兵庫県第一学区の場合、神戸高校と御影高校の下のレンジに位置するのが「葺合・県芦・六アイ(須磨翔風)」です。いわゆる中堅校(※葺合はギリ上位校)に分類される高校ですね。
これらの高校は、偏差値的には「葺合>県芦>六アイ(須磨翔風)」です。おそらく今後もこの序列はしばらく変わらないかな?という感じです。
しかし、自分が現場で指導している限り、この4校を受験して合格していく生徒に偏差値の差ほど能力に差があるとは全く思えません。体感的には、これらの生徒の能力はほぼ互角です。
あえて差をつけるとすれば、葺合に上位で受かる生徒と、六アイ(須磨翔風)に内申点が高いから合格できた生徒に知能差を感じるぐらいです。そのぐらい第一学区の中堅校を受験する生徒に能力さなどありません。
しかし、偏差値的にはレベルが違うわけで、六アイに行く子もいれば、葺合まで行ける子がいるのが受験です。そうなると、能力差がほとんどないのであれば、何が進学先を分けるのでしょうか?
今回は、六アイ・県芦・葺合に進学する生徒の違いについて解説します。
六アイ・県芦・葺合に受かる生徒に理解力の差はほぼない
六アイ・県芦・葺合に最終的に合格する子というのは、根本的に子供の学力に大した差はありません。特に「理解力」という観点から観測しても、自分の感触的にはほとんど能力差を感じません。
理解力の差というのは、塾の中で新単元を解説した際に露骨に現れるものです。要するに、初めての範囲を説明された時に、一回の説明でどの程度理解することが出来るかって話です。当然ですが、IQ(地頭)とも相関関係があるでしょう。
では、六アイ・県芦・葺合ぐらいの子はどうか?という話ですが、中学レベルの導入解説であれば、どの子も普通に解説してあげればおおよそ理解します。この時点では、何も差がないです。
ただ、解説した後に実際に問題演習をさせるのですが、そこで少しだけ差が出ます。問題を解く時のスピード感や、基礎から少しレベルが上がる問題への接続のスムーズさみたいな部分に若干の差があります。もちろん、教科単元によってその差は異なりますし、その子の得意不得意にも左右されます。
しかし言いたいことは、最初の「導入解説→演習」という学習のファーストストップの段階においては、この層は恐ろしいぐらい差がないってことです。みんないい意味でも悪い意味でも同じレベルにいます。
この層は、10を教えたら感覚的に7〜8ぐらいはその場で理解し、そしてある程度は演習問題を解き切る力を持っています。だから、集団指導などでも支障が出ません。
なお、これが御影に受かる感じの子だと、10教えれば10理解するイメージです。さらに上位校に行く子だと、10教えれば12理解しています。まだ教えていない派生問題も最初の導入知識を使って勝手に解く感じです。これは完全に地頭の差で、努力ではなく遺伝による能力格差です。
なお、六アイに行けないレベル(学年の下位50%以下)になってくると、理解力が露骨に下がるのが特徴です。10教えても5以下しか理解できない事が多発し、演習をさせても無茶苦茶やってきます。そして、5以下の理解を翌日には0にしてしまうのも特徴です。
例えがよくないですが、「穴の空いたバケツに無限に水を注ぎ続ける」という操作が求められ、常に水を出しっぱにしないとこの層は学力最低ラインに維持することも困難になります。ハッキリ言えば、勉強の世界で成果を出すのはキツイです。
でも、六アイ以上に受かる子でこういうことは決してないです。
理解力ではなく「勤勉性」で差がついているだけ
地頭的に一軍にいる生徒は、10を教えたら10〜12理解してしまいます。だからもうこの時点で、どうミスっても中学では失敗しません。
あとは学校ワークなどの演習問題を試験までに反復させ、テスト直前に塾ワークなどで別問題を使って演習させれば、普通の定期テストであれば400点オーバーが見込めます。だから、順当に行けば御影高校や神戸高校が見えます。
しかし、六アイ〜葺合ぐらいのレベルの子だと、10教えて7〜8しか理解していません。だから、「残りの2〜3をどれだけ埋めることができたか?」というのがこの層のテストの得点差を分けることになります。
ただ、ここまで来ると地頭の差とかそんなものはどうでも良くなります。求められる能力は知能面ではなく「勤勉性」です。計算の反復練習をコツコツしたり、英単語の暗記をストイックにこなしたり、学校のワークをコツコツ進めたり…などです。
こういう地道な勉強が残り2〜3を埋める操作に直結します。
特に計算なんてその象徴で、上位層は塾で説明した瞬間に高速で計算問題を解き切る子がいますが、中間層はそんな感じじゃないです。出来るんだけど、遅かったり正答率が悪かったりするのが実情で、そこから先は訓練の量でしか成長はないです。
ここでコツコツ出来ずに、課題などをサボったりする系の子は点数が伸び悩みます。本当は葺合レベルまで持っていけるのに、サボりが原因で六アイレベルまで下がるということです。
しかし、勤勉性というのは非常に厄介で、一説によれば半分以上は遺伝で決まると言われています。以下は、慶應大学の安藤教授が形質ごとに、遺伝と環境がどの程度の割合で影響しているのかを調べた結果表ですが、勤勉性は半分は遺伝で決まってしまうことが分かります。

だから、コツコツ出来るかというのは一つの才能のようなもので、後から伸ばすのが基本的には難しいものであることが分かります。仮に塾などに詰め込んで猛勉強させても、本質的にグダグダするタイプの子は塾の監視がなくなれば、いつもの不真面目な自分に戻りますからね。
実際子供を預かっていても、真面目にコツコツやるタイプの子と、不真面目でいつも期限ギリギリでしかやらない子は見事に二極化します。前者は真面目にやるように注意する必要もなく、後者は注意したとて改善などしません。
こういう性根の部分は概ね遺伝要因の影響の方が大きく、環境要因で何とかできるものではありません。まして週に数回数時間程度の学習塾の環境など微々たる影響しか与えないことは安易に想像できるはずです。
そういう意味では、「コツコツ勉強する力を身につけさせてくれる塾を探しています!」的なニーズは無茶振りってことです。そこに期待があると、塾としては身構えます。塾ができるサービスの範囲の中で効果を及ぼせない領域に対する期待をされてしまっているからです。
だから、親の目から見て「この子明らかに勤勉性が欠けているんだよね…」と思われる場合は、どこかで勉強の期待値の上限を受け入れておくしかありません。勉強の期待値は地頭と勤勉性の組み合わせで決まりますが、第一学区の場合はおおよそ以下の通りです。
六アイ・県芦・葺合を分ける決定的な差は内申点
理解力に大差がないこのレイヤーの生徒は、ペーパーテストの点数においては「勤勉性」が最も大きく差を分ける変数になり得ます。
そして、勤勉性の大小で決まるもう1つの要素が「内申点」です。
兵庫県の場合、内申点の比重が他県に比べて大きすぎて、本番のペーパーテストはぶっちゃけお飾りで、ほぼほぼ内申点の差が志望校決定の差になります。兵庫受験は完全に内申ゲーなのです。
こうなると、学力レベルは同じでも、内申点が高い子が受験では有利で、内申点が低い子は受験では不利になります。いや、不利どころか致命傷になります。
六アイ〜葺合ぐらいの中堅層の生徒を何人も見てきましたが、この層は自塾の定期テスト対策にハメれば、おおよそ同じような点数帯に収まります。感覚的には330点〜390点ぐらいです。
しかし、仮に同じようにして350点を取らせたとしても、内申点は全く別物で返ってくることなど何も珍しくありません。テスト350点ぐらいでオール4で返ってくる生徒もいれば、ほとんど3で返ってくる子もいます。
この内申差はそのまま志望校決定に影響し、「前者は葺合、後者は六アイですら危ない」と言った事態になります。
もちろん、点数が同じなのに内申点に差がつくのは、学校の先生からの印象が違うからです。やはりコツコツ真面目にやるタイプは内申点が高く、雑でいい加減でコツコツやらない子の評価は非常に低いです。だから、せっかく点数を取っても公立高校では上位校には行けません。
特に副教科内申点の比重が多い兵庫県においては、勤勉性が低い子は致命的です。決まって低い内申を取る傾向にあり、主教科の点数を上げても結局副教科の内申に足を引っ張られ、志望校のランクを下げるしかなくなるからです。
結局、六アイ〜葺合ランクの生徒の学力差や知能差などほぼなく、このレンジまでくると「勤勉性と相関関係が強すぎる内申点」でしか差がつかないといった現象が起こります。
最終的に受験対策で兵庫県の過去問を解かせますが、六アイ志望も葺合志望もまあ似たような点数で落ち着きます。だから内申点でしか差がつかないという話に決着します。
総括:六アイ・県芦・葺合の3校の学力差まとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
- 学力(理解力)差はほぼ存在しない
- 六アイ・県芦・葺合に受かる生徒の「理解力」にはほとんど差がない。
- いずれも中学の授業内容を普通に理解できるレベルにある。
- 違いが出るとすれば、問題を解くスピードや応用問題への対応力。
- 明確な差は「勤勉性」
- 差が出るのは、どれだけコツコツと勉強に取り組めるかという「勤勉性」。
- 勤勉性によって、理解しきれなかった2〜3割を補えるかが決まる。
- 勤勉性も遺伝の影響が大きく、後から大きく変えるのは難しい。
- 内申点が進学先を決めるカギ
- 兵庫県の公立高校入試では内申点の比重が非常に高い。
- 同じテスト点数でも、真面目に提出物や授業態度を頑張る子は内申点が高くなる。
- 内申点の差が、実質的に「葺合」「県芦」「六アイ」の進学先を分けている。
- 副教科の内申点が特に影響大
- 特に副教科(音楽・美術・技術家庭・保健体育)は内申比重が高いため、ここをおろそかにすると致命的。
- 勤勉性が低い子は副教科の内申点が伸びず、全体の評価も下がる。
- 塾で差を埋めるのは限界がある
- 「塾でコツコツ勉強する力を身につけたい」は無茶振りに近い。
- 勤勉性は性格や遺伝要素が強く、塾が大きく変えられるものではない。
- 勤勉性が欠けている子は、ある程度の限界(期待値の上限)を受け入れる必要がある。
- 第一学区の中堅校層(六アイ・県芦・葺合)は能力の差ではなく内申点の差
- 本番の入試問題の点数ではほぼ差がつかない。
- 結局、内申点=勤勉性の差が進学先を決めている。
