公立の学校の通知表の数値の決定にに用いられる評価項目の1つ「主体的に学習に取り組む態度」が枠外になるかもしれない…

なんと、とんでもないニュースが入ってきました!

それがこちら↓

参照:「学ぶ態度」は評定の対象外に 次期学習指導要領、文科省が方針転換

主体的に学習に取り組む態度とは、「学習態度」的なものです。今までの評定では、学習態度を通知表の数字を決める際に考慮していましたが、なんとそれがなくなるかもしれないとのこと。

しかしこうなると、最も被害がでかいのが「内申美人」と揶揄される生徒たちです。学力は低いけど、課題とか提出物とかでアピールして通知表の数字を稼いでいる子達のことです。

一方で、普段の素行は良くないけどテストの点数はそこそこ良いタイプの生徒は、通知表の評定が上がる可能性が出てきます。今までも知能的には十分高かったのに、提出物漏れとかで通知表の数字が1ポイント下がっている系の子の評価が上がることが想定されます。

そこで本記事では、主体的に学習に取り組む態度がなくなる場合のメリット・デメリットについて改めて整理していきたいと思います。最後には、現行の内申点システムに関して自分なりの意見も述べます。

主体的に学習に取り組む態度(学習態度)はなくなる?評定の枠外になるとは

まず、今回の文科省の改正案について、何が起ころうとしてるのかを簡単に整理してみましょう。現行の評価システムがどうなっているのかを知ることで、高校受験のことがよく分かります。

次期学習指導要領:主体的に学習に取り組む態度は評定に影響させない

今回、文科省が出している案を簡単にまとめればこう。

「今までは学習態度を評定の数字に反映させてきたけど、今後はしない。知識・技能・思考力・判断力・表現力で決める。でも一応、項目としては残しておこうかな…」

まだ検討中の段階なので、ニュース記事を読んでいるとなんとなくこう取れます。読売新聞が分かりやすい図表を出していましたので、以下引用させていただきます。

まず、現行の通知表の数字(中学生であれば1〜5)というのは、以下の3項目で決められます。

①知識・技能
②思考・判断・表現
③主体的に学習に取り組む態度

①や②は主にペーパーテストの内容を参考にして決めているものです。あとは、レポートなどの「質」とかもかなり反映されていると思います。賢い子のレポートとか読むと、明らかに違うので。

③については、テストの点数のように数値化できるものではなく、ザックリ言えば「学校の先生から主観的に見て、その子は真面目に取り組んでいるか」みたいな項目。

だから、当然ですか評価者によって評価にばらつきが出てしまいます。

それゆえ、内申点そのものを不公平と捉える人も多く、実際不公平です。「その先生に気に入られているか」とかも影響している感じも否めないし、とにかくブラックボックスです。

もちろん先生方もそれは分かっているので、「挙手の回数」的な数字化できる客観的な数値を評価軸にしようとあれこれ模索していますが、それでも評価項目自体が曖昧ゆえ、どこまで言っても公平な評価にならないというのが問題点でした。

そこで今回の改訂では、「主体的に学習に取り組む態度」を通知表の数字を決める際には考慮せず、

①知識・技能
②思考・判断・表現


の2つの観点で評価しようと考えたわけです。

ただ、主体的に学習に取り組む態度自体は大事なことなので、「総合所見欄」的な部分で別軸として評価はするらしいです。しかし、それ自体が通知表の数字に影響しないのであれば、「先生方のありがたい?お言葉」レベルのものになります。

ここまでが、今回議論されている制度改革の内容をまとめたものになります。

内申美人は終了:高校受験は知能ゲーに突入か

さて、このような改訂が現実的なものになれば、制度変更で得する人・損する人が必ず出てきます。

もちろん、損をするのは「内申美人タイプ」です。

正直なところ、学力がイマイチでも、真面目でコツコツ頑張っている子は、テストの点数が一定水準まであると、評定の数字が1〜2ポイント上がることはよくあります。

その理由は、「主体的に学習に取り組む態度で稼いでいるから」です。

これだと言い方が悪すぎるのでもう少し褒めると、「学力はイマイチなんだけど、学習態度で足りない部分を補って、トータルの評価をよくしている子」もいるってことです。

本当だったら3になるような点数なのに4で返ってきたり、4レベルの評定なのに5で返ってきたり…こんなのは塾講師をしているともうありえないレベルで見てきています。

「えっ、あの点で4になるの?」

的な不思議の4を見た経験など数知れずです。笑

もちろん、その逆もある。テストの点数が高いのに、通知表の評定だと3か4で終わって、4や5がつかないケース。そして決まって、主体的に学習に取り組む態度にAがついていない…

結局今の制度だと、見せ方が下手くそだけど賢い生徒より、賢くないけど見せ方が上手い生徒の方が優遇されているのが現実です。もちろん、学力の低さを学習態度で補おうと努力する姿勢は大事なんですけど、それが優遇されすぎていないか?という問題は昔からあります。

高校受験というのは内申点の比重が高い県は高いので、ぶっちゃけ内申点で志望校が決まってしまうことは珍しくありません。自塾のある兵庫県は特にその傾向が強く、内申点が不足した瞬間にほぼ確で不合格になります。

しかし、内申点が高い子の場合、ぶっちゃけ学力は低い(偏差値が低い)場合でも己の偏差値以上の学校に合格できてしまうことがあります。内申ゲーの県では、内申美人は圧倒的に優遇されるのです。

しかし今回の改訂が現実になれば、学力そのものがない生徒は駆逐されます。内申美人が無双していた今の流れに終止符が打たれることになります。

中学受験に避難しなければいけない男子生徒が減少するか

今回の改正が現実になれば、「地頭はいいけど不真面目で内申がつかない男子生徒」が救済される可能性が高まります。

従来であれば、このタイプはマジで中学受験した方がいいと言われていました。高校受験という内申点を評価する競技においては、その子の良さが生きないからです。

そして、内申が低いせいで本来の学力から見た偏差値の高校から1〜2ランク下げた高校にしか進学できず、大学受験の結果がイマイチになる…

こうなるから、高校受験を回避するために中学受験をして先に「利確」しておくことが推奨されるわけです。特に付属校に入れておけばエスカレーターで上に上がれるので、最低ラインの学歴補償が中学段階で受けられるのは確かに熱い。

この辺りは、中学受験について解像度高くまとめている学歴研究家のじゅそうけんさんの本を読むことをお勧めします。

著:じゅそうけん
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ただ、高校受験で内申点が取れるのであれば、中学受験の塾にクソ高い課金をし、公立よりも高い私立に課金をするメリットが薄れます。普通に公立トップ校に入れて、普通に勉強して一定の偏差値を超えた大学に入れればいいので。

究極、小中高と公立で大学が国公立というのが最も高コスパなわけですからね。この辺り、加熱する中学受験にどう影響を与えるのかも今後注目していきたいとことです。

主体的に学習に取り組む態度(学習態度)はなくなることへのさまざまな意見

今回ニュースになった、「主体的に学習に取り組む態度(学習態度)を枠外にして、評価基準に入れない」に関しては、当然ですがネット上でも賛否があります。

ネット上の賛否の声

今回の改正案について、市場の声がどうなっているのか調べました。

↓賛成の声↓

一方で、否定的な声が多いのは当然ですが塾講師の方々です。

↓否定的な声↓

見ていると、賛成・反対派の言い分はそれぞれこう。

<賛成派>
・不透明な内申点制度がようやくなくなる
・教師によるえこひいき問題の解消につながる
・そもそも項目自体が不透明で客観的じゃないから無理があっただろ!決めたやつ頭下げろ。笑

<反対派>
・勉強苦手な子の救済手段がなくなる
・地頭がいいけど態度が悪い子を野放しにしていいのか

まあこんな感じですね。

個人的に思うのは、今まで内申点という制度を脅しにして授業秩序を守っていた教師がいよいよ舐められないか?という点。

褒めて伸ばそう的な無茶な風潮が蔓延していて教師は肩身狭いのに、さらに子供が調子に乗るようになれば、いよいよ教育崩壊しないか?と思わないでもないです。

しかし、「内申点で脅されていたから大人しくしていただけの賢い子=点さえとれば何してもいいだろって思想で点数かつ点数も取れる地頭いい系の子」って一体どれだけいるのか疑問ですけど。

ま、いるにはいますけど。汗

個人的な意見:「こうなって欲しい」的な願望

さて、ここからはポジションを取って自分なりの意見を言います。

そもそも論として、”内申点を共通の指標として用いている現行の公立高校受験の仕組みに問題がある“ってのが自分の見解です。

結局、内申点が理不尽だと感じる正体の1つの要素として、

「あいつは学力的(偏差値)的にはしょぼいのに、内申点で稼いで下駄はいたから実力以上の高校に行けてるだけだろ。」

的な、まあ人間らしいヘイトみたいなものがあると思います。

実際、この感情は分からんでもないし、大学受験の指定校推薦とかが批判されまくる理由も本質的には同じでしょう。

・身の丈に合ってないのが気に入らない

これはもう、人間が表に出さないだけで、ぶっちゃけ誰しも思ってはいるんじゃね?って感情です。

例えば高校受験だと、上位校に内申点だけ稼いで受かってしまう子がどうしても妬みの対象になりやすいです。

だからこそ、高校側が求める人物像をもっとハッキリすべきだと思うわけです。例えば進学校でゴリゴリ受験勉強して難関大目指す的なスタンスなら、正直頭がいい子に集まって欲しいはずです。いや、純粋に頭がいい子が集まればいいんです。

数学のセンスがないけど副教科で内申点稼いで合格し、高校に入ると数学で爆死して私立文系確定してしまう女子生徒よりも、副教科の内申点とか低くても、5教科の点数高くて数学が苦手じゃない男子の方が国公立には受かりますからね。

だったら、国公立受験とか目指す学校がしっかりブランディングするなら、

・内申点が高い子が欲しいわけじゃない。本当に頭のいい子を募集中!
→だから「内申点:本番=0:10」で評価するね

とか思い切ってやってくれたら、どれだけ清々しいか。笑

逆に、行事とか学校生活重視で協調性とか大事にしたいって話なら、

・点数だけ良くても嫌。社会性と学力のバランス見ます。
→だから「内申点:本番=5:5」で評価するね

とかでも全然いいと思うわけです。

ここまで高校側が求める人物像をハッキリ言い切ってくれたら、内申点に起因する生徒側のジェラシー的な部分はほとんど解消されると思うんですよね。

だって、点数は高いけど内申点のせいで志望校に受からない…みたいなのが一番うるさいわけなので、この層を黙らせたらいいわけでしょ?

もしこの層が本当に内申が低いだけで志望校のランクを下げているなら、本番の比重を100%とか、70〜80%にしておけば文句はないわけです。それで落ちたら、内申も取れないし学力も低いただの雑魚って話です。これなら何も言えないでしょ。

仮に内申点重視みたいなブランディングの高校があれば、学力で高校を評価する属性の人間はそもそも相手にしない。だから、内申が高いから受かってる人に何も嫉妬がない。

「俺は学力重視の学校に興味があるのであって、内申重視の高校をそもそもいいと思ってない。」

こういう価値観・感情なのでしょうから、ジェラシーが湧かないでしょ。そして、そういう高校は必然的に偏差値も下がっていくので、学力重視層の視界から外れます。

高校受験で問題なのは、そこそこ偏差値が高い学校が、純粋な学力だけではなく、内申点という非常に曖昧な評価軸を入試の合否に反映させてしまっている点です。

そもそも、高校自体の偏差値もおかしくなっちゃいますしね。

内申高いだけで学力イマイチで進学校に進んだ子と、根本的に地頭よくて勉強適性ある子の偏差値って、同じ高校内でも異常なレベルの格差ですからね。

内申比重が全国でもトップレベルに高い兵庫県の公立高校だと、県内トップの神戸高校や二番手の御影とかでも、下位層の大学進学先とかパッとしないですから。内申がいいだけで入った子はやっぱり落ちこぼれます。

実際自塾で同じ偏差値の高校に合格した生徒同士でも、明らかに内申で稼いだから受かった子と、そもそもの学力が高いから受かった子のペーパーテストの点差は歴然でした。模試とか実力テストとかすると、素直に知能レベルの差が出ちゃいますから…

学力微妙でも内申で稼いで進学校に進んで、その瞬間は喜び絶頂になり、でも入学後すぐに周囲とのレベル感を実感することになるのは本当に幸せなのか?って話です。

こういう被害者を出さないためにも、ちゃんと自分の立ち位置を分からせるようなシンプルな入試にしたらいいのに。遅かれ早かれそんなことは分かるんですから。

短期的な成功体験?を積ますために複数の評価軸を用意して一旦持ち上げ、でも最後は本来の実力でそれ相応に評価して転落させる…

こんな風に振り回しすぎてやしませんか?汗

学力で評価するなら学力で評価すればいいし、内申点で評価するなら内申点で評価すればいい。そして、何を求めるかは各高校のコンセプトに合ったものでいい。

今の受験制度だと、どの高校を受けるとしても、内申と本番の比率が一律に固定されていて、しかも内申点の比重が高いことが根本的に感情的な不満が爆発しやすい起爆点だと思います。だから、通知表の改革する際は、同時に入試制度の改革を考えて欲しいと思います。

※なお、中学生の通知表の成績に対する塾講師の忖度ない本音の厳しい評価は以下のとおりです。本当のことしか書いていないので、心臓の悪い方は読まないでください。

総括:主体的に学習に取り組む態度はなくなるのかまとめ

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

  • 文科省の改正方針
    「主体的に学習に取り組む態度」を通知表(評定)の数値に反映させず、知識・技能、思考・判断・表現の2観点で評価する方針。
  • 従来の通知表の評価方法
    評定は以下の3観点で決まっていた:
    ①知識・技能 ②思考・判断・表現 ③主体的に学習に取り組む態度
  • 改正の影響①:内申美人の終焉
    提出物・態度で評定を稼いでいた「内申美人」は今後評価されにくくなる。テストの点が評価の中心に。
  • 改正の影響②:地頭の良い男子救済
    学力はあるが内申点が低く進学で不利だった男子生徒が救済される可能性。
  • 賛否両論あり
    • 賛成意見:内申の不透明さやえこひいきがなくなる
    • 反対意見:努力型の子が評価されなくなる、授業崩壊の懸念
  • 筆者の主張①:高校側の評価軸を明確にしてほしい
    内申重視なのか学力重視なのか、各高校が明言すべき。
  • 筆者の主張②:高校受験制度そのものに課題あり
    内申と学力の評価比率が一律である点が最大の不満要因。高校によって選考基準を柔軟にしてほしい。
  • 筆者の懸念
    学力がないのに内申だけで進学校に合格した生徒は、高校入学後に成績不振になるケースが多い。

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市販教材でおすすめ教材を知りたい人には、以下におすすめ参考書・問題集をまとめた記事を掲載しておきます。

※高校受験おすすめコラムは以下の通りです。

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