保護者さんの勉強のお悩みあるあるで、こういうのが結構あります。

「ウチの子は勉強時間を増やして頑張っているんですけど、成績が伸びないんです…」

このケースは、勉強時間の長い塾に通わせているケースや、あるいは子供自身が自学自習のために学習塾の自習室などに通うなどを見て、保護者さんが悩まれている典型例です。

広い意味言えば、

「ウチの子は自分なりに頑張っていると思うんですけど、成績が伸びません」
「ウチの子は勉強の仕方が分かっていないと思うので、コツさえ掴めれば成績が上がると思います。」

などもほとんど同じ悩みだと言えます。

ただ、このような生徒が伸び悩む決定的な理由は毎回決まっています。それが、「自習力の欠落」です。特に、下位50%の生徒でこのような悩みをおっしゃるケースは、十中八九それです。

大前提:点数が高い子は「自習力」が高い

勉強ができて点数が高い子に共通していることが何かご存知ですか?

それは、「自習力がある」ということです。

ここでいう自習力とは、

「ああ、これこういう意味ね!」
「なるほど、この単元の本質これね〜」
「この単元は、こうやって暗記しておけば問題解けそうだな〜」

みたいな感じで、自分の中で“腑に落ちている状態を作る力”のことを指します。

テストで高得点を安定的に叩き出す子は、誰からどんな風に教わろうが、最終的にこの感覚に落とし込むことができる子です。

そして、この感覚を作るために必要なのが「自習」です。

なぜならば、実際に問題演習をして、手を動かし、壁にぶつかり、その壁を乗り越えるためにあれこれ調べて考えたりする瞬間は、自習中にしか訪れないからです。

授業を受けている瞬間というのは、基礎の導入こそ円滑に進むものの、自分の頭で考えるという負荷がどうしても不足してしまいます。脳に汗をかくタイミングは、この自習中にしか起こり得ないのです。

だから、基本的に学業成績というのは、授業を受けた時間ではなく、自習時間に比例して伸びていくものです。この点からも、「分かりやすい先生に教えてもらえば成績が伸びるのでは?」と考える保護者の仮説がいかにズレているか分かると思います。

話が脱線しましたが、要するに自学自習の時間に、今やっている問題が腑に落ちたかが重要で、そこには「自分の頭で必死に考える」というプロセスが必ず入るということです。

だから、成績を上げたいのであれば、自主学習の時間を増やすのがやはり王道のアプローチと言えます。

でも、このロジックが通用するのは、やっぱり上位層の人間なんだよね…というのが元も子もない話だったりするのが次の論点。

下位50%は「自習力」が絶望的に欠落しているから伸び悩む

自主学習時間に比例して学力が伸びる。

これは正しいロジックなのですが、この手の勉強法というのは、原則として一定の知能を有する人間を前提にしているのが落とし穴です。巷に出回っている勉強法なども全部そうです。

だから、この法則は学年の下位50%とかになってくると、急に当てはまらなくなってしまいます。

なぜだか分かりますか?

理由は、「下位50%は、自主学習中に”自分の頭で考えて腑に落とす”という操作がなされないから(したとしても極端に質が低いから)」です。

そもそも、質の高い自主学習を成立させる前提条件は、その子自身が自分の頭で物事を考える子であるということです。だから、常日頃から頭を使って生きていない子にはそれが出来ない。

でも、賢い子は、何だかんだで普段から思考しながら生きているので、自主学習中も無意識に自分の頭で考えることをしてしまうのです。この差が自習時間の質的な差にそのまま直結します。

そして厄介なことに、「自主学習に自分の頭で考えるコツ」はありません。頭のいい人間が何かコツを知っていて、頭の良くない人がコツを知らないなんて単純な話だと思いますか?

そんなわけない。

こういうのは方法論の問題ではなく、その個体の資質の問題です。

普段から思考して生きている人間は自主学習中でも思考をするし、普段から適当にボケっと生きている人間は、自習中もボケっとするものです。こういうのは、生き方がモロに出ます。

でも、なぜ思考しながら生きている人間がいる一方で、思考しないで生きている人間がいるのでしょうか?

そんなもの、元々の脳構造の差が一番大きいに決まっています。遺伝論を認めたくない人はここですぐに環境の差を口にしますが、それは「そうであってほしい」と言う願望が入りすぎています。

同じ兄弟でも、全く思考力に差がありまくる事例が何パターンあると思ってるの?って話です。同じ親から生まれて環境がほぼ同じ兄弟でも、天と地ほどIQが開いている事例は山程あります。1組の男女でも約70兆の受精卵の組み合わせがあるのですから、そこで差が出るに決まっています。

話を戻すと、下位グループの生徒の自習は、結局自分の頭で考えていない時間が多く、自習本来の目的である“腑に落ちる状態を作る”が達成されていないと言うことです。そして、指導者のサポートはあっていいのですが、腑に落とすのは指導者ではなく生徒本人がすることです。

下位50%以下の自主学習:なぜ頭を使うことが出来ないのか

正直、ここまで原因が分かっていたとしても、下位50%の生徒の自習力を高めることは相当難しいです。

その理由は、この層は思考する方法が分かっていないから思考しないのではなく、思考する能力が極端に乏しく、脳に負荷をかけることを無意識に避けて生きているからです。

頭を使って考える(=脳に汗をかく)と言うのは、しんどいことです。

でも、同じレベルの問題に直面した時でも、もともと地頭がいい子とそうでない子は、思考の負荷が同じではないのです。イメージ的には筋トレと同じです。同じ50kgのベンチプレスを上げるとしても、体重が40kgの人と体重が100kgの人では重さの感じ方が違いますからね。

だから、知能がそもそも弱い人は、そもそも思考の負荷が大きいと感じてしまうもの。それゆえ、普段から思考を無意識に避けています。脳がしんどいと感じないように、脳を守っているのかもしれません。もはや「防衛本能」なのかもしれないです。

でも、賢い人は、思考をそこまでしんどいと感じていません。だから、普段からそこそこ思考して生きています。IQが高いと思考をするのにそこまで脳はしんどさを感じず、無意識に思考を止めなくてもいいですからね。

この知能格差が、勉強をさせれば露骨に生徒ごとの点数差に現れてしまうのです。

ここに、「うちの子は勉強のやり方が分かっていないので伸びないと思う」と言う親の見立てが99%間違っていると思う根拠があるわけです。

確かにやり方の問題なのですが、正しいやり方は脳に負荷がかかる勉強法です。そして、脳に負荷をかけることを普段からスキップしているから、いざ勉強する時に脳に負荷をかけようとすると拒絶してしまうのです。

そう言う意味では、正しいやり方が分かったとしても、それに耐えられる器ではないことが根本的な問題点だったりするわけです…

正直、この程度のことは少し考えれば分かるはずです。本当に正しい方法論で学力問題が解決するなら、公教育でそれを実行しているはずです。もし金銭的に公教育が無理な方法だとしても、民間教育なら絶対にそれを取り入れ、高額な値段でサービスを売るでしょう。だって、教育投資にならお金を惜しまない親なんて山程いるわけで、絶対にビジネスになりますから。

でも、そうなっていないと言うことは、結局そんな方法はないってことの証明でもあるわけです。

実際、下位グループに自由に自習をさせれば、脳に負荷のかからない勉強を無意識に選択します。適当に教科書を流し読みしたり、赤ペンで間違った箇所を書くだけの勉強したり、意味もなくマーカーで線を引いたり…

いや、最近だとそれでもマシな方で、下位50%以下だと、1時間自習させても「20分ぼーっとする。15分ペンいじり。10分トイレにこもる(スマホを持ち込む)。残り15分でワークを埋める(もちろん理解などするわけもない)。」なんてことはザラ。

でも、それを指摘し、脳に負荷のかかる勉強法を伝えても、基本的に拒絶反応が起こります。普段思考をしていない子にとっては、脳汁を出して思考するのはしんどすぎるのです。どんな手を使ってでも避けたいことの1つなのです。

だから、仮にその一瞬だけ負荷のかかる勉強をさせても、指導者から離れたところで自習をさせれば、結局は負荷のかからない勉強に戻ります。こう言うのは根っこの問題なので、コンサルでは極めて改善が難しい領域です。と言うより、根本的に無理です。再現性のある方法で改善策があるなら、日本国民全員が賢くなります。

【下位50%】演習多めの塾では伸びづらいが個別指導で伸びるとも限らない

脳に負荷をかけず、自分一人になった時に論理を考えることをしない生徒は、自主学習での伸び代に限界が来ます。だから、仮に自塾のように演習時間を多くして、勉強時間を確保する塾に来ても伸び止まりが早々に来てしまいます。

結局は、意味もわからず無理やり用語を覚えたり、その問題でしか通用しないような謎なやり方をしたりして、風船よりも中身の詰まっていないふわふわ勉強しかしないからです。

だから、テスト問題で少し形式が変わったり聞かれ方が変われば、途端に頭が真っ白になります。本質的に問われている内容が同じでも、全く同じ問題でなくなった瞬間に分からなくなるのがこの層のあるあるです。

例えば、「10以下の素数を全部書け」と言う問題を塾でやらせたとします。でも、テストで「10以下の素数は何個ありますか?」と聞かれた瞬間に詰むとかです。これが同じ問題と思えないというのは、果たして指導者が悪いのでしょうか?

でも、自分の頭を使って考えず、適当に人の話を聞き流したり、赤ペンで答えだけを書いたりする感じの子だと、こういうことが常態化します。こんなことをされては、1つの論点につき何パターン問題演習をさせなきゃいけないの?って話になりますし、当然のようにそんな時間はないのでどのみち無理ゲーです。

ただ、思考せずに勉強する生徒というのは、この手の過ちを全教科で犯してしまうものです。だから、やるだけのことを時間いっぱいやってあげたとしても、大した点数にならずに塾への不満が溜まりやすいのです。

塾としては出来ることを最大限やるのですが、それでも思考しない子は行けて平均点までとかで止まりやすく、そこで満足していただけないなら退塾リスクが発生します。

でも、平均点って第一学区で言えば六アイに届かないレベルです。そうなれば、東灘や私立専願、専門学科の高校ぐらいしか選択肢がなくなるので、この瞬間に塾通いにメリットを感じなくなってしまう人が多いです。

だから、下位50%以下でロクに思考せずに適当に生きている系で六アイ以上を志望校にしてくるご家庭は絶対に受け入れたくないという話になってしまうのです…

ただ、仮にウチのような塾を避け、個別指導に行けば伸びるのか?と言われると、それはそれで別の話。

結局この子達は、自分の頭に負荷をかけたくないので、負荷を乗せられない勉強に魅力を感じます。だから、個別で0から100までフルサポートで教えてもらえることに魅力を感じ、それを「親身に教えてくれていい塾」と錯覚します。

でも、それでは点数が上がらないから主に大手FC個別指導の進学実績はパッとせず、勉強ができない子の溜まり場となっているわけです。

そもそも、そんな勉強法で成績が上がるわけがないのです。負荷がかかっていないのですから。

しかし、この手の生徒の多くは、成績を上げることよりも、己が楽できることの方がプライオリティが高いです。成績を上げたければシンドイ思考でもやり切ると言う心構えはなく、「楽して簡単に成績が上がる方法」ばかりを追い求め、身の丈に合わない目標ばかりを口にするものです。

でも、脳に汗をかくという最も成長に直結するシンドイ過程から逃げ散らかして楽な勉強法に避難してやった感を出しているだけの子達が報われるほど甘い世界じゃないです。

これが分からないうちは、いつまで経っても小手先の勉強法などを追い求めて塾を転々としてしまうでしょう。

上半分以上の生徒は自習時間を増やす方が成績は伸びやすい

なお、上位50%以上の学力の生徒の場合、自主学習を増やすオペレーションで動いた方が成績は上がりやすかったりします。

特に、今通っている塾が「授業ばかり」であれば、それは受け身の時間が多く、自分の頭で考える時間が少ないとも言えます。自学自習を正しく行い、腑に落ちる勉強まで完成させない限り、成績は伸び止まりやすいです。

だから、そう言う子は自塾のようなシステムがはまりやすいです。

毎週3時間は演習タームを設けて、強制自主学習の時間を作ります。定期テスト直前は、すべての授業を止めて約2週間毎日塾に呼び出されて、学校ワークなどを黙々と暗記演習させられます。笑

正直、一定の知能水準を満たしている子の場合、塾の授業時間やサポート時間を増やしていくより、こうやって自習時間を強制的に作られる方が点数アップへのインパクトは大きいです。

塾選びをする際は、「自主学習で定着まで持っていける塾か」と言う点を見落とさないことが大事だと思います。

総括:頑張っている(自称)!と豪語する生徒が伸び悩む理由まとめ

最後に、本記事のまとめです。

  • 成績が安定して高い生徒の共通点は「自習力」。授業ではなく“自分で考えて腑に落とす”時間(自習)が学力を伸ばす。
  • 自習力=問題演習で手を動かし、壁に当たり、調べ・試行錯誤して「分かった」に到達する力。
  • 下位50%層は自習中に“自分の頭で考える”操作が起きにくく、結果として学力が伸びにくい。
  • 勉強法のコツ云々よりも、日常的に思考する習慣(資質・生き方)の差が自習の質を左右する。
  • 脳に負荷をかける勉強が正しいが、知的負荷をしんどいと感じやすい層は無意識にそれを回避する。
  • そのため「努力しているつもり」でも、流し読み・赤ペン写し・マーカーなど“楽な作業”に逃げやすい。
  • 形式が少し変わると解けないのは、理解ではなく手順暗記に寄っている証拠(例:素数の設問の言い換えで詰む)。
  • 演習多めの塾でも、自分で考えない限り早期に伸び止まり。平均点止まり→志望校レンジ(六アイ以上)に届かない。
  • 個別指導で“手取り足取り”は心理的に楽だが、負荷が小さい勉強になりやすく、結局点数は上がりにくい。
  • 「勉強のやり方が分かれば上がる」という親の仮説は多くが誤り。必要なのは“脳に汗をかく”思考そのもの。
  • 根治は難易度が高く、短期コンサルでの再現性は低い。思考回避の習性がある限り、塾を変えても結果は変わりにくい。

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