江戸時代の「老中(ろうじゅう)」という言葉を聞いたことはありますか?
歴史の授業や時代劇で出てくることが多いですが、「偉い人なんだろうな」くらいで、どんな仕事をしていたのかよく分からないという人も多いはずです。
実は、老中は江戸幕府の政治を動かす超重要な役職!現代でいうと「総理大臣」に近い立場だったとも言われています。
この記事では、老中の役割や仕事内容を分かりやすく解説しながら、大老との違いや、現代の政治に例えるとどんな役職なのかを説明していきます。
老中とは何か簡単に解説!役割や今でいうとどんな立場?

老中とは、江戸幕府の政治を担う超重要な役職のことです。将軍が幕府のトップですが、実際に政治を動かしていたのは老中でした。4〜5人のグループで月ごとに担当を交代しながら、江戸幕府の政治を運営していました。
では、具体的にどんな仕事をしていたのか、今の役職でいうとどこにあたるのかを見ていきましょう!
老中とは?簡単に説明すると「江戸幕府の最高執政官」
老中とは、簡単にいうと「江戸幕府の政治を動かす最高責任者の集団」です。
将軍の下で、幕府の政治や政策を決め、実際に運営していました。
ただし、老中は1人ではなく、4~5人がグループになって政治を担当しました。
なぜなら、江戸時代の政治は仕事が多く、1人で全部やるのは大変だからです。
そこで、みんなで役割を分担しながら政治を運営していたのですね。
老中は「加判の列(かはんのれつ)」とも呼ばれました。
これは、幕府の重要な決定に必ず老中の「署名(サイン)」が必要だったからです。
つまり、幕府の政治を動かすために欠かせない存在だったのです。
老中の役割と仕事内容を簡単に!
老中の役割は、大きく分けると次の5つです。
- 幕府全体の管理- 大名たちの監視をし、幕府のルールを守らせる
- ルールを破った大名には処罰を決める
 
- 行政・司法の監督- 町奉行(まちぶぎょう)や勘定奉行(かんじょうぶぎょう)などの部下を指揮する
- 江戸の治安を守り、裁判を管理する
 
- 外交・貿易の管理- 鎖国政策を守るため、外国との交渉を行う
- 貿易をする国(オランダ・中国など)とのやり取りを管理
 
- 朝廷との調整- 京都の天皇や公家(貴族)と幕府の関係をうまく保つ
 
- 軍事対応- 外国の船が近づいたときの対応を考える
- 幕府の軍事力を整備し、戦が起こらないようにする
 
こうして見ると、老中の仕事はとても多く、責任が重かったことが分かりますね!
老中は今でいうとどんな役職?
老中は江戸幕府の政治を運営する役職ですが、現代でいうとどんなポジションになるのでしょうか?
- 内閣総理大臣に近い?- 幕府の政治を統括していた点では「総理大臣」に近い
- しかし、老中は複数人なので、総理大臣1人が決める仕組みとは違う
 
- 官房長官のような役割?- 幕府のトップ(将軍)をサポートする点では「官房長官」に近い
- 将軍に報告し、政策を実行する役割もあった
 
- 閣僚(大臣)の集合体?- 実際には老中は複数人いたため、現在の「大臣(閣僚)」たちのグループに似ている
- 例えば「財務大臣」「外務大臣」「法務大臣」などの仕事を、まとめて担当するような役職だった
 
つまり、老中は「総理大臣」「官房長官」「大臣」をミックスしたような役割だったのです。
老中になるには?条件と出世ルート
老中になるためには、いくつかの条件がありました。
- 譜代大名であること- 「譜代大名(ふだいだいみょう)」とは、もともと徳川家の家臣だった大名のこと
- 幕府の中心メンバーなので、外様大名(戦で徳川に降参した大名)は基本的になれない
 
- 石高2万5千石以上- 石高(こくだか)とは、お米の収穫量のこと
- 幕府を運営するにはお金がかかるので、財力のある大名しか老中になれなかった
 
- 出世ルート- 若年寄(わかどしより)→寺社奉行(じしゃぶぎょう)→京都所司代(きょうとしょしだい)→老中
- または、将軍の側近である「側用人(そばようにん)」から老中になることもあった
 
こうした条件をクリアした限られた人だけが、幕府の最高職・老中になれたのです。
有名な老中とその功績
江戸時代には多くの老中がいましたが、特に有名なのは次の5人です。
- 田沼意次(たぬまおきつぐ):商業を重視した改革を実施
- 松平定信(まつだいらさだのぶ):倹約政策「寛政の改革」を行う
- 阿部正弘(あべまさひろ):ペリー来航に対応し、開国を進める
- 水野忠邦(みずのただくに):天保の改革で幕府の引き締めを図る
- 堀田正睦(ほったまさよし):日米修好通商条約の交渉を担当
このように、歴代の老中たちは、それぞれの時代に合わせた政治を行っていました。
老中とは?大老との役割の違いなど

江戸幕府には多くの役職がありましたが、中でも重要だったのが「老中」と「大老」です。どちらも幕府の中枢を担う重役ですが、その違いは意外と分かりにくいものです。
ここでは、老中と大老の違いや、それぞれの役割について詳しく解説します!
老中と大老の違いを簡単に解説!
老中と大老の違いを簡単に説明すると、以下のようになります。
- 老中は常設、大老は臨時職
 老中は常に幕府に置かれている役職ですが、大老は必要なときだけ任命される臨時の職です。
- 老中はNo.2の集団制、大老はNo.2の単独職
 老中は基本的に4~5人で仕事を分担しますが、大老は1人のみで任命されます。
- 老中は月番制、大老は随時召集
 老中は毎月交代で幕府の政務を担当する「月番制」ですが、大老は特定の時期にだけ活動します。
- 大老は幕府の重大局面で任命される
 例えば、幕府の大きな政治危機、将軍継承問題、外国との外交交渉など、重要な局面でのみ大老が登場します。
- 大老の方が格式が上で、将軍に近い
 大老は将軍のすぐ下に位置し、「総下座の礼」(周囲の者がすべてひれ伏す礼儀)を受けるほどの高い格式を持っていました。
このように、老中と大老では「権力の範囲」と「任命のされ方」が大きく異なります。
大老とは?簡単に解説すると「老中の上の特別職」
大老は幕府の「特別職」であり、通常は存在しない役職でした。そのため、歴史上で大老が任命されたのは数回のみです。
- 将軍に次ぐ最も権力のある役職
 幕府の組織では、将軍が最も偉い存在ですが、大老はそのすぐ下に位置する最高位の政治家でした。
- 老中よりも上位で、政治判断を任される
 老中は政務を執り行う役割を担いますが、大老は幕府の重要な決断を一手に引き受けました。
- 非常時にのみ置かれ、幕府の危機管理を担当
 例えば、幕府が崩壊の危機に瀕しているときや、将軍継承問題で混乱しているときに大老が登場しました。
- 「総下座の礼」が必要なほど格式が高い
 江戸城の中では、大老が歩くと周囲の人々がすべて頭を下げるほどの権威を持っていました。
- 実際に大老が置かれた例は数回のみ
 大老は歴史上、約14名しか就任していません。そのため、大老は非常に特別な存在だったのです。
大老と老中の人事の違い
老中と大老では、人事の仕組みも異なります。
- 大老になれるのは特定の家系(井伊家・土井家・酒井家・堀田家)
 大老になれるのは、この4つの家柄に限られていました。特に井伊家が多く大老を輩出しました。
- 老中は譜代大名なら昇進可能
 老中は「譜代大名」(徳川家と古くから関係がある大名)ならば任命される可能性がありました。
- 老中は複数名だが、大老は基本1名
 老中は常に4~5人いましたが、大老は1人しか任命されませんでした。
- 大老は「大老格」として特例的な昇進もあった
 井伊家・土井家・酒井家・堀田家以外にも、大老に準じた「大老格」として昇進する例もありました。
- 老中から大老に昇進するケースもある(例:堀田正俊)
 例外的に、老中を長く務めた人物が大老に昇進することもありました。
大老の歴代有名人物と役割
大老を務めた人物の中には、歴史に名を残した偉人がいます。
- 井伊直弼(開国政策・安政の大獄)
 1858年に大老となり、外国との条約締結を主導しました。しかし反対派を弾圧した「安政の大獄」で恨みを買い、桜田門外の変で暗殺されました。
- 酒井忠清(幕政の安定化に貢献)
 17世紀に大老を務め、幕府の政治を安定させるための政策を行いました。
- 堀田正俊(政治改革を推進するも暗殺)
 老中から大老に昇進し、幕政改革を進めましたが、江戸城内で暗殺されました。
- 土井利勝(大老職の確立者)
 大老という役職を確立し、幕府の組織作りに貢献しました。
- 酒井忠績(幕末の混乱期に大老を務める)
 幕末の混乱期に大老となりましたが、すぐに辞職しました。
テストに出る!老中・大老の語呂合わせと重要ポイント
テストでよく出るポイントを、覚えやすい語呂合わせとともに紹介します!
- 老中の仕事:「幕府の番頭は政治の要(ばくふのばんとうはせいじのかなめ)」
 → 老中は幕府の政治を支える重要な役職でした。
- 大老の役割:「大きな事件で大老出陣(おおきなじけんでたいろうしゅつじん)」
 → 大老は非常時にのみ登場する特別な役職でした。
- 老中の有名人:「たぬまの商売、まつだいらの改革(田沼意次・松平定信)」
 → 田沼意次は商業政策、松平定信は改革を行ったことで有名です。
- 大老の有名人:「いいなおすけ、大胆すぎる(井伊直弼)」
 → 井伊直弼は大胆な政治決断をしたため、暗殺されました。
- 試験で問われやすいポイント:「老中は常設」「大老は臨時」
 → この違いは頻出問題なので、必ず覚えておきましょう!
総括:老中とは何か簡単に解説まとめ
最後に、本記事のまとめを残しておきます。
老中とは?
- 江戸幕府の政治を動かす重要な役職で、将軍の下で政策を決定・運営。
- 4〜5人のグループ制で、月ごとに交代して政治を担当。
- 「加判の列」とも呼ばれ、幕府の重要決定には老中の署名が必要。
老中の役割と仕事内容
- 幕府全体の管理:大名の監視・統制、ルール違反者の処罰。
- 行政・司法の監督:町奉行・勘定奉行を指揮し、江戸の治安・裁判を管理。
- 外交・貿易の管理:鎖国政策の維持、貿易国(オランダ・中国)との交渉。
- 朝廷との調整:天皇・公家と幕府の関係維持。
- 軍事対応:外国船の対応や幕府軍の管理。
老中は現代でいうと?
- 総理大臣に近い:幕府政治の統括者。ただし複数人制のため完全一致しない。
- 官房長官に近い:将軍の補佐役として政策実行を担当。
- 大臣(閣僚)の集合体:財務・外務・法務など、多方面の政策を担う。
老中になるための条件
- 譜代大名(徳川家と古くから関係のある大名)のみ。
- 石高2万5千石以上(幕府運営に必要な財力を持つ)。
- 出世ルート:若年寄・寺社奉行・京都所司代・側用人などを経る。
有名な老中
- 田沼意次:商業重視の政策を実施。
- 松平定信:寛政の改革で倹約政策を推進。
- 阿部正弘:ペリー来航に対応し、開国政策を進める。
- 水野忠邦:天保の改革で幕府の引き締めを図る。
- 堀田正睦:日米修好通商条約の交渉を担当。
老中と大老の違い
- 老中は常設、大老は臨時職(必要な時だけ任命)。
- 老中は4~5人、大老は基本1人のみ。
- 大老は将軍に次ぐ最高位の役職(格式が非常に高い)。
- 大老は幕府の重大局面(政治危機・外交問題など)でのみ任命。
大老の有名人物
- 井伊直弼:安政の大獄・開国政策を推進、桜田門外の変で暗殺。
- 酒井忠清:幕府の安定化に貢献。
- 堀田正俊:政治改革を推進するも江戸城内で暗殺。
- 土井利勝:大老職の確立者。
- 酒井忠績:幕末の混乱期に大老を務める。
テストに出る語呂合わせ
- 老中の仕事:「幕府の番頭は政治の要」
- 大老の役割:「大きな事件で大老出陣」
- 老中の有人:「たぬまの商売、まつだいらの改革(田沼意次・松平定信)」
- 大老の有名人:「いいなおすけ、大胆すぎる(井伊直弼)」
- 試験頻出ポイント:「老中は常設」「大老は臨時」
