兵庫県の公立高校受験は、かなり特徴的です。

まず大前提として内申点の比重が非常に高いのが特徴です。まずそもそも論として、内申点が一定点数確保できないと本番の試験で逆転することはほぼ無理な試験と言っても過言ではありません。

ただ、内申点以外はどうなのか?という話をあまりしてこなかったので、今回は「科目の優位性」についてお話しします。

そもそも公立の高校受験は英数国理社の5科目が必須で、全て100点満点で合計500点のテストになっています。しかし、個人個人によって異なる教科の得意・不得意が全く持って平等ではありません。

兵庫の公立高校受験においては、「(内申点の担保は大前提として)英語の出来不出来で受験校の下限が決まり、数学の出来不出来で志望校の上限が決まる。」と思います。

もっと分かりやすく言うと、数学が得意な子よりも英語が得意な子の方がそもそも受験では有利と言うことです。

公立高校受験では各科目の配点は平等ですが、得点のしやすさが教科ごとにスパッと分かれており、全国どの県を見ても「英語は高得点を狙いやすい一方で、数学は高得点を狙いづらい」と言う特徴があります。

だから、お子さんが公立高校受験で有利に戦えるかどうかは、数学の出来不出来よりも英語の出来不出来に大きく依存すると思ってください。ハッキリ言いますが、英語が苦手な生徒の公立高校受験は地獄です。

受験校は英語の出来で下限が決まり数学の出来で上限が決まるの意味

まず最初に、「受験校は英語の出来で下限が決まり数学の出来で上限が決まる」の意味について、もう少し詳しく掘り下げます。

英語は高得点者が多く数学は高得点者が極端に少ない

大前提、定期テストなどと異なり実力がモロに出てしまう受験問題は、頑張れば誰でも高得点を狙えると言うものではありません。

地頭的な部分で壁があるからと言うのももちろんありますが、それとは別に「教科ごとに取れる得点の上限がある程度決まっている」と言う構造上の問題があります。

例えば英語の場合、80点以上の得点者の割合を年度ごとに整理すると以下のようになります。

2018年:16.2%
2019年:13.3%
2020年:13.4%
2021年:13.1%

一方で数学はどうかと言うと、

2018年:3.1%
2019年:2.4%
2020年:5.1%
2021年:3.9%

こうなります。

どの年度を見ても、英語の高得点者の割合が13%を超えるのに対し、数学は一桁台%は当たり前で、せいぜい2〜3%しかいません。「英語は高得点を取りやすいけど、数学で高得点を取るのはかなり厳しい」と言う現実をデータが物語っています。

そして、受験が点取り合戦である以上、高得点が取りやすい英語できちんと得点できるかどうかが受験校のアンダーラインを決める上でも非常に重要な要素となってきます。

英語で高得点が取れないとなると、他教科で高得点を取るのが難しい兵庫受験の場合、現実的に受験して合格できる高校の可能性は一気に狭くなるのです。兵庫の場合、理科は全国トップレベルの難易度で高得点が厳しいです。最近では国語も難化しており80点以上は易化しない限り期待できないです。

社会だけが80点ぐらいまでは何とか努力で上がる(※もちろん上位層の話)のですが、初見で見る問題も数問あり、得意な子でも90点は越えていけませんからね。

だから、英語で高得点を取れない場合、よほどの内申美人でない限りは上位校の受験はかなり厳しくなります。これが、英語で受験校の下限が決まるという意味です。

英語に捨て問はないが数学は捨て問がある

ちなみになんでこんなことになるかを、出来るだけ簡単に解説します。

まず、英語については出来る生徒は本当に100点に近い点数を毎回狙っていけます。理由は、「これといって難しい問題がないから」です。

正直リスニングが苦手ではない子の場合、英語が得意なら長文読解や文法問題においては間違える問題などほぼなく、勘違いや時間配分ミスなどがなければ、普通に満点が狙えます。

唯一最近難しいと感じるのが「単語の書き取り問題」で、あまり有名じゃない英単語のスペルをかかせてくる問題だけが失点要因です。本当にそれぐらいです。

一方数学はどうかというと、正直自分が解いても数分手が止まる問題が紛れ込んでいます。各大問の一番最後の問題は難易度がかなり高く、受験生の正答率が1%を切る問題もあります。特に図形問題の最後の問題は非常にハードで、数学が超得意な子でも最後まで正解できる子をほぼ見たことがありません。

そのため、各大問の一番最後の問題は原則「捨て問」になります。体感的には、ほとんどの生徒にとっては4〜6問ぐらいは捨て問があり、この時点で20点〜25点ぐらいは失点確定です。

だからそもそも、英語は最大で満点が狙えるテストなのに、数学は一番上手くハマっても70点後半しか狙えないと言う構造的な差があるのが兵庫受験の特徴です。

当然ですが、中堅校を狙う子であれば、ほとんどの生徒は数学で60点を取ることがまず最初の壁で、この壁を中々越えられない子も山ほどいます。だけど中堅校は内申点さえあれば受かるので、結局は内申ゲーです。

「英語は苦手なので数学でカバー」は基本的に無理

どうしても英語が苦手な子の中には、数学はそこそこ得意って子もいます。特に、普段の定期テストで数学や理科など理数系の科目で引っ張ってきた子です。

この子達は、「英語が苦手だから数学でカバーしたい」と思う傾向にあります。

しかし、高校受験でそれは通用しない。

データが示しているとおり、数学で80点以上の高得点を取れるのは全体の3%程度のもので、自分の中学校でもせいぜい5人ぐらいのものです。だから、上位3%に入れるレベルで数学が得意というのなら話は別ですが、英語に比べて数学の方が得意レベルでは話にならないです。

少なくとも数学の評定が4の生徒など話にならないことが多く、本当に飛び抜けて数学が得意って子以外はまあ80点の壁は越えられません。

だから、英語が苦手であれば受験校をワンランク下げないといけないこともあり得ます。それが嫌なら、数学に逃げるのではなく、英語を努力して伸ばす方向に舵を切るしかないのです。

上位校狙いの生徒は英語が出来ないと話にならない

兵庫の入試の構造上、受験校の決定において大きなウェイトを占めるのは内申点です。しつこいですが、内申点が不足している時点で、そもそも兵庫受験では負けです。

ただ、一定の内申点を確保した後にどうやって受験校を決めればいいのか?と言うのが次の論点です。

まず、上位校(偏差値60以上)を狙う場合は、英語でどのくらいの得点が期待できるのかで受験校は決まってしまうと思ってください。

そもそも、兵庫受験において英語は最も高得点が稼げる科目ですから、上位校を狙うようなライバルの多くは、ほぼ例外なく英語で高得点をとってきます。神戸高校レベルなら英語は90点以上を狙って欲しいし、御影や葺合レベルでも英語は80点以上をアベレージにして欲しいです。

どれだけ英語でミスっても、75点は最低でも取って欲しいし、それが厳しいのであれば上位校の下限である偏差値60の高校(この辺なら葺合)すらも怪しくなると思って欲しいです。(※内申点でカバーできる場合は別。)

このように、上位校を受験する場合は英語で高得点を取って全体の点数を一気に押し上げることができるかどうかが鍵になります。

正直、兵庫受験は英語以外の他教科で再現性高く高得点を狙えるものが少なく、英語で得点を稼げないとなると、どうしても全体得点を押し上げてライバルと同水準まで持っていくのは厳しいからです。

だから、上位校を受験できるかどうかは英語の出来不出来で決まると言えるわけです。

数学ができるかどうかは最上位校を受けられるかどうかにのみ影響

正直なところ、多くの受験生にとって、受験科目の価値という意味では、数学はそこまで重要ではありません。

なぜなら、そもそも得点の上限が70点台後半であり、大半の生徒は60点取れたら大成功で、少しミスって50点台になってもそこまで致命傷にならないような教科だからです。

一言で言えば点差が開きづらい教科なので、合否を極端に左右してしまうような重要教科ではありません。「40点台やそれ以下と言った酷い点数を避け、60点ぐらいで逃げ帰ってこれば及第点」という教科です。

ただしこれは、葺合高校ぐらいまでの話です。

まず中堅校の場合(六アイなど)は、数学は得意!って生徒を除けば、数学で70点台を取れるような生徒は皆無です。この子達は60点取れるかどうかの試合を毎回しますし、女子で数弱の子は六アイレベルなら50点しか取れないことも普通です。

葺合を受けるような生徒でも、数学だけは極端に苦手って子は多く、他教科はそこそこの点数でも、数学だけは50点台になったりすることも決して珍しくないです。

しかし、中堅校や葺合までぐらいの高校であれば数学で多少コケても内申点さえあれば受かってしまうので、そこまで数学の出来不出来に悩む必要はないです。普通に内申ゲーに勝利していれば勝てます。どうせ周りも数学で高得点など無理なのですから。

一方、御影や神戸など偏差値がもうワンランク上がると、数学もある程度の得点を取れる子じゃないと合格が厳しくなってきます。神戸高校狙いなら70点台をアベレージにして欲しいですし、行ける時は70点後半を取れるぐらいまでの実力を求めます。

御影の場合だと、内申点がほぼオール5に近い感じの子は数学が50点でも60点でも英語さえ取れればいいのであまり気にしなくてもいいです。でも、内申点がオール4ぐらいまでしかないと、数学でも多少の点数を求めます。60点台中盤をアベレージにして欲しいです。

そしてここまで読んで分かるように、原則として数学の出来不出来は最上位校の受験校選びぐらいにしかほとんど影響しないことが分かると思います。こういう情報戦が受験では大事です。

受験は英語が得意な子に有利なゲーム

ここまで兵庫県の高校受験において「いかに英語が重要か」という話をしてきました。

しかし、英語が重要なのは兵庫県の公立高校受験だけではなく、他県の高校受験でも同じですし、その先の大学受験でも同じことが言えます。

高校受験の場合、私立受験では英検加点もあります。大学受験においても、英検の級によっては試験科目免除を受けれたりします。だからどう考えても受験は英語ゲーです。

英語は一回ダメにしたらほぼ復活しない

そんな重要すぎる英語ですが、保護者さんには絶対に覚えて欲しいことがあります。

それは、「英語は一回ダメにしたら終わり」ということです。

英語は科目の性質上、完全に積み上げ方の教科です。中2から心を入れ替えて頑張ろうと思っても、中1で習っている文法知識や英単語などはすべてできる前提で新単元が始まります。

だから、途中参戦は許されません。

そういう意味でも、英語は一回たりとも手を抜くことは許されず、結局最初からコツコツ頑張っている子がそのまま最後まで高得点を取って受験では勝ちます。

母国語が弱い子に英語だけさせても上滑りするだけ

ここまで、英語英語と口酸っぱく言っていますが、実は英語だけやらせてもダメです。なぜなら、英語といえども結局は言語科目であり、母国語の能力を第二言語である外国語が越えていくことなどあり得ないからです。

どこまで行っても自分が扱うことのできる母国語の力が英語力の限界を決めてしまうので、年次が上がるに連れ、国語が弱い子は駆逐される運命にあります。

結局は、「語彙力」「一般常識」「読解力」的なものが言語科目には影響してしまうので、根本的な地頭を良くしておかないとどこかで行き詰まります。特に語彙力は非常に重要で、知ってる言葉のストックが少ない子は、英単語を覚えることも困難になります。

だって、「pollution(汚染)」って単語1つとっても、「汚染ってなんですか?」とか「汚染ってなんて読むんですか?」とか平気で聞いてくる子もいますからね。英単語を暗記するまでの距離が遠すぎです…

そういう意味でも、親子の対話の中で語彙力を高める工夫は必須です。

総括:受験校は英語の出来で下限が決まり数学の出来で上限が決まるまとめ

最後に、本記事のまとめを残しておきます。

✅ 兵庫県公立入試の基本構造

  • 内申点の比重が非常に高い(逆転合格は困難)
  • 本番試験は英数国理社の5教科・各100点満点(計500点)

✅ 英語の出来で「受験校の下限」が決まる理由

  • 英語は高得点が狙いやすい教科
  • 英語の高得点者(80点以上)は常に13%前後
  • 英語は「捨て問」がなく、満点近くを狙える
  • 上位校受験では英語が得意であることが必須
    • 例:神戸高校なら英語90点以上、御影・葺合なら80点以上を目指す

✅ 数学の出来で「受験校の上限」が決まる理由

  • 数学の高得点者(80点以上)は2〜5%程度と極少数
  • 難問(捨て問)が多く、70点台後半が限界
  • 中堅〜中上位校(六アイ・葺合など)では数学は60点で合格圏
  • 最上位校(神戸・御影)を狙う場合にのみ、数学70点以上が求められる

✅ 英語ができる子が受験で有利な理由

  • 公立も私立も英語が重要科目
  • 大学受験では英検による加点や免除制度あり
  • 英語が苦手な生徒は受験全体が厳しくなる

✅ 英語は「積み上げ型」=途中から伸ばすのは難しい

  • 中1の内容ができないと中2以降で挽回不可
  • 一度崩れると復活が困難

✅ 英語力には国語力(母語力)が土台になる

  • 語彙・読解力・一般常識が英語力に直結
  • 国語が弱い子は、英語の単語も覚えづらい

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・【高校受験】親ができること厳選3個紹介!後悔しない子供への接し方

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兵庫県公立高校入試教科別対策法の全ては以下のとおりです。