「電農名繊」という言葉を聞いたことはあるけれど、具体的にどの大学で構成され、どれくらいのレベルなのかよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
受験生の間では、電農名繊は“準旧帝大”とも言える実力派の国立大学群として知られていますが、その序列や難易度、さらには東京理科大や金岡千広との比較となると、ネット上でも議論が分かれています。
この記事では、電農名繊の定義から各大学の偏差値や共通テスト得点率、さらに就職力までを徹底的に解説。理系志望の受験生やその保護者が、進路選択に納得できる情報をお届けします。
電農名繊とは?4大学の特徴・偏差値・難易度を解説

電農名繊とは、情報・工学・化学・デザイン分野に強みを持つ4つの国立大学をまとめた名称です。ここでは、それぞれの大学の特徴や難易度、学部構成を表やデータを交えて丁寧に紹介します。
電農名繊とは?意味と構成大学の概要をわかりやすく解説
「電農名繊」とは、情報・工学・バイオ・デザインなどに強みを持つ理系国立大学群で、以下の4校を指します。
略称 | 大学名 | 所在地 | 主な強み |
---|---|---|---|
電 | 電気通信大学 | 東京 | 情報工学・通信技術 |
農 | 東京農工大学 | 東京 | 農学・バイオ・獣医学・工学 |
名 | 名古屋工業大学 | 愛知 | 機械・化学・情報工学 |
繊 | 京都工芸繊維大学 | 京都 | デザイン工学・繊維・建築 |
これらの大学は旧帝大ほどの全国ブランドこそないものの、産業界や研究機関での評価が高く、特定分野では突出した実績を誇ります。共通テスト得点率も70%前後〜80%超と高く、地域の上位層を中心に人気があります。
立地も首都圏・東海・関西に分散しており、地元志向の優秀な学生が集まりやすい点も特色です。実学志向が強く、就職率の高さや実務力の育成で注目される大学群です。
電気通信大学|情報・通信に強い偏差値帯と特色
電気通信大学(通称:電通大)は、東京都調布市にある国立の理工系単科大学です。特に情報通信技術・AI・ネットワーク・ロボティクスなど先端ICT分野に強みを持ち、「情報系に進みたいならここ」と言われるほどの実力校です。
入試難易度も高めで、共通テスト得点率は最大79%、偏差値は57.5と首都圏国立でも上位に位置します。
類型 | 前期偏差値 | 後期偏差値 | 前期共テ得点率 | 後期共テ得点率 |
---|---|---|---|---|
Ⅰ類(情報系) | 55.0 | 57.5 | 76%(380/500) | 79%(277/350) |
Ⅱ類(融合系) | 52.5 | 57.5 | 73%(365/500) | 77%(270/350) |
Ⅲ類(理工系) | 52.5 | 57.5 | 70%(350/500) | 77%(270/350) |
引用:スタディサプリ進路
理系特化の教育体制と研究設備に加え、大学院への進学率が高い点も特徴です。研究職や高度専門職を目指す学生にとって、実力を伸ばせる環境が整っている大学といえるでしょう。
東京農工大学|工学と農学の融合・偏差値のばらつきに注意
東京農工大学(農工大)は、東京都府中市・小金井市にキャンパスを構える国立大学で、工学部と農学部を併設する全国でも数少ない存在です。理系総合大学として、工学・バイオ・農業・獣医学と幅広い分野をカバーしており、とくに生命科学系と獣医学で全国的に高い評価を受けています。
学部・学科ごとに偏差値と得点率の幅が大きいため、志望学科ごとの難易度を把握しておくことが重要です。
工学部(偏差値:52.5〜57.5/共通テスト得点率:71〜78%)
学科 | 前期偏差値 | 後期偏差値 | 共通テスト得点率(前期/後期) |
---|---|---|---|
生命工学科 | 55.0 | 57.5 | 74%/76% |
機械システム工学科 | 55.0 | 57.5 | 74%/78% |
応用化学科 | 55.0 | 57.5 | 73%/78% |
化学物理工学科 | 52.5 | 57.5 | 71%/75% |
生体医用システム工学科 | 55.0 | 57.5 | 71%/75% |
知能情報システム工学科 | 55.0 | 57.5 | 72%/78% |
引用:スタディサプリ進路
農学部(偏差値:52.5〜67.5/共通テスト得点率:71〜88%)
学科 | 前期偏差値 | 後期偏差値 | 共通テスト得点率(前期/後期) |
---|---|---|---|
生物生産学科 | 52.5 | 57.5 | 73%/76% |
応用生物科学科 | 55.0 | 62.5 | 75%/80% |
環境資源科学科 | 52.5 | 62.5 | 71%/78% |
地域生態システム学科 | 52.5 | 62.5 | 71%/77% |
共同獣医学科 | 60.0 | 67.5 | 85%/88% |
引用:スタディサプリ進路
特に共同獣医学科は、後期日程で偏差値67.5・共通テスト得点率88%と国公立でも屈指の難関学科です。農系・生命科学系を志す学生には魅力的な選択肢となるでしょう。
名古屋工業大学|東海エリアの理系名門・偏差値帯も安定
名古屋工業大学(名工大)は、愛知県名古屋市に位置する工学系単科の国立大学です。トヨタ自動車をはじめとする中部圏の産業と強い連携を持ち、実学に強い人材を育成しています。
偏差値帯は55.0〜60.0、共通テスト得点率は69〜81%と高く、特に「情報工学科」や「物理工学科」は後期日程で偏差値60.0と非常に高難易度です。工学分野で安定した教育力を誇り、進学先としての信頼感も抜群です。
名古屋工業大学 工学部の偏差値・共通テスト得点率一覧
学科 | 前期偏差値 | 後期偏差値 | 共通テスト得点率(前期/後期) |
---|---|---|---|
情報工学科 | 57.5 | 60.0 | 74%/81% |
電気・機械工学科 | 57.5 | 57.5 | 74%/78% |
物理工学科 | 57.5 | 60.0 | 71%/79% |
生命・応用化学科 | 55.0 | 60.0 | 72%/77% |
社会-建築・デザイン | 57.5 | 57.5 | 75%/78% |
社会-環境都市 | 57.5 | 57.5 | 73%/77% |
社会-経営システム | 55.0 | 55.0 | 71%/74% |
創造-材料・エネルギー | 55.0 | 57.5 | 72%/76% |
創造-情報・社会 | 55.0 | 57.5 | 69%/76% |
引用:スタディサプリ進路
情報・機械・デザイン・化学と幅広い分野を網羅しており、東海地域の理系志望者にとっては非常に魅力的な選択肢です。
京都工芸繊維大学|デザイン・工芸・理系融合の独自色
京都工芸繊維大学(京繊大)は、京都市に位置する国立大学で、工学と芸術を融合させた独自の教育スタイルが魅力です。理工学に加え、デザイン・建築・繊維といった分野を理系的なアプローチで学べる点が、他大学にはない特徴です。
偏差値帯は52.5〜57.5で安定しており、共通テスト得点率も69〜71%と中堅国立大学の中ではやや高めの水準です。特に「情報工学課程」や「デザイン・建築学課程」は人気が高く、センスと理論を両立した学びを求める受験生に支持されています。
京都工芸繊維大学 工芸科学部の偏差値・共通テスト得点率一覧
課程名 | 偏差値 | 共通テスト得点率 |
---|---|---|
情報工学課程 | 57.5 | 71% (337/475) |
電子システム工学課程 | 55.0 | 70% (333/475) |
機械工学課程 | 55.0 | 70% (333/475) |
応用化学課程 | 55.0 | 69% (293/425) |
応用生物学課程 | 52.5 | 69% (293/425) |
デザイン・建築学課程 | 55.0 | 71% (302/425) |
引用:スタディサプリ進路
「理系に興味がありつつ、芸術的な感性も活かしたい」という受験生にとっては、唯一無二の選択肢といえる大学です。学際的な研究やプロジェクトも活発で、クリエイティブな理系人材の育成に力を入れています。
電農名繊の序列と難易度:理科大・金岡千広とも比較

ここからは、電農名繊の中での序列や、東京理科大学・金岡千広との比較を通じて、難易度や立ち位置をより具体的に分析していきます。受験生が大学を選ぶ際の指標として活用できるよう、データと実例を交えて解説します。
電農名繊の序列はどうなっている?一般的な順位と理由
「電農名繊」の序列については、ネット掲示板や進学サイトなどで様々な議論があり、明確な一位を断定するのは難しいのが実情です。代表的な意見として、以下のような順位がよく挙げられています。
見解 | 序列 | 根拠や理由 |
---|---|---|
一般的な偏差値基準 | 電通大 > 名工大 ≧ 農工大 > 京繊大 | 偏差値・共通テスト得点率が電通・名工で高め(共テ上限:電通79%、名工81%) |
首都圏志向の進学者の声 | 電通大 > 農工大 > 名工大 > 京繊大 | 東京の利便性+情報・農学分野の将来性 |
専門性・就職実績重視 | 名工大 ≧ 電通大 > 農工大 > 京繊大 | 中部企業との結びつき・実務系に強い名工大 |
分野別重視(デザイン志望) | 京繊大 > 農工大 > 名工大 > 電通大 | 芸術系・建築志望者には京繊大が唯一無二 |
このように、入試難易度だけでなく、「立地」「専門分野」「志望進路」「進学意識」などが選考に影響しており、単純なランキング化はできません。志望者の目的によって「最適な大学」は異なります。
電農名繊は東京理科大学より難しい?W合格者の進学先は?
東京理科大学は、私立理系大学の中でもトップクラスの評価を受ける大学であり、特に工学部・理工学部は偏差値57.5~62.5(河合塾)と高水準です。一方で、電農名繊の偏差値帯は52.5〜60.0程度と若干低めに見えます。
ただし、入試方式の違いに注目すべきです。東京理科大は私大型の個別試験が中心である一方、電農名繊は共通テスト+2次試験型。「地頭」や「基礎学力」を重視する国立の方が、受験層の学力水準は総じて高い傾向があります。
以下はW合格時の進学傾向です。
対象 | 実際の進学傾向 |
---|---|
電通大・農工大 vs 理科大 | 約8〜9割が電農名繊を選択 (国立志向+学費) |
名工大・京繊大 vs 理科大 | 理科大を選ぶ層も一定数存在 (都市部・知名度重視) |
また、学費面で私立は年間約150万円(初年度)かかるのに対し、国立は約54万円と3倍近く差があり、家庭事情や大学院進学率の高さ(特に電通・農工)も進学判断の大きな要因です。
金岡千広と比べてどう?「電農名繊」は理系で実力派国立
「金岡千広」は、金沢大学・岡山大学・千葉大学・広島大学の4校からなる地方中核国立大学群です。いずれも総合大学で全国的な知名度が高く、偏差値も安定しています。特に千葉大学は、首都圏の国立として非常に人気があり、難易度も高めです。
一方、「電農名繊」は工学・情報・デザインなど理系分野に特化しており、学びの専門性や研究密度の高さが魅力とされています。以下に、両者の工学系偏差値帯と共通テスト得点率をまとめます。
大学群 | 工学系偏差値帯 | 共通テスト得点率(参考) |
---|---|---|
電農名繊 | 52.5〜60.0 | 69〜81% |
金岡千広 | 55.0〜62.5 | 72〜85% |
総合的な難易度や知名度では千葉大学がやや優勢ですが、岡山・金沢・広島大学との比較では、実務志向や分野特化を重視する層に電農名繊が選ばれるケースも多く、理系進学先として根強い人気を誇っています。
なお、それ以外にも電農名繊と比較されがちな大学に関しては、以下の動画で上手くまとめられていましたので掲載しておきます。
就職は良い?電農名繊のキャリアパスと企業評価
電農名繊の4大学は、理系の専門性と研究力を活かした就職に強いとされ、特に情報・通信・製造・インフラ系企業への就職実績が豊富です。推薦制度や企業との共同研究によるコネクションの強さは、国立理系大学の大きな武器。実務に直結する学びが評価され、学部卒でも大手に採用されるケースが目立ちます。
以下は、有名企業400社への就職率(2024年版・最新データ)です。
順位 | 大学名 | 有名企業400社就職率 |
---|---|---|
4位 | 電気通信大学 | 39.5% |
5位 | 名古屋工業大学 | 38.7% |
29位 | 京都工芸繊維大学 | 24.1% |
– | 東京農工大学 | ※不明 (過去には約30%) |
電通大・名工大は、「旧帝大に次ぐ」レベルの就職力を誇っており、特に機械・電気・情報系分野での評価は高水準です。また、各校が首都圏・中京圏・関西圏という就活に有利な立地にあることも、優れたキャリア形成につながっています。
どの大学を選ぶべき?学びたい分野と立地で決める戦略
最終的にどの大学を選ぶべきかは、偏差値や序列だけでなく「何を学びたいか」「どこで暮らしたいか」が大切です。以下に、志望分野ごとにおすすめ大学を整理します。
分野 | おすすめ大学 | 理由 |
---|---|---|
情報・通信 | 電気通信大学 | AI、通信、情報系の専門性が高い |
バイオ・農学 | 東京農工大学 | 応用生物、農学、獣医学が強い |
実務工学 | 名古屋工業大学 | 機械・化学・情報に強く、企業連携が豊富 |
デザイン・工芸 | 京都工芸繊維大学 | 建築、デザイン、繊維分野に特色あり |
また、学費・奨学金・大学院進学率などを総合的に見て決定することが、後悔しない進路選びのコツです。自分に最も合った「学び」を提供してくれる大学を選びましょう。
総括:電農名繊とは?序列や難易度まとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
- 「電農名繊」とは:電気通信大学・東京農工大学・名古屋工業大学・京都工芸繊維大学の4校からなる理系国立大学群。情報・工学・デザインなどに強みがある。
- 各大学の特徴と偏差値・得点率:
- 電通大:情報通信に特化、偏差値52.5〜57.5、共通テスト得点率70〜79%
- 農工大:工学+農学の融合、偏差値52.5〜67.5、得点率71〜88%
- 名工大:実務志向の工学系、偏差値55.0〜60.0、得点率69〜81%
- 京繊大:デザイン・工芸分野に強く、偏差値52.5〜57.5、得点率69〜71%
- 電農名繊の序列:一般的には「電通大 > 名工大 ≧ 農工大 > 京繊大」とされるが、分野や立地により評価が分かれる。
- 東京理科大との比較:偏差値では理科大が上回るが、W合格では8〜9割が電農名繊を選ぶ傾向。国立志向や学費の安さが要因。
- 金岡千広との比較:総合的には金岡千広が上だが、千葉大以外では電農名繊の方が理系専門性で選ばれることも多い。
- 就職実績:電通大(39.5%)、名工大(38.7%)など就職率が高く、実学的な教育と企業との連携が強い。
- 選び方の戦略:学びたい分野や立地に注目。情報系は電通大、農学系は農工大、実務志向は名工大、デザイン系は京繊大がおすすめ。