日本史には「〇〇の乱」や「〇〇の変」と呼ばれる事件が多く登場します。学校の授業や受験勉強で一度は耳にしたことがあるでしょう。
しかし、「乱」と「変」はどう違うのでしょうか?似たような出来事に見えて、実は使われ方に明確な傾向があるのです。
本記事では、「乱」と「変」の意味の違いをわかりやすく解説し、日本史に登場する代表的な事件を年表形式で紹介します。この記事を読めば、「乱」と「変」の呼び分けがしっかりと理解でき、歴史の見方が一段深まるはずです。
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乱と変の違いを分かりやすく解説!意味や歴史的背景
日本史を学んでいると、「○○の乱」「○○の変」といった事件名をよく目にしますが、これらの呼び方にはどんな違いがあるのでしょうか?実は、単なる言い回しの違いではなく、事件の性質や視点に基づいた意味の違いがあります。
ここでは、「乱」と「変」の定義、使い分けの基準、代表的な事例などを詳しく解説し、わかりやすく比較していきます。
乱と変の意味の違い比較表
まずは「乱」と「変」の違いを一目で把握できるよう、表にまとめました。定義や対象、規模、成否との関係など、複数の観点から比較しています。
項目 | 乱(らん) | 変(へん) |
---|---|---|
意味 | 政権に対する武力による大規模な反乱や内乱 | 政権内部での政変やクーデター、暗殺など |
主な対象 | 幕府・朝廷など支配体制そのもの | 権力者個人や政権内部の対立 |
規模 | 全国的・広域で長期にわたることが多い | 比較的小規模・短期間の事件が多い |
成否との関係 | 成功・失敗にかかわらず「乱」と呼ばれることがある | 成功した場合に「変」と名付けられることが多い |
主な例 | 壬申の乱、応仁の乱、承久の乱など | 本能寺の変、桜田門外の変、嘉吉の変など |
このように、「乱」は広範囲・長期間の大きな武力衝突に使われ、「変」は政権内部の急変や暗殺、クーデターに用いられる傾向があります。
「乱」の意味とは?内乱・反乱がもたらす歴史的影響
「乱」とは、国家の統治体制そのものに対する大規模な反抗行動を指します。歴史的には朝廷や幕府など中央権力に反旗を翻す事件に多く用いられてきました。
特に、全国規模で武士や地方豪族を巻き込み、政局に大きな混乱をもたらしたケースに「乱」の字が付きます。例としては、壬申の乱(672年)や承久の乱(1221年)などがあり、いずれも政権の根幹を揺るがす深刻な事態でした。
反乱が成功して体制が変わったとしても、「乱」として記録されることもあるため、単に失敗した反乱とは限らない点に注意が必要です。つまり、「乱」とは「社会全体を揺るがす内乱」の意味を持つのです。
「変」の意味とは?クーデターや政変としての歴史的事例
「変」は、「政変」「異変」などに見られるように、政権内部での突然の事件を意味します。対象となるのは主に個人、つまり将軍や天皇などの政治的指導者であり、その座を脅かされたり失ったりする事件が多いです。
代表的な「本能寺の変」では、家臣の明智光秀が織田信長を急襲し、戦国の勢力図に大きな影響を与えました。また、「桜田門外の変」では幕府の大老・井伊直弼が暗殺され、幕末の政局が一変しました。
このように「変」は、政権の外部ではなく内部での対立や暗殺を指し、特に成功した政変である場合にこの名称が付けられることが多いです。
日本史の乱一覧
日本史には数多くの「乱」が登場します。ここでは代表的な事件を年代順で紹介し、それぞれの背景も簡単に解説します。
事件名 | 年号 | 時代 | 主役(反乱側) | 相手側(鎮圧側) |
---|---|---|---|---|
壬申の乱 | 672年 | 飛鳥 | 大友皇子 | 大海人皇子(天武天皇) |
平将門の乱 | 935年 | 平安 | 平将門 | 平貞盛、藤原秀衡 |
藤原純友の乱 | 939年 | 平安 | 藤原純友 | 源経基 |
保元の乱 | 1156年 | 平安 | 崇徳上皇、藤原頼長 | 後白河天皇、平清盛、源義朝 |
平治の乱 | 1159年 | 平安 | 源義朝 | 平清盛 |
源平の内乱 | 1180年 | 平安 | 源氏 | 平氏 |
承久の乱 | 1221年 | 鎌倉 | 後鳥羽上皇 | 北条氏(鎌倉幕府) |
応仁の乱 | 1467年 | 室町 | 細川氏 | 山名氏 |
島原の乱 | 1637年 | 江戸 | 島原・天草のキリスト教徒 | 江戸幕府(徳川家光) |
由井正雪の乱 | 1651年 | 江戸 | 由井正雪 | 江戸幕府 |
大塩平八郎の乱 | 1837年 | 江戸 | 大塩平八郎 | 江戸幕府 |
太平天国の乱 | 1851年 | 江戸 | 洪秀全 | 清(中国) |
佐賀の乱 | 1874年 | 明治 | 江藤新平 | 明治政府 |
東学の乱 | 1894年 | 明治 | 東学の信徒 | 朝鮮政府 |
日本史の変一覧
「変」と名のつく事件は、そのほとんどが政権内部の急変を示しています。ここでは有名な「変」を年代順で見ていきます。
事件名 | 年号 | 時代 | 主役(反乱・起こした側) | 相手側(攻撃対象) |
---|---|---|---|---|
承和の変 | 842年 | 平安時代 | 藤原良房 | 橘逸勢・伴健岑 |
応天門の変 | 866年 | 平安時代 | 伴善男(冤罪説あり) | 藤原良房 |
鹿ヶ谷の変 | 1177年 | 平安時代 | 藤原成親・西光ら | 平清盛 |
正中の変 | 1324年 | 鎌倉時代 | 後醍醐天皇 | 鎌倉幕府 |
嘉吉の変 | 1441年 | 室町時代 | 赤松満祐 | 足利義教(将軍) |
本能寺の変 | 1582年 | 戦国時代 | 明智光秀 | 織田信長 |
桜田門外の変 | 1860年 | 江戸時代 | 水戸藩浪士 | 井伊直弼 |
禁門の変 | 1864年 | 江戸時代 | 長州藩 | 会津・薩摩藩(幕府側) |
紀尾井坂の変 | 1878年 | 明治時代 | 不平士族 | 大久保利通 |
乱と変の違いの後に:よく似た歴史用語の意味を解説

「乱」と「変」以外にも、日本史では「役」「戦」「陣」など、さまざまな呼称が戦いや政変の場面で使われます。これらの言葉にはそれぞれ使い方のルールや歴史的背景があり、名称から事件の性質を読み解くこともできます。
ここでは、それらの言葉の意味や違い、そして名称の付け方に影響する要素について詳しく解説していきます。
「役」とは?文永の役や慶長の役など
「役(えき)」とは、主に国家が行う対外戦争や辺境での軍事行動を指す言葉です。たとえば1274年の「文永の役」や1281年の「弘安の役」は、いわゆる元寇で、モンゴル帝国(元)が日本に攻めてきた戦いを表します。
また、豊臣秀吉による朝鮮出兵である「文禄の役」(1592年)と「慶長の役」(1597年)も有名です。
「役」には、「民衆が徴兵されて国家のために戦う」というニュアンスが含まれ、国内の内乱ではなく、国対国の大規模な軍事行動という意味合いで使われる傾向があります。
「戦」と「合戦」の違いとは?関ヶ原の戦いや壇ノ浦の戦いなど
「戦」や「合戦」は、特定の戦闘や戦場での出来事を指す言葉です。「関ヶ原の戦い」(1600年)や「桶狭間の戦い」(1560年)、「壇ノ浦の戦い」(1185年)などが代表的な例です。
これらは、決着のついた一つの戦場を指すことが多く、全国規模の争いではなく局地戦として扱われます。
「合戦」はやや古風な言い回しで、特に戦国時代以前の戦いに多く使われています。「乱」や「変」が社会全体の変動や政権変革を含む大事件であるのに対して、「戦」は戦場での戦闘そのものを強調する表現といえます。
中学生・高校生向けの覚え方のコツ
「乱」と「変」の区別が難しいと感じる方には、セットで覚えるのがおすすめです。
たとえば、「保元の乱」と「平治の乱」はペアで覚えると流れが理解しやすく、「本能寺の変」と「桜田門外の変」は「成功したクーデター」としてセットで記憶すると整理しやすくなります。
また、語呂合わせで「本能寺で明智が変えた歴史」など、自分なりの記憶法を作るのも効果的です。覚えるだけでなく、その事件の背景や結果をセットで理解することが、受験やテスト対策には大きな武器になります。
同じ事件が複数名称で呼ばれる理由
日本史では、同じ事件に対して複数の名称が使われている例もあります。たとえば「比企氏の乱」と「比企能員の変」は、同じ事件を指しており、史料によって呼び方が異なります。
これは、後世の歴史家が視点や評価の違いから異なる名称を使うためであり、必ずしも一つの呼び名に定まっていないのが現状です。「由井正雪の乱」も「慶安の変」と呼ばれることがあります。
このような重複は、事件の性質を正確に捉えるヒントにもなりうるため、呼称の違いにも注意を払うと、より深く歴史が理解できるでしょう。
総括:乱と変の違いまとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
項目 | 乱(らん) | 変(へん) |
---|---|---|
意味 | 政権に対する武力による大規模な反乱や内乱 | 政権内部での政変やクーデター、暗殺など |
主な対象 | 幕府・朝廷など支配体制そのもの | 権力者個人や政権内部の対立 |
規模 | 全国的・広域で長期にわたることが多い | 比較的小規模・短期間の事件が多い |
成否との関係 | 成功・失敗にかかわらず「乱」と呼ばれることがある | 成功した場合に「変」と名付けられることが多い |
主な例 | 壬申の乱、応仁の乱、承久の乱など | 本能寺の変、桜田門外の変、嘉吉の変など |