%ぐらいという感覚です。
だから、自塾の場合は以下のステップでテスト対策を行います。
①学校ワークを全部暗記させて再テスト
②学校のプリントを暗記させてテスト
③塾のワークで別角度の問題をやらせて問題に慣らす
正直、このぐらいやれば、地頭水準がいい子であれば80点以上が期待でき、ミスが少ない子だとこれだけでも90点を越えれます。
しかし、ここで一番大事なのは「学校ワークの再テスト」です。
正直、ここで最テストした時の出来具合が、そのままその子の点数を占います。
まず、学校ワークを極めて得点できる最大値が70点ぐらいだとすれば、ワークを再試して満点を取れる子は、この時点で70点ぐらいは届くという計算です。なお、そういう子は、ワークに乗っていない知識も同時に自主学習の中で覚えていくので、なんならこの時点で80点以上取れる可能性も大いにあります。
しかし、ここでワーク再試の正答率が下がれば下がるほど、本番の得点の期待値も自然と下がっていくことになります。
例えばワークの正答率が80%ぐらいの子だと、MAX70点の得点の80%しか取れないので、この時点で本番の点数が56点ぐらいにならないか?と思ってしまいます。ワークの正答率が50%とかになれば、本番では35点ということです。
もちろん、このままだとマズいので、間違えた箇所の直しなどをさせ、少しでも得点率を上げることで、あと少し点数を押し上げるのが塾の役割です。でも、最初に再試した時の点数から爆発的に上げるのは難しく、あと少ししか上がりません。
なお、自塾の場合は、ワークをいきなり再試するのではなく、塾の中で「その子が覚えたと言うまで覚える時間を確保」し、勉強させた上でテストを受けさせます。
そう言う意味では、ワークを再試して50%しか取れないかった子は、それ相当な勉強時間突っ込んだにも関わらず、50%しか正解できなかった子と言うことになります。
言葉は悪いですが、やればできる子の真逆で、「やらせたけど出来なかった子」です。根本的に勉強に不向きな子は大勢いて、そういう子であったという可能性が極めて高いです。時間をかけていけば伸びていく子もいますが、全員が全員そうなることはなく、なんなら改善する子の方が少数です。
生まれ持ってしての能力に依存する部分が大きいので。
1時間で全部覚えてしまう子もいれば、3時間かけて正答率が50%以下になる子もいます。これは「勉強の仕方が分かっているか」など方法論の問題ではなく、露骨に知能格差の問題が大きいことは真っ当な感覚があれば想像できるはずです。
だから、長時間勉強しても下位50%の生徒の成績が平均か平均以下で止まります。
そもそも、全体の得点で70点ぐらいが最大値の学校ワークをやり切るのに、この子達は膨大な時間がかかります。いや、膨大な時間をかけてもその70点分すら完璧にならず、必ず取りこぼしが出ます。
そうなると、80%の正答率でワークをマスターさせても56点とかしか見込めず、90%の正答率でようやく63点。今のテストは平均点が60点前後ですから、結局この辺りに上限があります。
だからもう、構造的に地頭が悪く、ワークの定着に人よりも多くの時間を有してしまう時点で、平均以上の点数を取らせると言うことが急激に難しくなります。
しかも、これを全教科で対策しないといけないし、中には苦手教科もあり、その強化に関しては、ただでさえ時間がない中で、他教科の何倍も時間をかけないと平均点すら届かないという絶望的な状況に追いやられます。
だから、地頭レンジが下位50%ぐらいの生徒を中心に、勉強時間を増やしたとしても点数が一定で止まってしまうという悲しい現実があるのです。
正確には、さらにもう少し時間を増やせばまだ伸びる余地はありますが、そうなるとテスト前以外の毎日の日常の学習ですら相当の負荷を乗せる必要が出てきてしまいます。しかし、もともと賢いわけでもなく、勉強への優先順が高くない子にそれを実践させるのは現実的に無理。
だからもう、地頭レンジが一定のラインを割った瞬間に、平均点以上という目標ですら到達不可能な生徒が出てしまいます。
しかも学年が上がるに連れて難易度も上がり、これまで以上にワーク1冊を完成させるのに要する時間が増えます。また、最近では「実力問題」と称して、定期テストに初見で見るような問題まで出される時代になったので、下位層がほどほどに勉強するぐらいでは、全くもって点数アップができない時代です。
下位層のさらに残念な特徴:ワークの正答率が100%でも70点取れない
ちなみに、仮に学校ワークをほぼ100%の正答率に持っていったとしても、根本的なIQが弱い子は、70点に乗りません。
いくつか理由はありますが、大きく以下の2つです。
①記号問題を理由もなくクソ暗記する
②思考停止すぎて類題を類題と思ってくれない
詳しく見ていきましょう。
①記号問題を理由もなくクソ暗記する
まずあるあるなのが、下位50%ぐらいの知能の子にワークをやらせると、本当に理由も考えずにクソ暗記に走ります。
正直、用語問題を、用語の意味をよく分からないまま暗記するのはまだ許せますよ。自分の中では理解していたつもり…というのもあるのでしょうから、その子なりに頑張ったのかもしれませんし。
しかし、選択問題の記号ですら、理屈を理解することなく記号だけ暗記するのが下位層のあるある現象の1つです。
例えば、答えが「イ」であれば、「この問題の答えは確かイだったな?」的なノリで再試を受けて正解してくるパターン。なぜ答えがイなのか理由などは全く考えず、他の選択肢の何が違うかなども全く考えません。
ただ答えを覚えているだけです。
だから、仮にテストで選択肢の順番をシャッフルされたら詰みます。
いや、選択肢の順番が変わっただけで全く同じ問題なんですよ。でも、そうやって暗記している生徒は、ほんの少しひねられた瞬間に正解できなくなります。
学校の先生も全く同じ問題だと味がないので、こうやって多少いじってくることはよくありますが、思考停止で答えだけを暗記する系の勉強をする人間は、こうなった途端に正解できなくなります。
だから、仮にワークを再試して丸つけし、全部あっていて正答率100%だとしても、こういう人間は全体の70%〜80%しか理解しておらず、習熟度で言えば100%ではないということになります。そうなれば、結局平均以下で終わったりします。
②思考停止すぎて類題を類題と思ってくれない
知能水準が根本的に低い子にワークを覚えさせても得点が期待できない理由はまだあります。
それが、“思考停止すぎて類題を類題と思ってくれない”です。
例えば学校のワークに「10以下の素数は何個ありますか?」という問題があり、それを勉強させて暗記させたとします。答えは2,3,5,7の4つです。
しかし、勉強において思考停止するタイプは、「4つ」という答えだけを覚え、その構成要素などは考えません。考えたくないんです。思考するのがしんどいので、手っ取り早く勉強を終わらせるために意味も分からず答えを覚えます。
だからテスト問題で、「10以下の素数を全部答えなさい。」と問題が変わった瞬間詰みます。
勉強中の目的がテストで正解することではなく、今この瞬間の苦痛から1秒でも早く抜け出すことにしかない属性の子は、全部このパターンです。
でも、この2つの問題を同じと思えないのであれば、学校ワークを仮に全部覚えたとしても、自分の考える期待値の最大まで持っていくことなど出来るわけもありません。
ここまで思考放棄されてしまっては、正直もうお手上げなのです。
下位50%で思考停止人間の成績アップは本当に修羅の道
ここまで読まれて、
「じゃあ、選択肢の問題を口頭で確認してあげればいいじゃん?」
「素数について口頭で確認してあげたらいいじゃん」
と言いたい親御さんが大勢いることは安易に想像できます。
でも、そんなこと物理的にできるわけないでしょ。
いや、もしかしたらスーパーサイヤ人みたいな指導者がいるかもしれないので断定はすべきではないですね。でも、少なくとも自分は無理です。
だからここまで原因がわかっていたとしても、現実的な問題解決方法がなくて塾は悩んでいるんです。
だって、選択問題が1個や2個ならまだできますが、何個あると思っているのかって話です。しかも、5教科全部でそれをやらないといけないとしたら、一体全体どれだけの時間とエネルギーをその子1人に費やす必要があるのか?って話。
それが出来るとしたら1対1の個別指導だけですし、それを実行しようとすれば、ほとんど毎日通塾で通わせることになるので、月の月謝が30万とか40万になりますよ。
そして、そんなことをしなければいい加減な勉強をしてしまう時点で、お金をかけてもその効果は限定的でしょう。
結局のところ、「自分の頭で理由を考えて正解に持っていく」というプロセスがこの子達には絶望的に欠けています。
元々の地頭が良くないので、思考することに対して極端に拒否反応が起こりやすく、無意識に思考しないような生き方を選択してきているのが大きな理由です。
でも、これは仕方ないと言えば仕方ない話です。
だって、もともと賢い子ほど思考をしんどいと感じないし、そういう子は「なぜそうなるか理由がわからないまま覚えるのは気持ち悪い」と思い、自ら考えるか、納得行かなければ質問したりするなどして解決しようとします。
しかし、地頭が弱い子は、そもそも思考の負荷を平均以上の人間よりも大きく感じてしまうもの。だから、防衛本能からか思考せずになんとかその場を収めることに無意識にエネルギーが注がれてしまいます。
こういう子は、意味も分からず覚えるということに気持ち悪さを感じずらいです。そんなことよりも、思考してしんどい思いをすることの方が不快であり、その不快感を取り除く方向で行動を意思決定してしまいます。この子達にとっては、それが合理的なんです。
だから、知能ベースで分類すれば、両者は全く別の生き物と言っても過言ではないです。
思考領域全部でそうだとは言わないですが、少なくとも英数国理社の5教科の学問のお勉強においてはそういうことです。もちろん、他の勉強領域になれば話は変わるかもしれませんが、変わらないかもしれません。
これが賢い人間とそうでない人間にある埋めようのない属性の差であり、そのラインとして上半分と下半分に大きくは二極化しているのが今の教育です。いや、最近だと上半分でも思考放棄する子が増えてきていて、本当に考えて行動する子は多めに推定しても上40%です。
総括:地頭下位50%が平均点以下で終わる残酷な理由まとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
- 勉強時間と成績は比例するわけではなく、地頭(知能水準)が下位50%の生徒は長時間勉強しても伸びにくい。
- 学校ワークをやり込めば70点程度が得点期待値であり、そこにプリントや教科書・難問が加わって残り30点が差を生む。
- 自塾では「学校ワーク再テスト」が得点を占う最大の基準。再テストの正答率が低ければ本番も低得点になる。
- 地頭下位層は、時間をかけてもワークを完璧にできず、平均点に届くのが精一杯。全教科対応は現実的に不可能。
- 典型的な失敗例は「記号を丸暗記する」「類題を類題と認識できない」ことで、100%覚えても70点に届かない場合がある。
- 思考停止型の勉強をする生徒は、問題の形式が少し変わっただけで解けなくなる。
- 本質的に「理由を考える」習慣や力が弱く、知能差として埋められない壁が存在する。
- 平均点以上を狙うには莫大な時間・労力が必要で、現実的にはほぼ不可能。
- 学年が上がるほどワーク完成までの負担は増し、実力問題も加わるため下位層はさらに不利。
- 賢い子は「なぜそうなるか」を気持ち悪いと感じて自発的に考えるが、地頭が弱い子は思考を避けるため、根本的に学習の質が違う。
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