今日は「ノルマントン号事件」で話題になった「船長のセリフ」について、塾長が分かりやすく説明していきますよ。

「助けを求めていた日本人に、船長が“金を出せ”って言ったって本当?」という声をよく聞きます。実はこのセリフ、ただの噂ではなく、とても有名な風刺画に登場するものなんです。

でも、実際に言ったのかどうかはちょっと複雑。

この記事では、そのセリフの意味、背景、なぜそんなことが言われるようになったのか、そして船長がどんな罪で裁かれたのかもまるごと解説します!

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ノルマントン号事件の船長のセリフとは?背景と真意

ノルマントン号事件は、明治時代に日本人乗客が命を落とした悲劇的な海難事故であり、その後の裁判と風刺画で大きな話題となりました。

特に船長のセリフ「いま何ドル持っているか。早く言え。タイム・イズ・マネーだ」は、当時の国際感情や人種差別を象徴する言葉として深く掘り下げるべきです。

ここでは、そのセリフの意味や背景を詳しく解説していきます。

いま何ドル持っているか。早く言え。タイム・イズ・マネーだ

ノルマントン号事件の「船長のセリフ」として有名なのが、「いま何ドル持っているか。早く言え。タイム・イズ・マネーだ」というものです。これは、1887年に描かれたジョルジュ・ビゴーの風刺画に書かれたセリフです。

原文はフランス語と英語でこう書かれています。

“Combien avez vous de dollars sur vous? — Dites vite — Times is money.”

意味は「持っているドルはいくらだ? 早く言え、時は金なりだ!」となります。

この風刺画には、沈みかけた船と、救命ボートに乗った西洋人が描かれています。その西洋人こそ、ノルマントン号の船長ドレークを皮肉った人物です。

当時、なぜ「ドル」だったのか疑問に思う人もいるかもしれませんね。イギリスは「ポンド」の国ですが、このセリフで「ドル」が使われたのは、アメリカの影響力が強まり、ドルが国際的な通貨として使われ始めていたからといわれています。

また、ビゴーがイギリス嫌いだったことも理由の一つでしょう。

このセリフは風刺画の演出であり、実際に言った証拠はない

では、この「金を出せ」というセリフは、ドレーク船長が本当に言ったのでしょうか?

結論から言うと、その証拠はありません。このセリフは、風刺画の中で描かれた“演出”にすぎません。つまり、実際に船長がそう言ったという記録や証言は残っていないのです。

当時、日本人乗客が全員死亡し、西洋人の乗組員だけが助かったことに、多くの日本人が怒りました。その怒りの中で、「船長は金を要求した」というような話が出回り、それが風刺画という形で表現されたのです。

風刺画は、世の中を批判したり風刺したりするための絵なので、必ずしも事実とは限りません。でも、その絵に込められた「当時の人々の怒り」はとてもリアルだったのです。

ビゴーの風刺画の背景と、なぜこのセリフが描かれたのかを解説

このセリフが描かれた風刺画は、フランス人の画家ジョルジュ・ビゴーによる作品です。彼は、明治時代の日本に住みながら、日本と西洋の関係を批判する絵を多く描きました。

この「いま何ドル持っているか」というセリフが入った風刺画は、正確には「ノルマントン号」ではなく、翌年の「メンザレ号遭難事件」に対する作品です。でも、ビゴーはその中にノルマントン号の事件を重ね合わせ、「イギリス人は日本人を見捨てる冷たい連中だ」と強烈なメッセージを込めました。

実はビゴー自身は、不平等条約の「改正」に反対する立場でした。条約が改正されると、外国人に与えられていた特権がなくなるからです。つまり、ビゴーは「イギリスがヘマをするから、日本が条約改正に乗り出すじゃないか」と皮肉を込めたのです。

だからこのセリフには、イギリスに対する批判と、自国の利益を守りたいというビゴー自身の立場が表れているんですね。

「セリフ」が象徴する当時の国際感情と人種差別

このセリフが話題になった背景には、当時の「人種差別」の問題があります。

ノルマントン号事件では、イギリス人やドイツ人などの白人船員は助かったのに、日本人や中国人、インド人などのアジア人乗客は誰一人助かりませんでした。しかも、船長たちは「英語が通じなかったから助けられなかった」と主張しました。

でも、本当にそうでしょうか?言葉が通じなくても、沈む船の中で「助けよう」とする行動はあったはず。アジア人だからこそ、真っ先に見捨てられたのでは?という疑いが、多くの人の心に残ったのです。

つまり、「いま何ドル持っているか?」というセリフは、「お金のないアジア人は助けない」という、当時の西洋人が持っていた差別意識を表しているのです。風刺画のセリフは、ただの冗談ではなく、国際社会の冷たさや不平等を訴えるものだったのです。

船長のセリフに関する覚え方と風刺画の意義

ノルマントン号事件は、中学や高校のテストでもよく出てくるテーマです。特に、次のポイントはしっかり押さえておきましょう!

  • セリフは実際に言ったものではなく、風刺画の中の表現
  • 風刺画を描いたのはフランス人ジョルジュ・ビゴー
  • 風刺画のタイトルは「メンザレ号の救助」
  • 「タイム・イズ・マネー」は当時の資本主義や人種差別を批判
  • 事件は不平等条約撤廃運動のきっかけとなった

風刺画は、単なる絵ではなく、「社会を変えよう」という強いメッセージを持った作品です。この事件とセリフは、日本が主権を取り戻すための第一歩となった歴史的な出来事だったのです。

ノルマントン号事件の船長のセリフの後に:ドレークとは?罪状と判決

ここからは、ノルマントン号事件の中心人物である「船長」ジョン・ウィリアム・ドレークについて詳しく見ていきましょう。彼がどんな人物で、どんな裁判を受け、なぜ軽い刑で済んだのか。

そして、日本人がどれほど怒りを感じたのかも、一緒に学んでいきますよ。

ノルマントン号の船長の名前はジョン・ウィリアム・ドレーク

ノルマントン号の船長の名前は、「ジョン・ウィリアム・ドレーク」といいます。国籍はイギリス。貨物船ノルマントン号の責任者として、1886年10月24日に横浜から神戸へ向かう航海の指揮をとっていました。

ところが、紀伊半島沖で暴風雨にあい、船は座礁して沈没。乗っていた日本人乗客25人は全員が死亡しましたが、ドレーク船長をはじめとする外国人乗組員26人は、救命ボートで脱出して無事でした。

この時点で、日本中は「なぜ日本人だけが助からなかったのか?」という疑問でいっぱいになります。船長の責任が問われるのは、当然の流れだったのです。

船長の罪状は「殺人罪」ではなく「過失」として扱われた

事件後、日本の外務大臣・井上馨はドレーク船長の行動に強い疑いを持ち、「これは人種差別ではないか?」と考えました。そして、船長に対して「殺人罪」で告訴するよう命じました。

しかし、当時の日本はまだ「不平等条約」に縛られていて、外国人を日本の法律で裁くことができませんでした。そこで、イギリスの「領事裁判所」で裁判が行われることになったのです。

その結果、ドレーク船長の罪は「殺人」ではなく、「過失(うっかりミス)」とされてしまいました。彼の主張は、「日本人に逃げるように言ったが、英語が通じなかったから仕方なかった」というものでした。

このように、重い罪には問われず、最初はなんと「無罪」だったのです。

最初は無罪→のちに禁錮3ヶ月へと変わった裁判の流れ

ノルマントン号事件の裁判は、最初に神戸のイギリス領事裁判所で行われました。ここでは、ドレーク船長は完全に無罪という判決が出され、日本中が大騒ぎになります。

そこで、日本政府は「それでは納得できない」として、もう一度横浜の領事裁判所で裁判をするよう働きかけました。これが当時としては異例の対応で、それだけ世論の怒りが強かったことを示しています。

結果として、横浜での裁判ではドレーク船長に「禁錮3ヶ月」という軽い有罪判決が下されました。つまり、「悪かったけど、そこまで重い罪じゃないよ」という判断だったのです。

でも、日本人の命25人分がこの程度の扱いでいいのか?という声は当然多くあがりました。

なぜこんな軽い判決だったのか?背景にある不平等条約の闇

では、なぜこのように軽い判決で終わってしまったのでしょうか?その理由の一つは、不平等条約による「領事裁判権」です。領事裁判権とは、外国人が日本で罪を犯しても、その国の領事が自国の法律で裁けるという制度のことです。つまり、日本の法律が届かないのです。

これは、江戸時代末期に結ばれた「安政の五カ国条約」によるもので、日本がまだ法治国家として未発達だった時代に仕方なく認めたものでした。

でも、明治になって法律も整い、日本も近代国家になってきたにもかかわらず、この古い条約が残っていたために、今回の事件でも不公正な判決が行われてしまったのです。

この「たった禁錮3ヶ月」の判決が、日本国民の怒りに火をつけたのは当然といえるでしょう。

ドレーク船長に対する日本人の怒りと世論の高まり

ノルマントン号事件が報じられると、日本中が怒りの声であふれました。新聞は連日、事件の経緯や裁判の不当性を報道し、各地で抗議の声が上がりました。特に有名なのが『東京日日新聞』の社説で、「日本人はバカじゃない!沈没しそうな状況で助けられないわけがない」と強く批判しました。

また、「ノルマントン号沈没の歌」という歌まで作られ、船長を「奴隷鬼(どれいおに)」と呼んで非難するなど、人々の怒りが文化の中にも表れました。

義援金も全国から集まり、被害者の遺族に届けられました。さらに、この事件は日本の外交政策にも大きな影響を与え、条約改正運動が一気に加速することになります。

つまり、ドレーク船長の軽すぎる処罰が、日本人の「国としてのプライド」を大きく揺さぶったのです。

総括:ノルマントン号事件の船長のセリフまとめ

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

  • セリフ「いま何ドル持っているか。早く言え。タイム・イズ・マネーだ」は、風刺画に描かれた演出で、実際に船長が言った証拠はない
  • セリフはジョルジュ・ビゴーの風刺画「メンザレ号の救助」に登場。イギリス批判と条約改正反対の立場を込めたもの
  • このセリフは、アジア人差別や当時の西洋人の人種意識を象徴した表現として注目されている
  • 事件で日本人乗客25人が全員死亡。船長ら西洋人乗組員は助かり、不平等な救助対応に批判が集中
  • 船長の名前はジョン・ウィリアム・ドレーク。裁判では最初無罪、その後禁錮3ヶ月の軽い刑
  • 「領事裁判権」により日本の法律では裁けなかったことが、軽い判決の背景にある
  • 日本中で大きな怒りが広がり、新聞・歌・義援金などで世論が高まり、条約改正運動が加速
  • この事件とセリフは、日本が近代国家へと進むきっかけとなった歴史的事件