高校受験において、私立専願はどう考えても最も楽勝に進学先を決めてしまえる受験方式であることは間違ありません。

もちろん、一部の付属校などは話は別です。例えば近畿圏であれば関学や関大、甲南あたりの付属校は専願入試ではあるものの、内申点が一定以上求められます。付属校でなくとも、難易度の高い高校も同様です。

ただ、私立校は私立校でも、偏差値50そこそこの私立や、特進コースと言っているのに専願ならオール3程度でも受かれてしまう私立専願は全く意味が違います。

正直、たいして勉強しなくても推薦さえもらえればほぼ確実に合格できます。だから、私立専願にした時点で勉強を辞める子も多く、「逃げた」と周りから思われやすいというのは紛れもない事実です。

しかし、私立専願で高校受験をイチ抜けすることは本当に逃げなのでしょうか?今回は、現役の塾長の目線から、マジで忖度なく本気で思っていることを書いていきます。

大前提:私立専願はイージー受験

まず大前提の話からします。

正直なところ、多くの県では私立専願で進路を決めることはどう考えてもイージーな受験だと言えるでしょう。

ほどほどの勉強をして内申点さえ変な風にならなければ推薦がもらえ、推薦された段階でほぼ確実に合格できてしまうので、事実上ペーパーテストなどあってないようなもの。

当日、しっかりと解答用紙に名前さえ書けば合格です。

だから、公立高校受験や私立の難関高の専願受験に比べれば遥かに難易度も低く、求められる努力量なども全く異なります。私立専願については、明らかに努力量が少なく済むのは事実です。

受ける学校やコースにもよりますが、夏休みで勉強をほぼストップしても受かる学校はいっぱいあります。だから、元々公立志望だった子が受験を断念して私立専願にすると、高確率で学習塾を辞めていきます。勉強しなくても受かる受験なのに、わざわざ塾に課金するメリットはないですからね。

そういう意味では、楽な受験であることは間違ない。この前提はどうあっても崩れないし、そこは崩さずに議論すべきテーマだと思います。

もう一度言いますが、私立専願はイージーな受験です。

私立専願で高校受験を終えることは「逃げ」なのか?

では、禁断のテーマへの回答。

結論、「逃げて私立専願にしている人もいれば、前向きに私立専願にしている人もいる。でも、正直なところ”楽だから”私立専願にしている人が圧倒的に多いように思える。」です。

こう言うのって、結局は本人が本心からどう思っているのかってことだと思います。

「本当は行けるんだったら公立に行きたい。でも、公立は内申もペーパーテストも全教科頑張らないといけないからしんどい。その点、私立専願なら内申点が多少低くても推薦してもらえるし、勉強もほどほどでいい。努力したくないし、私立専願に逃げよ〜」

ってマインドで私立専願を選んだのなら、本人も認めている通り“逃げ”でしょう。

一方、「〇〇高校に行きたくて、そこが私立専願で手堅く合格できそうだし、なんの迷いもなく私は専願で受けたい!」とかだと話は別。これは別に逃げてるって感じはしないです。

ただね、後者のようなパターンは少ないってのが問題なんです。(※あとは後述しますが、その言い分がなんか言い訳くさいってのもあります。)

実際は前者のような生徒のパターンが非常に多く、概ね以下のような生徒です。

・一定の偏差値以上の公立高校に行く実力がそもそもない
・地頭が悪くペーパーテストの点数もひどい
・素行もあまり良くなく、内申点もロクに稼げない

また、

・目標を決めて努力するとか嫌
・しんどいことからは原則逃げてきた
・長期的目線などなく、常に目先のことしか考えない


みたいな生徒が私立専願に流れまくっているというのが、この手のテーマを香ばしいものにしているわけです。私立専願そのものがどうこうより、私立専願に流れる人間の属性の問題です。

周囲の本音:逃げを正当化してる奴が何かキモい

私立専願が「逃げ」と批判される理由として、自分は他の受験生の生々しい感情の問題があると思います。

それが、「逃げを正当化してる奴が何かキモい」です。笑

確かに、私立専願を前向きに考えて選んだって生徒はいると思います。でも、本人がそれを積極的に選んだって言ってる風なのが何か気に入らないんですよ、周りの子は。

だってそもそも論、「選ぶも何も実力的に私立専願にするしかなかっただけでしょ?」ってのが否定的な意見の根っこにあります。

言わせておけばいいと言えばいいのですが、ぶっちゃけ”図星”って子も多いでしょ?だからそう言われてイラっとする私立専願の親子が出るわけで。

実際問題、オール5でテストも450点以上って子が、あえて偏差値50程度の私立高校の真ん中ぐらいのコースをわざわざ選んでいくわけないです。上に行けるなら上に行くでしょ。公立トップ校とか私立でも上位校に。

だから、私立専願で特に中堅校の真ん中のコースを受ける子や、公立が無理だから専願にして1つコースを上げた子というのは、「そうするしかなかった」というのが実情です。

中には、「受験なんて受かればいいんだから、より効率よく受かれる私立専願の方がコスパもタイパもいい!」とオラつく系もいますが、この手の発言もアンチに燃料を投下しているだけです。

「いや、お前そもそもバカでロクに努力もできないタイプの人間だから私立専願しかないだけだろ。いいように言うんじゃねーよ。」と思われているわけですからね。

それにも関わらず、自分の意思で選んだ的な発言や立ち振る舞いをしている生徒や保護者があまりに多いから、公立受検を真面目にやっている子の鼻につくわけです。これが中学校の中で起こっている感情の一部始終じゃないの?と思います。

実際、専願でコースを釣り上げただけの子は、公立高校受験で同一の偏差値の高校を受けさせれば高確率で滑ります。少なくとも自塾のある神戸市はそうです。まあ、私立高校の偏差値がそもそも論実態を反映していないのですが。明らかにもっと低いです。

私立専願で高校受験を終えることは「悪」なのか

私立専願で高校受験を終えることを議論すると、どうしても過激な意見や、極論になりやすいので注意しないといけません。

その中でも、「私立専願で高校受験を終えることを逃げと言い切り、それゆえ” 悪”だとする主張」です。

一万歩譲って”逃げ”ってのは認めても、逃げること自体を一言で「悪」とまとめるのは言葉選びとしては良くないです。逃げることは必ずしも悪ではないからです。

ただ、この手の主張の言いたいことは概ね分かるので、ポジションを取っていいのなら”賛成”です。実際問題、逃げるようにして受験を終え、それ自体が何もプラスになっていないケースは非常に多いからです。

と言うかね、本心を言えば、昨今の入試で私立専願に流れる生徒の多くが明らかにヤバイ感じの子が多いからそう思うってのが現場感覚の意見です。実際、まともな感じの子で私立専願って子に比べて、明らかに逃げ癖があって何かしら問題のある子の最終手段として機能しちゃってますからね。

綺麗事抜きで言えばそうなんです。

だから、専願ばかりで集められた中堅私立の実態などカオスもいいとことです。大学の進学実績などを見ても、パッとするわけもないのです。

そういう意味では、私立専願で多少偏差値を釣り上げて実力以上の学校に入ったとしても、結局は分不相応なことをしただけに過ぎず、どのみち最終地点は動かせないという話。大学受験で結局ポシャるからです。

そういう意味では、途中地点の意味のないロンダリングは悪。それなら、高校受験のために最後まで必死に勉強してチャレンジした受験をした方が、後の大学受験にはプラスになっていくかもしれない。仮に高校受験に失敗したとしてもです。

そういう意味では、安易に私立専願に逃げられてしまう現代の制度そのものが完全に悪。今の時代は無償化もあるので、より専願に流れやすくなっています。だから、悪いのは制度を利用する人間ではなく制度そのものです。

改めて教育の原点に立ち返って議論すべきテーマ

私立専願は悪なのか?は非常に香ばしいテーマです。

ただ、このテーマは各論で片付けるテーマではなく、もう少し大きな目線で考える価値のあるテーマです。そのテーマとは、「教育の本質的な目的」です。

教育の究極のゴールって、「子供を一人前にすること」です。周囲のサポートがなくても、ちゃんと自分一人で生きていく力を身につけさせることが教育の目的です。そのために成長(進歩)に繋がるような経験をさせないといけません。

そういう意味では、受験は子供自身を成長させる非常にいい機会ではあります。目標を自分で決め、今より少し高いところに焦点を当て、その差を努力や工夫で埋める。そして自分が望む成果を獲得し、己の成功体験の1つにして、自信をつけさせる。

結局、何かしらの成功体験がない人って、大人になってから上手くいかないパターンが非常に多いです。

幼少期に何か自分で成し遂げたって人は、「努力し続けていればどこかで上手くいくと思う。だって、過去にそれで上手くいったから。」ってマインドになります。だから継続力があったりするわけで、それが一人前になるってことの1つの要素でもあります。

しかし、何も成し遂げず、これと言って努力して成果を出した経験のないアダルトキッズは、何かあればすぐに逃げる。成功体験がないから、頑張り続けた先に成功をイメージできず、故に途中ですぐに投げ出す。だから一人前になれない。

そういう意味では、子供の時に何でもいいから成功体験的なものをつませてあげたい。もちろんそれは勉強じゃなくて他の何かでもいい。

だから、私立専願にした人間は少なくとも勉強では何も追い込んで努力とかはしてないに等しいので、他の何かで成し遂げたい経験みたいなものをつませないと差がつきます。

しかし、私立専願に逃げただけの子は本当に無気力な子も多く、受験に代わる何か他のことで成功体験や努力体験をせずに終えることの方が多いようにも思えます。

問題はそこです。

正直、勉強は遺伝要因の問題で向き不向きはハッキリ分かれるので、苦手な子に努力させても大した結果は出ません。だからまあ、私立専願にして勉強から退かせるというのは英断と言えば英断です。

しかし、ただ勉強を損切りするだけでは何も意味がない。大事なことは“挑戦を切り替えさせること”です。勉強にかわる何かを見つけ、何かに熱中できているかがクソ大事。

ここまでがワンセットじゃないといけないのですが、大半の親子は「私立専願があるから無理して勉強なんてしなくていいよ。」で終わってしまい、その先がない。結局ダラダラと中学生活を終えるだけって子は多いです。部活も原則は夏で引退しちゃいますしね。

こうやって何も成功体験をつまず、苦しいことから逃げただけのキッズが量産されるリスクがあるのが私立専願と私立無償化の合わせ技です。こういう制度がある以上使うのは自由ですが、保護者はいろいろ試されていると思います。

今楽させて私立専願で進路を決めさせることが、中長期的に見てその子の人生が楽なルートに向かっているのか地獄の一丁目一番地に向かっているのかを真剣に考えることが大事では?とお節介を焼きたくなります。笑

まあでも結局は、「選んだ道を正解にすれば全部正解」ってことなので、私立専願を選んだ人も公立受験にトライする人も、己の選択が正しかったと胸を張って言えるように高校生活を送ってほしいと思います。

総括:高校受験で私立専願は逃げですか?まとめ

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

  • 私立専願は明らかに“楽な受験”
    → 推薦がもらえれば高確率で合格、努力量も少なく済む。
  • 「逃げ」かどうかは本人の動機による
    → 前向きに専願を選んだ生徒もいれば、「楽だから」と選ぶ生徒も多い。
  • 実際は“逃げ専願”の方が圧倒的多数
    → 地頭が悪い・目標がない・勉強が苦手な子が流れがち。
  • 周囲の本音:「逃げを正当化してるのがキモい」
    → 本人の実力では選択肢が限られていたのに「自分で選んだ感」を出すと反感を買う。
  • 私立専願は「悪」ではないが、リスクがある
    → 逃げグセがついた子が、その後も努力や挑戦を避けやすくなる。
  • 制度的に私立専願へ流れやすい現状が問題
    → 無償化により安易に楽なルートを選べてしまうことに警鐘。
  • 本質的な教育目的を考えるべきテーマ
    → 成長には「努力して成功する体験」が必要。逃げて終わるだけでは一人前になれない。
  • 勉強が無理なら“挑戦の切り替え”が必要
    → 勉強を損切りするなら、他の分野で努力・成功体験を積ませるべき。
  • 結論:選んだ道を正解にする姿勢が大事
    → 私立専願でも公立受験でも、その後の高校生活をどう過ごすかが重要。

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