実は最近立て続けに、誰でも名前を聞いたことがある大手塾からの転塾がありました。
学年的には中2や中3で、大手塾の集団指導形式での塾通いで、レベルとしては真ん中より少し上か、もうちょい上って感じのレベル感の子達です。テストの点数的には、350点〜400点ぐらいを行ったり来たりする感じの子です。
そして、この子達があえて自塾のような個人塾に移ってきたのには共通する理由がありました。
それは、「大手集団塾が合わない」というもの。
なおこれは、大手集団塾をディスる記事ではありません。そもそも大手はシステムがしっかりしているし、設備面なども踏まえて自塾にはないものを持っていることも理解しています。その分コストは高いけど、お金を気にしない人からすれば大手の方に魅力を感じられる人の気持ちも分かります。
しかし、それでもなお、金銭面以外で自塾のような個人塾に転塾するニーズが確かにあるのです。
その層の特徴は、「平均よりも少し上か、もうちょい上ぐらいの生徒」です。では、なぜこの辺りの層が大手を辞め、自塾のような個人塾に移ってくるのでしょうか?
大手塾の集団コースの弱点:真ん中よりちょい上の子に合わない
大手塾の多くは、学力に応じて集団授業のクラス分けをすることが多いです。そして、大体は「Aコース」「Bコース」的な感じで、2つに分かれていることが多いです。
本当はもう少し細分化して3つぐらいに分けるべきなのですが、昨今の少子化の影響は大手でも避けられず、そこまで分けると採算が合わなくなるので、大体は2つに分けることが多いです。
しかし、このクラス分けで割を食うのが「真ん中よりも少し上か、もうちょい上の生徒(レベル的には葺合ぐらい)」です。
なぜなら、この層はAコースにもBコースにも絶妙にハマらないからです。
そもそもAコースは、それなりに難関高を目指すようなコースです。神戸高校とか兵庫高校とか、その辺りを狙う子に相応しい授業やカリキュラムで動きます。この層は塾の合格実績を担保してくれる最も優良顧客で、最も手厚くされます。
一方Bコースは、中堅校ぐらいの学力の子や、もしくは中堅校にチャレンジ(=つまり現時点ではその学力がない子)のためにあります。だから、Aコースに比べて明らかに生徒の質が下がります。
さあ、こうなった時、真ん中よりも少し上、あるいはちょい上ぐらいの生徒に本当の意味で居場所はあるでしょうか?
まず、この子達にとってAコースは少し難しいです。塾を1回休むだけでついていけなくなるなんてことはよく聞きます。授業の進捗も結構早く、地頭がよく、課題も卒なくこなす子でないと、かなりハードな塾通いになっているイメージです。
だから、最初にAコースで入っても、厳しくなってBコースに下げて欲しいと塾に懇願するご家庭も多い。でも、いざBコースに下げるとそれはそれで合わないのです。
理由は、Bコースのレベルが思っているよりも低すぎるからです。
昨今の学力分布:圧倒的な「二極化」傾向
正直、昨今の学力帯というのは、極端な話「二極化」です。
勉強に関しては「できる子かできない子か」に概ねに分割されており、日本人が大好きな「普通」みたいな子が極端に減っています。昔に比べて思考問題が増え、甘やかす教育のせいで中間で維持出来ていた子が下に落ちた結果、真ん中の層がすっぽり抜けました。
こうなった時、基本的に勉強ができる子はAコースに入れられ、勉強ができない子がBコースに回されます。
だけど、Aコースに入れられる生徒の中にもやはりランクがあり、最上位の神戸高校レベルに行ける子に比べ、御影や葺合止まりの子は正直地頭面もワンランク劣りまいます。だから、Aコースの中では落ちこぼれてしまいます。
でも、Bコースになると、極端に勉強ができない子の集まりになるので、それはそれでミスマッチになります。真っ当な人間を動物園に放り込むことに等しいとすら思います。
だから、学力で見て真ん中より少し上かもうちょい上の子は、大手塾のどのコースにもハマらないことが多いです。
結局この子達は、学力二極化時代の中に、ある意味では取り残された「真ん中の子たち」なのです。点数的には330点〜400点ぐらいで、通知表には4が多く並ぶが、5がたくさんつくわけでもない子です。人によっては、3と4が半々って子もこの属性にいることが多いです。
このタイプが、どうしても大手の集団コースにミスマッチしてしまうのです。
真ん中よりちょい上の子ほど自塾のようなシステムにハマりやすい
正直なところ、手前味噌ですが、真ん中よりちょい上、もしくは最上位層とは言えないけどそこそこ賢い子というのは、大手よりも自塾の方がシステムとしてはハマりやすいです。
まず大前提、この層は賢いは賢いですが、大手塾の最上位のコースの授業ペースにスイスイついていくような子は少ないです。何なら、背伸びして、なんとかして食らいついている子が多いです。
でも、それだと伸びずらいです。
このぐらいの層は、基礎基本に忠実な授業で導入を受け、もっともっと標準レベルを反復させる方が合っています。そして、その方が点数アップにも直結しやすいです。
だから、毎回のように先生がコロコロ変わる集団塾との相性が良くなく、優秀な人に見続けてもらい、ある程度は近い距離感で指導してもらった方がいいです。しかしかと言って、個別指導にして1対1にしなければいけないレベルでもないので、コスパの観点からも個別は合わないです。
そこで自塾のような「小人数指導」が仕組み的にも金銭的にもハマりやすいのです。1クラス8名までぐらいなら、塾長クラスで全教科指導できる人が近い距離で見てあげる指導が実現します。数学であれば手元の計算まで見てあげられます。
だから、個別と集団のちょうどいいところどりができるという点でマッチします。
しかし、これが下位50%以下の生徒となると、極端に機能しなくなります。この層は理解力が極端に乏しいため、本当に1対1にしないと何ともならないケースが多く、自主性も乏しいので少人数とは言え、少し目を離すだけで崩壊します。
だけど、真ん中より少し上以上であればその心配はなく、大手塾よりも手厚く、個別指導よりも割安な指導を受けられるわけです。これは、下位50%とは違う子の特権でもあるのです。
また、中間以上の子の伸びに必要なのは、そもそも論として授業ではなく「演習」です。この子達が次にもう一歩ブレイクスルーがあるとすれば、大手塾に通うことではなく「問題演習に使う時間を増やすこと」です。
勉強というのは、一定の知能があって、自分なりにそこそこ理解できる子に関して言えば、自主学習が最も成績アップに与えるインパクトが大きいのは周知の事実。
大手塾の授業の価値は、いかにしてその自習に円滑に繋げてあげるかということでしかありません。分かりやすく授業して、最初の単元の導入を円滑にしてあげるとかです。
ただ、大手だとその後の演習時間が子供任せになったり、大量の課題攻めで子供に丸投げってケースが多すぎる。これだと、本当に最上位の子しか伸びません。でも、大手塾はそれで実績が稼げればいいので、それはそれで理にかなってしまっています。だから、真ん中よりちょい上の子の満足度がそこまで高くないのが大手塾の特徴でもあります。
しかし、自塾の場合は、その演習タームに力を入れています。
そもそも週3通塾の中で、3時間は演習時間を作って、黙々と問題演習をさせています。他塾が宿題として子供任せにしているものを、塾の中でやらせるスタイルです。
その上、定期テスト前になると、約2週間程度は毎日通塾させ、学校のワークやプリントなどを塾内で全部再試します。この瞬間に、まずはワークを覚えるための自習時間を強制的に確保させ、もう一度ワークを解かせる段階でも問題演習の時間を確保。さらに、余裕がある子は、塾のワークで別角度で問題に触れさせます。
正直、元々の地頭(※半分よりは上を前提)に依存しますが、このオペレーションであれば勤勉性の有無でブレますが、330点〜430点ぐらいのレンジに収まることが非常に多くなります。
なお、このオペレーションにハメても、というかハマらない子というのは、元々の地頭レンジが学年の中でも下半分にいて、勉強適性が極めて低い子である可能性が高いです。
この子達は、元々の語彙力などが弱すぎて、自主学習で自分でテキストを読み進め、理解しながら暗記するという王道の勉強法が通用しません。知能がそもそも弱く、日常生活でも頭を使わずに生きていることが多いです。自習中だけ器用に思考するなど都合のいいことはできません。だから、自習時間を確保しても、極めて質の低い時間が流れます。これが頭が良くない人の特徴であり、正直なところ遺伝要因の問題が大きく、方法論だけではそう簡単に改善しません。
生き方そのものをガラッと変えさせる必要がありますが、その土台にあるのは脳構造という変えようのないものの影響も大きいからです。
「うちの子は勉強しているんですが伸びません…」という子の大半は、中身の伴っていない勉強をしているのですが、中身を伴わせるためには最低限の素質が必要です。そして、その素質を欠くと勉強時間を増やしても成績が上がりずらいです。でも、それがその子の能力でもあるので、こうなったらもう現実を受け入れるしかありません。
これが、半分以下の学力レンジの子に自習させても効果が出ずらい理由です。
なおこの層は、偏差値53の六アイすらも届かない子である可能性が高く、そもそも論として、塾通いの恩恵が極めて受けづらい子であるケースが大半です。
この子達は、公立受験をするとしても六アイ以上に合格できる可能性が極めて低く、公立にこだわるなら東灘か専門学科の高校しかなく、それが嫌なら名前さえ書けば受かる私立専願になるだけのこと。だから、塾通いの価値が急速に薄れてしまいます。
ちなみに、この層は自塾の対象外であり、お問合せをいただいてもお断りしています。塾としてはお金をいただいても、満足いただける見込みが極端に低いと考えざるを得ず、事前にその旨をお伝えしています。
基本的には、下位50%以下の塾通いは以下の記事で書いたようなフローで選ぶしかないと思います。余計なお世話であることを大前提の上、興味がある方はお読みください。
さて、話が大きく脱線してしまいましたが、真ん中よりも上以上にいる子は、上で話したような障壁が極めて少ないです。だから、シンプルに勉強時間の長い塾に入れ、出来るだけ演習している時間を増やす方向で塾選びを考えた方が理にかなってるという話です。
総括:大手塾に合わない子の特徴まとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
- 大手塾から中2・中3で転塾してくるのは「真ん中より少し上」の層(350〜400点前後)が多い。
- 大手塾はA(難関校向け)とB(中堅校向け)の2クラスが基本で、この層はどちらにも合わずミスマッチになりやすい。
- Aコース:授業ペースが速く、神戸高レベル向けで背伸びしてもついていけず落ちこぼれやすい。
- Bコース:レベルが低すぎ、平均以上の子にとって刺激がなく不満になりやすい。
- 学力分布は「二極化」しており、昔のような“普通”層が減っているため、真ん中層が取り残されやすい。
- この層(葺合・御影レベル)は、大手よりも個人塾の少人数指導や演習重視のシステムに適している。
- 特に自習や演習の時間確保が重要で、大手は課題丸投げになりやすいのに対し、小規模塾では塾内で演習を徹底できる。
- 真ん中以上の層は個別指導1対1よりも小人数指導の方がコスパ・効果ともに高い。
- 一方、下位50%以下は理解力・自主性に乏しく、少人数指導では機能せず1対1が必要。結果的に塾通いの効果は限定的。
- 真ん中以上の層にとっての伸びの鍵は「演習量の確保」であり、大手の授業よりも自習サイクルを整える環境が重要。
