今日は室町時代に行われた「日明貿易」について塾長が分かりやすく解説していきます。
「日明貿易って何?」
「どんなものが輸入されたの?」
「輸出品は日本の何が人気だったの?」
こんな疑問を持っている人も多いはずです。
実は日明貿易では、日本と中国(明)との間でたくさんの品物がやり取りされ、日本の経済や文化に大きな影響を与えました。
この記事では、輸入品・輸出品を詳しく紹介し、さらに覚え方のコツや日明貿易の歴史までたっぷり解説していきます。
日明貿易の輸入品と輸出品まとめ:貿易品目を一覧

日明貿易は、1404年に室町幕府3代将軍・足利義満が始めた中国(明)との公式な貿易です。
中国との貿易は、それまでの時代にも行われていましたが、明が「勘合符(かんごうふ)」という証明書を持った船にしか貿易を認めなかったため、正式な貿易としてはこの時期から始まりました。
この貿易で日本と中国はどんなものをやり取りしていたのでしょうか?それでは、輸入品と輸出品を詳しく見ていきましょう!
日明貿易の輸入品一覧:日本に持ち込まれた主な品目
日明貿易では、日本は明から多くの品物を輸入しました。特に有名なのが「銅銭」「生糸」「絹織物」「陶磁器」「書籍」です。
- 銅銭(どうせん):日本のお金として流通!
当時の日本では貨幣を作る技術が発達していなかったため、お金のほとんどを中国から輸入していました。代表的なのが「永楽通宝(えいらくつうほう)」という銅銭で、日本国内の市場で広く使われました。 - 生糸(きいと)・絹織物(きぬおりもの):日本の服飾文化を変えた!
中国の絹(シルク)はとても質が良く、貴族や武士の間で人気でした。特に日本では「唐織(からおり)」と呼ばれる美しい織物が好まれ、贈り物としても重宝されました。 - 陶磁器(とうじき):日本の食器文化に影響を与えた!
中国の陶磁器はとても高級で、日本の茶道文化にも大きな影響を与えました。「唐物(からもの)」として扱われ、特に「青磁(せいじ)」や「白磁(はくじ)」が人気でした。 - 書籍(しょせき):日本の学問を支えた!
中国の書物は、日本の文化や学問の発展に貢献しました。特に儒学(じゅがく)の書物は、日本の武士や学者にとって大切な学びの材料となりました。
日明貿易の輸出品一覧:中国に渡った日本の特産品
一方、日本から明へ輸出された主な品目は「刀剣」「銅」「硫黄」「扇」「漆器」です。
- 刀剣(とうけん):日本の武士文化が評価された!
日本の刀は質が高く、戦国時代の明の軍隊にも重宝されました。「日本刀(にほんとう)」は、中国だけでなく朝鮮や東南アジアでも人気がありました。 - 銅(どう):中国の貨幣製造に必要だった!
当時の中国では貨幣の材料として銅が必要でした。日本は銅の産地として知られ、多くの銅を輸出しました。 - 硫黄(いおう):火薬の材料として活用!
硫黄は火薬の材料として欠かせないもので、戦争が多かった時代には特に需要がありました。 - 扇(おうぎ):日本の美術品として人気!
日本の扇は、武士だけでなく貴族の間でも人気があり、中国の貴族や高官にも好まれました。 - 漆器(しっき):日本の工芸技術が評価された!
日本の漆器は美しい装飾が施されており、中国の市場でも高く評価されました。特に蒔絵(まきえ)などの技術が注目されました。
貿易品目の覚え方:語呂合わせで楽々暗記!
貿易品目を一つずつ覚えるのは大変ですが、語呂合わせを使うと簡単に覚えられます!
✅ 輸入品の語呂合わせ:「生きるために 明(みん)から 陶(とう)器と 銭(ぜに)」
➡ 生糸・絹織物・陶磁器・銅銭 を思い出せるようにしましょう!
✅ 輸出品の語呂合わせ:「刀(とう)や 硫(りゅう)黄 どう(銅)しよう?」
➡ 刀剣・硫黄・銅 がすぐに思い出せます!
日明貿易の輸入品と日朝貿易の輸入品の違い
日明貿易では「銅銭・生糸・陶磁器」が主な輸入品でしたが、日朝貿易(朝鮮との貿易)では「木綿(もめん)」や「仏教経典(ぶっきょうきょうてん)」が多く輸入されました。
なぜ違うのかというと、日本の中で何が必要だったかが違うから です。日明貿易では貨幣や高級品が求められましたが、日朝貿易では生活に必要な木綿や宗教関連のものが重視されていました。
日明貿易の輸入品・輸出品の影響
日明貿易によって、日本の経済や文化は大きく変化しました。貿易によってもたらされた品物が、日本の社会にどのような影響を与えたのかを詳しく見ていきましょう。
① 貨幣経済の発展
日明貿易を通じて大量の銅銭(特に「永楽通宝」)が日本に流入し、貨幣経済が発展しました。それまでの日本では物々交換が主流でしたが、銅銭の普及により、商業がより活発になりました。
しかし、大量に流入した明銭に粗悪な銭(私鋳銭)が混ざり、取引が混乱することもありました。そこで幕府や大名は「撰銭令(えりぜにれい)」を発令し、悪質な貨幣の流通を防ごうとしました。
② 武士の生活と文化の変化
輸出品の中で特に人気だったのが日本刀です。日本の刀剣技術が高く評価され、明の軍隊でも使用されるほどでした。この影響で、日本国内でも武士の間で刀剣文化がさらに発展しました。
また、輸入された絹織物や陶磁器は、武士や貴族の間で人気を集め、室町時代の贅沢な文化の発展にもつながりました。
③ 茶道や美術品の発展
中国から輸入された陶磁器(青磁・白磁)は、茶道の発展に大きな影響を与えました。中国製の茶碗や茶器が「唐物(からもの)」として珍重され、日本の茶の湯文化が一層洗練されたのです。
また、書籍の輸入により、中国の学問や思想がさらに広まり、日本の文化や教育にも影響を与えました。
日明貿易の輸入品・輸出品の後に:いつ誰が始めた?

日明貿易は、室町幕府3代将軍・足利義満によって始められましたが、その後、いくつかの変遷を経て最終的に廃止されました。ここでは、日明貿易がどのように始まり、どのように終わったのかを解説します。
勘合貿易とは:貿易の仕組みをわかりやすく解説!
日明貿易は、「勘合(かんごう)」という証明書を使った貿易 だったため、「勘合貿易」とも呼ばれます。
勘合とは?
勘合は、一種の割符(証明書)で、中国(明)から交付され、日本の遣明船(貿易船)が正式な貿易許可を得た証拠となるものでした。
貿易をする際、日本側が持っている勘合符と、明の役人が管理する台帳の符号を照合し、本物であることを確認してから取引が行われました。これは、当時問題となっていた「倭寇(わこう)」と呼ばれる海賊の活動を防ぐための仕組みでした。
日明貿易の始まり:足利義満が貿易を開始した理由
日明貿易が始まったのは1404年、室町幕府3代将軍足利義満(あしかがよしみつ)の時代です。
この貿易が始まった背景には、いくつかの理由があります。
- 倭寇(わこう)の取締り要請
当時、中国(明)は日本人を中心とした海賊「倭寇」に悩まされていました。明は日本に対し、「倭寇を取り締まる代わりに貿易を認める」と提案しました。 - 日本経済の発展
貿易を行うことで、幕府は莫大な利益を得ることができました。特に、中国の貨幣(銅銭)は日本国内での流通に必要不可欠だったため、幕府は日明貿易を積極的に推進しました。 - 明の外交政策(冊封体制)
明は、自国を「世界の中心」と考え、周辺国に朝貢(ちょうこう)させる形で貿易を行っていました。そのため、日本も明に対して形式上「日本国王」として朝貢することで貿易が認められました。
日明貿易の中断と再開:なぜ途中で止まったのか?
日明貿易は、最初は順調に行われていましたが、1411年に4代将軍・足利義持(あしかがよしもち)が貿易を中断します。
理由は「屈辱的な朝貢関係」
明の冊封体制では、日本の将軍を「日本国王」として扱い、中国の皇帝に対して臣下のような立場を取る必要がありました。これを「屈辱的だ!」と感じた義持は、日明貿易を停止してしまったのです。
しかし、その後、6代将軍足利義教(あしかがよしのり)の時代に日明貿易は再開されました。
日明貿易の終焉:寧波の乱とは?なぜ貿易が終わった?
1523年(大永3年)、日明貿易の主導権をめぐり「寧波の乱(ねいはのらん)」が発生しました。
この事件では、日本の大名である「大内氏」と「細川氏」が、それぞれ別々の遣明船を派遣し、貿易の独占権をめぐって対立しました。
事件の経緯
- 先に明へ到着した大内氏の船が、正式な貿易を行うために手続きをしていた。
- 後から来た細川氏の船が賄賂を使い、先に貿易の許可を得ようとした。
- これに激怒した大内氏が、細川氏の船を襲撃し、中国の役人までも巻き込んで暴動に発展。
この事件によって、明は日本との貿易を制限するようになり、最終的に1551年に日明貿易は完全に終わりました。
総括:日明貿易の輸入品・輸出品一覧表まとめ
最後に、日明貿易の輸入品・輸出品を表形式でまとめて残しておきます。
| 分類 | 品目 | 説明 |
|---|---|---|
| 輸入品 | 明銭(銅銭) | 永楽通宝・洪武通宝・宣徳通宝など、日本の貨幣経済に影響を与えた。 |
| 生糸・絹織物 | 衣服や織物に使用され、日本の文化に大きく影響した。 | |
| 陶磁器 | 明の高品質な陶磁器が輸入され、茶道の発展に貢献した。 | |
| 書籍・美術品 | 漢籍などの書物が日本に伝わり、学問や文化の発展を促した。 | |
| 香料 | 貴族や武士の間で愛用され、香道の発展に寄与した。 | |
| 輸出品 | 刀剣・槍 | 日本の優れた武器が明へ輸出され、高値で取引された。 |
| 銅 | 貨幣や工芸品の材料として需要が高かった。 | |
| 硫黄 | 火薬の原料として重宝され、軍事用にも活用された。 | |
| 漆器 | 日本独自の美しい漆器が明で人気を博した。 | |
| 扇 | 日本の工芸品の一つで、明で愛用された。 |
