昨今は私立無償化の流れもあり、公立高校ではなく私立高校を受ける生徒も増えています。特に都心部ではその傾向が強いです。

そして、私立入試の中でも「私立専願(推薦)」を使って進路を決定するご家庭が一定数いますし、年々その割合が増えてきているのも事実です。

ただ、「私立専願は逃げである」と言う価値観を持っている人も多いです。公立受験で一般入試が主流だった親世代からすれば、「何そのクソみたいな制度?」と内心では思っている人も少なくありません。

正直、自分自身もそう思わないわけではありません。

もっと踏み込んで言えば、「私立専願は勉強できない子が勉強できない子のままでも高校に行けせてあげるための制度」としか思えません。

もちろん、上位校の私立専願は別ですよ。一部難関私立でも私立専願を採用していますがが、こう言った学校は大学附属であったり、大学受験をガチる系の学校です。公立受験だと偏差値60以上に相当し、推薦基準もオール4程度の内申点が必要だったりします。だから、受験のハードルは決して低くないどころか、しっかりと競争が成立しています。

問題は、偏差値50程度かそれ以下の中堅私立の専願入試です。

このレベルの学校のレベルだと、私立専願にさえすれば、5教科300点以下の子でも特進コースに進学することになります。公立で言えば、偏差値40台の高校にしか行けない子で、第一学区で言えば六アイ(偏差値53)には行けず、東灘にしか行けないレベルの子でも受かってしまいます。

また、中堅私立の下位コースともなれば、5教科の合計が100点以下でも私立専願であれば普通に受かってしまいます。

こう言う学校は受験としてペーパーテストこそ課すものの、形だけです。そもそも推薦もらえた時点で99.9999%は合格です。名前さえ書けば受かると言っても過言ではないです。

そして、ここで問題となってくるのは、「私立専願で受験して進路を決めるような子の塾通いに価値はあるのか」と言う話です。

【逃げ】私立専願の受験は誰がどう言おうと楽チン受験

まず大前提ですが、私立専願の受験なんて、どう考えても相対的にはイージーです。あらゆる側面で負荷が弱すぎです。

そもそも、私立専願にした時点で、自分の本来の学力以上の偏差値の学校・学科に行けてしまいます。偏差値40台の公立高校にしか行けない子が、私立専願にすれば特進コースに進めるなどバグでしかありません。

ただ、最近では、そのようなバグも認知されているのか、中堅私立高校の特進コースは「特進コース(笑)」と見下している人もいて、実際は偏差値ほどの価値がない虚構であることがめくれつつあります。

しかし、公立高校であれば偏差値53とかでも、それなりに内申取って、公立高校の受験の共通問題の対策をしなければいけないので大変です。一方、私立専願は受験勉強そのものが緩すぎます。

まず大前提、内申点も大して必要ありません、オール3に少し色を付けただけの子が特進コースの推薦をもらえたりします。こんなのは、兵庫県第一学区であれば偏差値53の六アイ(中堅校)には絶対に受からないレベルの子です。

しかも、私立専願で受験する場合、大半の高校は「英数国」の3科目入試で済みます。公立を受ける子が理科社会の暗記を頑張らなければいけない一方で、この層は2科目免除です。この時点でどれだけ楽な受験か…

その上、推薦さえ獲得出来れば名前だけ書けば合格できる上、その推薦基準もガバガバ。おまけに、1月には推薦が決まり、そこから先はもう勉強しなくてもいいわけで、これほど楽な受験はないです。もちろんこの層は、中3二学期の後半の内容をほぼ勉強しないので、英語力を中心に絶望的な学力で高校に進学します。この層は、完全にFラン予備軍です。

こんなアホみたいな制度があるから学力低下が止まらないわけですが、そう言う時代なのでもう仕方ありません。

昔なら、なんとしても公立に行かないと…というマインドが働き、勉強が苦手でも、多少は頑張ってくれる子はいて、そこで成長していくものでした。だけど、今は無償化も重なった結果、逃げ道ができてしまいました。だから、何も耐えず、何も積み上げず、年齢だけを重ねる子が続出しました。そして、精神年齢の幼いキッズ高校生が量産される始末です。

この世代が数年後に新卒として社会人として放り出されるわけなので、いよいよ世紀末も近いのですが、まあそれは一旦横に置いときましょうか。。

こう言う子たちに何が必要なのか?と言われると、「躾」です。躾に何が必要かは、リヴァイ兵長に代弁してもらいましょうか。

だけど、学校も塾も、もうこうやって躾けることはできない時代になりました。だからこそ、子供の元々の出来具合、そして親の教育力の差が露骨に差を広げています。その差を埋めるための教育が機能しない時代なのですから。

だからこそ、褒めて伸ばすなどふざけたことをやっている場合ではないのです。

多様性と声高に言われるようになった結果、一昔前であれば明らかにヤバイと言われていた子が、謎に市民権を獲得しています。だからつけあがり、それがさらにわがままに拍車をかけます。こう言う子たちが、例年では私立専願に流れている傾向が強いです。

あ、もちろん、その私立高校にどうしてもやりたいことがあり、難関校や公立高校よりも魅力を感じる場合は別です。その行きたい学校が私立専願で受からせてくれるなら、その制度を使わない手はないですからね。

しかし、私立専願を選択する生徒の多くは、そんな風に目的がしっかりしているわけではありません。

そもそも学業面に大きな課題があり、内申点も不足する結果、一定レベルの公立高校には行きたくても行けないレベルの子です。でも、地域最底辺の公立に行くのは恥ずかしいから、私立専願に避難しているだけです。いや、公立最底辺にすら届かない子も多いです。

しかし、私立専願は公立高校の受験に比べてはるかに楽に進路が決められます。緊張感を持って頑張らなくてもいいし、逃げ癖の強い人間にとっては最高の救済措置として機能します。犯罪歴さえなければ名前さえ書けば合格してしまうような入試をやっているんですから。

ここで、「このままだとヤバいから、マジで頑張って成績上げないと!」とはならず、激ヤバな自分を反省改善しようとはせず、「努力や改善なく楽に進路を決めたい」となる子が私立専願組には多過ぎます。

ハッキリ言いますが、ここで私立専願に流れる生徒というのは、大人から見てもやはり何かしら問題があると思う子が多いです。

私立専願に結局なる子の塾通いは本当にコスパが最悪

正直なところ、私立専願に逃げの受験をする人は、学習塾に通うメリットを経営者目線ではサッパリ感じられません。

名前さえ書けば合格できる学校を受験するのに、毎月何万もの費用を捻出する意味が自分には分かりません。

もちろんこれは消費者マインドもそんな感じで、中3になって私立専願に切り替える子の多くは塾を辞めたり、これまでより明らかに負荷の低い個別などに転塾することになります。

まあそうですよね、公立受験という競争から身を引いているのに、わざわざ学習塾に高額な費用を払うなんてコスパが悪すぎますから…

そして、中2の終わりや中3で私立専願の方向に流れるご家庭の退塾・転塾が増え始めます。特に、公立受験向けのコースを作っている塾は、そのタイミングで生徒が抜けます。

その多くは、第一学区の場合、偏差値53の六アイや須磨翔風すらも届かないレベルの学力下位層で、公立にするなら東灘か専門学科の高校しか現実的に行けない子です。

正直、こうなる子は、一定のラインで推測できます。

まず、中1の1学期のテストで350点以下になる子が最初のサインです。六アイなど中堅校は上位40%程度の学力ですが、中1の最初のテストは平均で320点程度が多いです。なので、このタイミングで350点ぐらいない子は学年の中でも上位40%以上とは言えないです。

もちろんこれは一回のテストの話なので、逆転は起こります。しかし、学年を重ねていけば、もう変えようのない現実に直面します。中2の段階ではほぼ学力のレベルは確定し、それが中3でもほぼ変わらないのが今の中学のトレンドです。だから、以下の記事で書いたように、中2までで子供の進路のおおよその予測はつくのです。

こうなると、上位40%よりも下の層はいずれ退塾になるリスクを抱えている懸念案件でしかなく、塾としては正直受け入れに慎重にならざるを得ないです。

こういう層を無条件に引き受ける塾は、個別指導に多いです。でも、結局は飼い殺し(辞める直前までお金を搾り取られる)になるだけです。この層は注意されるとすぐにクレームなので、キツイことを言わず、辞める直前まで気持ちよく通ってもらうことが塾側の目標になっていることを知っていますか?

だから、下位50%以下の低学力層の塾選びは成功しないことが多いのですが、その原因は「子供の学力がそもそも低すぎて、勉強で恩恵を受けられるようなレベルではない子だから」というのが大きいです。

ただ、勉強の恩恵をどう感じるのかは保護者次第。

なので、「ウチは東灘でも行けたら本当に嬉しいんです!」「ウチは専門学科の公立に行きたいんです!」と言って通ってくださる方ぐらいしか、下位層の塾通いで満足感を生み出すことが困難になります。

しかし、私立専願と無償化のコンボで何がなんでも公立というニーズが弱まりつつある昨今だと、「六アイが無理で東灘になるなら、ウチは私立専願で中堅私立の特進コースに行きます。」というご家庭も多い。

もしくは、さらに学力が下がると、私立専願で特進コースすらも届かず、中堅私立の真ん中かそれ以下のコースに下げて受験となります。

でも、そのパターンの私立専願だと、大して勉強しなくても受かります。推薦は簡単にしてもらえるし、勉強を辞めても、名前さえ書けば受験はパスできます。だから、学習塾に課金するメリットが弱くなります。そして、私立専願を決める=退塾というのが今の時代です。

このタイプの生徒は、小学校の段階でも地頭水準が下位50%にいて、基本的に知能水準がお世辞にも高いとは言えないタイプです。しかし、知能格差を埋めるために余分に負荷を許容する胆力もない子です。

親としては中学で伸びることを期待して塾に入れますが、結局伸びずに、小学校の時から実は決まっていた地頭レンジの中の進路に落ち着きます。当たり前です、そんな簡単に頭の良さの序列は変わりません。

だから、学力テストなどで入塾制限をかける塾は、この属性(及びそれより遥か下のレベルの子:5教科200点以下)を弾きたいと思っているわけです。受け入れても極めて伸びが限定的になりやすい上、最後の最後は私立専願で受験からエスケープされては、一生懸命子供と向き合い続けても無意味になるからです。

当塾のコンセプト:受験を通して成長したい人をサポートする塾

ちなみの当塾では、楽チン受験で名前さえ書けば合格的な私立専願をする生徒や、そうなる可能性が極めて高い生徒のご家庭はお断りしています。

自分の中で、その層からお金をいただいて提供できる価値は正直ないと思っているからです。だから、お金をいただく資格もありません。

また、批判を覚悟で申し上げれば、頑張って公立受験を戦う子の邪魔になることも多いです。楽な方向に逃げている子を見ると、本気でやっている子はイラっとします。だから、同じ中学生でも同じ空間に存在させるべきではないとハッキリ申し上げます。

もちろん、私立専願に進むご家庭の教育方針にまでケチをつけるつもりはありません。一介の塾講師ごときに、そんなことを言う資格はないです。

ただ、「一時の厳しい状況(受験・学業・就活)も耐えられない人が一生続く厳しい状況(社会)に耐えられることは本当に厳しいだろうなぁ」と考え、学生時代に競争経験を積む目的もあって公立受験を選択される方もいます。

この考え方に自分は心から共感するし、そう考える人達の助けになりたいと考えて塾をやっています。

「勉強なんて程々でいいよ。」「しんどかったら私立専願で受験すればいいよ。」と子どもに声をかけ、今この瞬間の苦痛を回避し、苦労を将来に先延ばしする方々を相手にはしません。

ただし、勘違いしてほしくないのは、勉強ができなくて悩むご家庭を愚弄するつもりは一切ないということです。

そもそも、逃げることと挑戦を切り替えることは紙一重です。

大前提、人には向き不向きはあり、努力したからといって、思い通りの結果が出るというわけでもないです。勉強の場合はIQも大きく作用しますから、明らかに思考力に乏しい子には正直向きません。特に今の時代のテストは、単純暗記を許さず、考える問題ばかりになっており、努力したって解けない子は解けないものも多いです。

だから、勉強に向かない子は早々に勉強を損切りし、違う挑戦に切り替えたらいいし、その方がなんならいい。無責任だ何だと批判してもらっても構いませんが、明らかに不向きなものを無理やりやらせたところで、その子にとって大したプラスになるとは思えないです。むしろ、明らかに期待値が低いことに時間を使わせることの責任はどう考えているのか?と問い返したいです。

結局、ここで親がこじれて勉強を切れないと地獄が待っているだけです。

話を戻すと、受験勉強を回避し、違う挑戦に切り替えた子は、私立専願で進路を決めればいい。勉強に使う労力は最小限にして、自分にとって期待値が高いと思うことに時間を使ってくれたらいいです。

もちろん、そこに塾として協力できることは多分ないので、その子達とは塾というサービスを通して関わっても、お互いにハッピーにはなれないのです。

ただし、高校は本来勉強する場所なので、勉強のやる気がない子や優先度が低い子のために、税金使って無償化で行かすのは納得いかないというのが本質です。それなら、本当にその子が打ち込むことに投資してあげたいです。

まあでも、私立専願に逃げてる人多くは、勉強からも逃げただけで、他に何か挑戦してるわけでもなかったりしているのがこのテーマが香ばしい理由でもあるので複雑な気持ちです。

結局大人の中で不満があるのは、「勉強から逃げた子の学歴保証のために、俺たちが稼いだ金(税金)をばら撒くな。」というのが怒りの感情の根っこにあるのですから。

あとね、推薦入試という名前をやめろ。推薦とは本来、特定領域で何か秀でた能力がある人が推薦されるもので、ほぼ無条件に推薦する現代の入試を形容する言葉として適切ではない。

推薦入試ではなく「救済入試」「学歴保護入試」と名前を変えるべきです。

またしても話が脱線しましたが、自塾では「逃げずに勝負する子」を見ます。また、学生時代の競争経験が社会に出てから役に立つと心から思っていて、そのために勉強を頑張ろうと考える親子の支えに全力でなりたいと思っています。

総括:私立専願で逃げの受験をする子が塾通いをする意味まとめ

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

  • 私立専願の増加
     無償化の影響で私立専願を選ぶ生徒が増加。特に学力下位層で顕著。
  • 「逃げ」と見られる傾向
     親世代や一部の教育者からは「楽チン受験」「逃げ」と批判されることが多い。
  • 難関私立専願は別扱い
     難関私立の専願は偏差値60相当で競争が成立しているため価値がある。問題は中堅以下の私立。
  • 中堅私立の専願は易しすぎる
     偏差値40台でも特進コースに進めることが多く、3科目入試・推薦基準も甘く、ほぼ名前を書けば合格可能。
  • 学力低下を助長
     勉強せずに進学できるため学力の積み上げがなく、社会に出る際に耐性不足を招いている。
  • 塾通いのコスパが悪い
     合格がほぼ保証されるため、私立専願に流れる層の塾通いは費用対効果が極めて低い。多くが退塾・転塾する。
  • 対象層の特徴
     中1の1学期で350点以下、中2以降も学力が伸びない層。下位50%の地頭層が中心。
  • 塾の経営判断
     真剣に公立受験を目指す子の邪魔になるため、専願逃げ組は受け入れない方針の塾もある。
  • 一方での例外
     本当にやりたいことがある私立専願や、目的意識を持つ場合は価値がある。
  • 勉強以外の挑戦への切替はあり
     勉強に向かない子は早めに損切りし、別の挑戦へ切り替えた方が健全。ただし多くは逃げただけで他に挑戦していない。

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